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旅路108

时间: 2019-12-30    进入日语论坛
核心提示:    33川にアキアジの上ってくる季節になった。どの家の軒先にも、漬物《つけもの》用の大根が何十本何百本と釣り下げられて
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    33

川にアキアジの上ってくる季節になった。
どの家の軒先にも、漬物《つけもの》用の大根が何十本何百本と釣り下げられて、澄み切った秋の陽光をいっぱいに浴びていた。
このころになって、岡本家の長女雪子の縁談がにわかにすすみだし、雄一郎夫婦もなにかと千枝に相談を持ちかけられることが多くなった。
相手は、良平の先輩で今でも千枝がなにかにつけて世話になっている吉川元機関手のところの末っ子である。光夫といい、青函《せいかん》連絡船に乗っているが、今年二十六歳のなかなかの好青年だった。家が近い関係で、雪子とは幼馴染《おさななじみ》であり、ずっと彼女に好意を持っていたのだということだった。
雄一郎は千枝からこの縁談の相談を受けたとき、最初は良平の生死もはっきりしない上、雪子も二十一とまだ若かったので、あまり急ぐ必要もないのではないかと答えたものだった。其の後、良平に関する情報は悲観的なものばかりで、一応良平のことを諦《あきら》めてかかったほうが良さそうな情勢となってきた。吉川家でも結婚式は早ければ早いほどいいという意向なので、雪子の気持を確めたところ、嫁に行ってもいいという。それではというので、この十一月にいよいよ式を挙げることになったのだった。
「東京へは千枝が手紙で知らせるといっとったが……なにしろ父親のない娘だから、俺《おれ》たちがなるべく補ってやらんとな……」
「ええ……それにしても良平さん、生きていたらどんなに見たかったことでしょうね、雪子ちゃんの花嫁姿……」
「不運な奴《やつ》だ……収容所に居さえしたら……」
「ほんとにねえ……」
有里は声をつまらせた。
最近復員して来た良平の同僚たちの話だと、良平はずっと泰緬《たいめん》鉄道で機関手として働いていたが、次第に敗戦の色が濃くなりだした頃《ころ》、ラングーンを引きあげ、タイを通ってマレーへ着きそこで終戦を迎えた。そしてマレーの鉄道隊と一緒に集結させられ、レンバン島の収容所へ移されることになったのだそうだ。ところが、日本人の間に、このままみんな奴隷にされて、もう一生日本へは帰れないだろうというデマが拡がり、戦争に敗けたというショックもあって、不安はつのる一方だった。遂に一部の者が脱走を企て、或《あ》る者は射殺され、或る者は行方不明となった。その中に良平も居たのである。良平たちは中国大陸を抜け、徒歩で日本へ帰るつもりのようだったから、今頃まで音沙汰《おとさた》が無いところをみると、多分死んだものと思われるとのことだった。
「人間の運というのはわからんもんだな、脱走しなかった連中はそれからすぐ送還船で日本へ帰れたんだからな……俺にしたところで戦死の公報がはいっても、帰れたんだし、元気だったあいつは駄目なんだから……」
二人がそんな感慨にふけっていたとき、表の戸が開いて、
「室伏さん、電報だがね……」
郵便配達の声がした。
「はい……」
有里が受取って来て、差出局を見た。
「神戸からだわ……」
「どれ、見せろ……」
雄一郎はなにげなく電文を読みくだすと、さっと表情をこわばらせた。
「なんですの?」
「ヒデオ、ミツカッタ、スグコイ、ヒロコ……」
「秀夫がみつかったんですか、あなた……」
「どうもそうらしい、弘子姉さんがみつけたんだな……」
二人は顔を見合わせた。
「どうする……お前……」
「私、行きます……すぐに……」
有里はもう立ち上っていた。
翌朝早く、有里と雄一郎は揃《そろ》って幾春別を出発した。
最初は有里一人が行く予定だったが、勤務の交替を頼んだ同僚が快く承知してくれたので、雄一郎も一緒に出掛けることになった。
夫婦は落着かなかった。雄一郎は六年ぶりに逢《あ》う息子《むすこ》であったし、有里にしても、終戦の翌年別れたきりであった。
あれからの歳月を、秀夫が何処《どこ》でどうして生きて来たのか、有里にはまるで想像もつかなかった。弘子からの電文では、秀夫がはたして元気なのかどうかも覚束《おぼつか》ない。
長い列車の旅を、二人はほとんど無言であった。それぞれに、秀夫のもとに思いを馳《は》せ、ひそかに胸を痛めていたのだった。
