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旅路100

时间: 2019-12-30    进入日语论坛
核心提示:    25啓子に逃げられた弘子は、鬱憤《うつぷん》のはけ口を有里のところへ持って行った。「有里、あんた、いったいどないつ
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啓子に逃げられた弘子は、鬱憤《うつぷん》のはけ口を有里のところへ持って行った。
「有里、あんた、いったいどないつもりで子供たちに出鱈目《でたらめ》を言わんならんの」
「いったい、なんの事です……」
「しらばっくれるのもいい加減にしてや、うちが雄一郎さんのこと好きやったなんて……なにを根拠にして言うんやろ……確かにうちは雄一郎さんとお見合したことがあります、けど、あの話はうちのほうから断ったんや、そのことはあんたが一番よう知ってるやないの、うちが断った人のところへ、あんたが勝手に好きこのんで行ったんやないか……」
「そんな古いこと……なんで今更……」
有里には姉の言葉が余りに唐突すぎて、どう受取っていいかさっぱり判らなかった。
「あんたが言わんで、誰が言うの……あんた、いつも秀夫ちゃんに言うてるのやろ」
「いいえ、とんでもない……」
「そやかて、啓子ちゃんがそない言うてるやないか」
「啓子ちゃんが……」
「だいたいあんたが悪いのや、いくら子供か知らんけど、二人して須賀利くんだりまで出かけて、おまけに裸同然の恰好《かつこう》でいるのを土地の人に見られてるんやで……」
「あれは、舟がひっくりかえったので、たき火で服を乾かしてたんです」
「近親結婚が優生学上よくないことくらい、あんたかて知ってるやろ」
「結婚だなんて、そんな……まさか、秀夫と啓子ちゃんが……」
「今のままやったら、遠からずそないなことになるわ……うちにはようわかってるのや、あの二人、好き合うてるわ」
「そんなこと……まさか……」
「まさか、まさかって、自分の子はいつまでたっても子供や思うてるのやろ。もともとあんたの子は血筋やもんな」
「血筋……?」
「あんたら夫婦がそうやったやないの、親が許しもせんのに、さっさとおかしなことになってしもて……あんた、家出して嫁入りしたこと忘れたんか、秀夫の体の中には、そういう血が流れてるんや……」
「姉さん……」
それは、有里にとって最大の屈辱だった。自分だけが辱しめられるのなら、なんとも思わないが、息子《むすこ》のことまでけなされては我慢できなかった。
有里はこうした状態の中に秀夫を置いておくことは、秀夫の為にけっして良いことではないと考えた。そろそろ、北海道へ帰ろうと思った。
有里はすぐそのことを秀夫に告げた。
最初、かなり不満だったらしい秀夫も、母の固い表情を見ているうちに諦《あきら》めたらしかった。
秀夫はその夜のうちに、啓子を裏の川のほとりに呼び出した。彼が事情を打ち開けると、
「嫌よ、うち、秀夫ちゃんと別れるの嫌や……」
啓子はたちまち声をつまらせた。
「俺《おれ》だって嫌だ……」
「秀ちゃんのお母さん、うちらを引き離そうとするのやね……みんなで、寄ってたかって私たち二人を……」
「それが二人の為に一番いいと考えているのさ」
「なぜ、私たちを信用してくれへんの……なぜ……信じて、黙って見ていてくれへんの……」
「俺だってそう思う、俺たちが、いったいなにをしたっていうんだ……俺にとって、啓ちゃんは心の支えだったんだ……国の為に青春もなにも投げうって、海兵団へはいって……大事な友だちも死なせてしまったんだ……なんのために自分の未来を捨てたんだ……なんのために班長にひっぱたかれながら訓練を受けたんだ……俺たちの青春は無駄だったんだ、消えちまったんだ……」
