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旅路95

时间: 2019-12-30    进入日语论坛
核心提示:    20昭和二十年七月十四日、津軽《つがる》海峡一帯は未曾有《みぞう》の大空襲を受けた。海上に浮んだ連絡船は逃げもかく
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昭和二十年七月十四日、津軽《つがる》海峡一帯は未曾有《みぞう》の大空襲を受けた。
海上に浮んだ連絡船は逃げもかくれも出来ず、のべ千五百機にものぼる敵機の攻撃に、次々と火だるまとなって炎上し、沈没した。
函館《はこだて》港内の松前丸をはじめ、海峡の真中では第三|青函《せいかん》丸、第四青函丸、津軽丸、青森港外では翔鳳《しようほう》、飛鸞《ひらん》の二隻、その他、貨物船の第二、第六、第十青函丸など九隻が一ぺんに撃沈され、青函連絡船は全滅に近い大打撃をうけた。
もちろん、東京、大阪、名古屋などの大都市は、見渡すかぎりの焼野原で、これ以上破壊する物も見当らないくらいの惨状だった。
大阪の斉五郎と三千代の家は、さいわいまだ焼残っていたが、これはほとんど奇蹟《きせき》に近いことだった。それも、いずれは焼夷弾《しよういだん》によって焼きはらわれることは明らかだった。斉五郎も三千代もその覚悟をきめ、夜は、寝るときも普段着のまま、枕元《まくらもと》にはいざという時持ち出す荷物を置いていた。
そんな斉五郎の所へ、或る日、ひょっこり広島から尾形和子が訪ねて来た。
東京工場の女工員を今度広島の工場へ移動させるので、その引取りに上京する途中だとのことだった。
斉五郎はちょうど東京へ出張中で、家には三千代が一人で留守をまもっていた。
三千代と和子は初対面のときから、不思議とよくウマが合った。性格のせいもあるだろうが、二人とも好きな相手と結婚できなかったという共通の過去が、二人の心をより親密にしているのは間違いなかった。
和子は明日の朝の列車で上京すればいいのだという。たった一人で、いささか無聊《ぶりよう》ぎみだった三千代は和子の来訪を心から喜んだ。
「じゃ、それまでは自由なのね」
「ええ、まあね……」
「よかったわ、ちょうど関根さんが持って来て下さったお米があるの、京都の亡くなった奥様の御実家から届いたのですって……上等のお米よ……」
「まあ、珍しい……」
二人は子供のようにはしゃいでいた。
毎日毎日が、激しい労働、空襲の恐怖、トゲトゲした人間関係、空腹など、およそこの世の中のありとあらゆる嫌なものにとり囲まれて生きている二人にとって、このような安らぎの時間は本当になににも増して貴重なものだった。
「ねえ、三千代さん……結婚しないの?」
「結婚……とんでもない、毎日、火叩《ひたた》きとバケツを持って駆け回ってるのに……第一、右を見ても左を見ても、そんな男性いやしないじゃないの、居るのは老人か子供でしょう……」
「それもそうね……」
そんなとりとめない会話の中にも、ふとあたたかい潤いを感じとるのだ。
「和子さんは……?」
「ううん、あなたと同じよ……でもね、あたし、結婚をあせるっていうのじゃなくて、つくづくこの頃、女の仕合せってものを考えるのよ……」
「女の仕合せ……」
「ええ、一日中、工場の中で耳がガンガンするような機械の音の中で暮して、夜は夜で十時すぎまで作業が続くのよ。寮へ帰って若い娘達の世話をして、一番あとからお風呂《ふろ》にはいって、寝るのはいつも二時か三時だわ……そんな生活の中で、私、しきりに女の仕合せってこと考えるのよ、おかしいでしょう、こんな戦争の世の中で、そんな間抜けたことを考えるなんて……」
「おかしかないわ、あたしだって考えることがあるのよ。防火用水のへりに腰かけて、大阪の空が火災で真赤に焼けているのを見ながら、ひょいとね……」
「やっぱり……」
「こんな世の中だから、よけい考えるんじゃないかしら、仕合せになりたいって……」
「女の仕合せって、やっぱり愛する人と結婚出来るってことじゃない……」
三千代はちらと和子を見た。
和子の答えが、三千代が予想していたものとまるで違っていたからだった。和子は以前、働くことによって心の平和を得たいといい、現に、表面すっかり落着きを取り戻したかに見えていたのだ。
「三千代さんはどう思って……?」
和子が三千代に微笑《ほほえ》みかけた。
「そうね……昔は、結婚出来なくっても、人を愛せるってことは仕合せなんだと思ったことがあるわ……でも、それはやっぱり強がりね……女なら、好きな人の子供を産みたい、好きな人と一緒に人生を歩きたい……単純なようだけど、そう思うわ」
「私も……」
和子はおだやかな微笑のまま頷《うなず》いた。
「このごろ、つくづくそう思うの……すいとんを作っても、靴下のつくろいをしても、これが夫の為だったら、子どものためだったらどんなに仕合せだろうって……」
「ずいぶんつましい仕合せよね……可哀《かわい》そうになっちまうような女の願いなのに……今の時代は、それさえ贅沢《ぜいたく》なのよね、大抵の女が夫を子供を戦争に送り出しているわ、たった今、夫や子供が敵の軍艦へ体当りしているかもしれないのに、なんにも知らずにすいとんを作っているんだわ……」
「止しましょう、戦争の話は……」
和子が嫌な思いをふりはらうように、首を振った。
「それより……今、もし、戦争が終ったら、三千代さん、なにがしたい……?」
「そうね……」
三千代が答える前に、
「あたしは染色の仕事がしたいわ……」
夢みるような表情で、和子が言った。
「染色……?」
「そめ物よ……明るい春の色か、しぶい秋の色……日本の綺麗《きれい》な自然の色を着物に染めるの。そして、それを日本中の女の人に着せてみたいわ」
「そう……」
三千代は微笑した。いかにも和子らしいと思った。
「三千代さんは?」
「そう……あたしは人を探したいわ」
「人……?」
「和田四郎っていう人……絵描きさんだったんだけど……」
「そのかた、三千代さんの恋人ね……」
「さあ、わからないのよ、自分でも……」
言ってから、自分でも無責任な言いかただったと気がついて苦笑した。
「でも、戦争へ行ってるかもしれないわ……今度、あの人に逢《あ》えたら、自分の気持がどうなのか、はっきりわかるような気がするのよ……」
「好きなのか、嫌いなのかということ?」
「いまのままではなんだか頼りなくて……」
「わかるわ……」
その夜、二人は久しぶりに枕《まくら》を並べて寝た。
「今度上京したら、伊東さんにお逢いになって来たら……?」
三千代はぽつりと言った。
「こんな世の中ですものね、逢えるときに逢っておかないと、お互に明日のことはさっぱりわからないでしょう……」
「そうね……」
「伊東さん、いま、両国駅の駅長さんをしていらっしゃるわ……」
「そう……」
明りを消してあったので、その時の和子の表情をたしかめることは出来なかった。が、三千代は和子がきっと伊東の所へ逢いに行くに違いないと思いながら、いつの間にか深い睡《ねむ》りにはいって行った。
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