芦屋《あしや》にある吉田屋の別宅は、青い瓦《かわら》屋根をのせた洋館で、さすがに贅沢《ぜいたく》な造りだった。
「姉さん、電報ありがとうございました……秀夫は……秀夫はいったいどこに居るんですか……あの子、元気なんでしょうねえ」
有里は挨拶《あいさつ》もそこそこに、まず秀夫の安否を姉にたずねた。
「はあ、元気も元気、大元気や……」
弘子は皮肉をこめた眼差で、妹夫婦を眺めやった。
「えらい苦労したんやでえ……なんとかして、無事にあんたたちに逢わせたいと思うたさかいな」
「そりゃあ、もう、どんなに感謝しても、感謝しきれんと思っています……」
我が子に逢える喜びで、雄一郎には弘子の皮肉は通じなかった。
「で、秀夫はどこに居るんですか、この近くですか?」
「神戸や」
「神戸……神戸のどこです?」
「港のあたりや」
謎《なぞ》をかけるような笑いかたを弘子はした。
「港で働いているんですか」
有里が訊《き》いた。
「いいや……いったい何してると思う?」
「なにって……」
「あんたら、なんにも知らんさかい、のほほんとしてるけどなあ、うちは最初に逢うたときはびっくりしたのなんのって……もう、えらい変りようやったわ」
秀夫が良くない変りかたをしているらしいことに気づき、雄一郎と有里は表情を曇らせた。
「話してください、秀夫の奴《やつ》、いったいどんな生活をしてるんです」
「それがな、ついこのあいだの晩のことや……」
弘子は外聞をはばかるのか、そっと声をひそめた。
「神戸のKホテルで慈善ダンスパーティがあって、うちもそれに出席したのやけど、その帰りに、糸川さんいう大学生と何か軽いものでも飲むつもりで港のそばのバーへ行ったんや、もっとも誤解せんといてや、その大学生はうちのお友だちの弟さんやねん……」
「それで、どうしたんです、お姉さん」
有里が前へ身をのり出した。
「そしたらあんた、店へはいって一時間もたったころ、人相の良くない男たちが四、五人もでやって来て、私たちを脅迫するのや……あの辺には進駐軍相手のぽん引やらヤミ屋やらヘロインの密売屋やら、なんやたちの良くない連中が仰山《ぎようさん》居てな、罪もなんもない人間に難癖つけたりお金をせびったりするのやて……糸川さんは純情なぼんぼんやさかい、悪い女にだまされてな、一度か二度ダンスホールへ連れて行ったんやそうやけど、それがあかん言うてな……」
「姉さん、糸川さんとかいう人の話はとにかく、秀夫のことを早く聞かせて下さい」
「あんた、阿呆《あほ》やな、これが秀夫ちゃんの話なんやで……そのチンピラたちの中に秀夫ちゃんが居ったんや」
「ええッ、なんですって……」
「うちも最初は人違いかと思ったわ、けど、秀夫ちゃんの方はけろりとしたもんや……うちの前へ平気で出て来て挨拶《あいさつ》までしよったわ、みんなと一緒になって小遣欲しい言うのや」
「あの子が……あの子が、姉さん、小遣をせびったんですか」
「そりゃなあ、甥《おい》が伯母《おば》から金をもろても、罪にはならん、ゆすりにもたかりにもならんのやけど……うちももう、あの子のいいなりになってたんよ、下手に騒いで逃げられるより、いいなりになって、あの子の居所を知りたい思うたし、様子がわかれば、あの子をそんな仲間から救い出すことも出来る思うてな……あとで糸川さんに聞いたら、あの子は港のへんをいつもうろついてる与太もんやそうや……」
「嘘《うそ》ですよ、そんな……」
有里はたまらなくなって弘子の言葉をさえぎった。
「あの子はそんな与太者になんかなるような子じゃありません」
「うちかて本気にせなんだわ……横浜の方では女と同棲《どうせい》していて、子供が出来たので女を捨てて神戸へ流れて来たのやて……酒は飲む喧嘩《けんか》はする……チンピラ仲間でも相当な顔役やそうや」
「逢《あ》わせてください秀夫に……きっと間違いですよ、そんなことあの子に限って……」
「世間の親は、みんなそう言うのや、うちの子に限ってそんなことあらへん……子供は蔭《かげ》で舌だして笑ってるわ、うちの言うことが嘘かどうか、あんたら、その眼でよう確かめるといいわ」
「とにかく、秀夫の居る場所を教えてください……」
あまりのことに声も出なかった雄一郎が、ようやく口を開いた。
「これからすぐそこへ行ってみますから……」
「昼間はどこに居るかわからへん、夜にならんと出てこんのや、待ってえな、今、糸川さんに連絡してみるさかい……」
弘子は立ち上ると、正面の飾棚の上の受話器をとった。
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