感傷的な啓子にくらべ、秀夫の怒りはむしろ絶望的だった。
秀夫は胸のポケットから、いつか、入団前に尾鷲《おわせ》へやって来た時、啓子にもらった桜貝の袋を取り出した。彼はそれをずっと胸に抱いていたのである。
「苦しい時、辛い時、いつもこれを思い出した……おぼえているかい、俺が海兵団へはいるとき、啓ちゃんのくれたこの貝がら……」
「ええ……」
「これを見るたびに思い出した……命を無駄にするなって言ってくれた啓ちゃんのことだ……啓ちゃん……これだけは言わせてくれ……俺の……あのころの生活の中には、君だけがたった一つのうるおいだったんだ、人間らしい感情にひたれる思い出だったんだ……」
「秀兄ちゃん……」
「不純な気持なんて、これっぱかりもない……君を見ることで、俺は青春を取り戻せるような気がした……やり直しが出来ると思った……しかし、世間や、大人の奴《やつ》らはそれさえ許してくれないんだ……」
「秀兄ちゃん、行かないで……北海道へ帰るのはやめて……誰《だれ》がなんと言おうと、私たちはなんもやましいことなんかないんやもん……ね、そうやろ」
「啓ちゃん、俺もそう思う……けれど、俺がここに居たら、一番つらい思いをするのはお袋なんだ……お袋には、もう俺しか残っていない……親父《おやじ》は戦死した……」
「でも、いつかはわかってもらえる時が来るんと違う?」
「俺はお袋にはさんざん苦労をかけた……自分勝手に海兵団を志願して……お袋は俺のために、戦争中しなくてもいい苦労をした……せめてこれ以上お袋を不幸にしたくないんだ、お袋に泣きつかれたら、反対は出来ないんだ……」
「どうしても北海道へ帰るのね……」
「啓ちゃん……しばらくたったら、きっとまた戻ってくる……」
啓子は聞きたくないというふうに首を振った。頬《ほお》が涙に濡《ぬ》れている。
「あたしをおいて……一人で逃げるんやね……」
「逃げる……?」
「秀兄ちゃん、卑怯《ひきよう》や……自分勝手や……」
「啓ちゃん、帰ってくるよ、いまにきっと帰ってくるよ……」
「卑怯や……卑怯や……卑怯や……」
不意に啓子は秀夫の胸の中に顔をうずめた。と同時に、はげしく泣きじゃくりはじめた。
「帰ってくるよ、な……みんなが俺たちのことを気にしなくなったころ、必ず戻ってくる……」
「嫌、嫌や……そんなの嫌や……」
啓子の涙が衣服を通して、秀夫の肌にしみて来た。その温い感触に気付いたとき、秀夫の全身をはげしい戦慄《せんりつ》が走った。
秀夫は自分の体が急に熱くなるのを感じた。啓子を抱いている腕に力がこもった。
「啓ちゃん……」
しかし、彼はそれからどうしたらいいか判らなかった。徐々に、啓子を強く抱きしめながら、
「帰ってくる……きっと帰ってくる……」
ただ、そればかり繰り返した。
有里と秀夫が尾鷲を発つ日、啓子は自分の部屋へ引き籠《こも》ったきり、いくら両親に呼ばれても出て来なかった。
秀夫は一言の別れの言葉も告げずに、尾鷲を去った。
有里と秀夫はまっすぐ北海道へむかった。途中、千葉へ寄ることも考えないではなかったが、今は誰にも逢《あ》いたくない気持だった。
こんな時、有里がいちばん安心してたずねて行けるのは、やはり岡本千枝の家だった。
前もって連絡を受けていた千枝は、なにもこまかいことは聴こうとせず、極めて自然に有里と秀夫を迎え入れてくれた。
「それでもさあ、有里姉さんが帰って来てくれたんでほっとしたよ、なにしろ、ずっと一人だったもんでね、頼りなくて頼りなくて……ほんとに心細かったんだよ……」
子供が大勢いて、生活が苦しいことなどおくびにも出さなかった。
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