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旅路119

时间: 2019-12-30    进入日语论坛
核心提示:    43そのころ、一度函館を出港した第十一青函丸は強風のため航行を断念し、再び函館港に引返して来た。第十一青函丸は、こ
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    43

そのころ、一度函館を出港した第十一青函丸は強風のため航行を断念し、再び函館港に引返して来た。
第十一青函丸は、この日、駐留軍関係の客貨輸送という特殊任務を帯びていたため、青函鉄道管理局では、十四時四十分出港予定の洞爺丸に予定時刻を変更させ、第十一青函丸の乗客及び貨車を移乗させるよう指令した。
この乗り換えが終ったのが十五時十五分、洞爺丸は出港準備完了のまま、船長の指示を待った。
其《そ》の後、十七時すぎ、風速は急に衰え、雨もやんだ。雲のあい間からは陽がさし始め、西の空は真赤な夕やけになった。
船長はこの晴れ間を見て、航行可能と判断し、出港の命令を下した。
ところが、これから約一時間後の十八時過ぎ、突然風向が南に変ったとみるまに、平均風速三十|米《メートル》という暴風雨となった。二十時から二十一時頃は、実に、瞬間風速五十米を超え、遂に世界海難史上|稀《まれ》にみる大惨事となったのである。
洞爺丸、第十一青函丸、日高丸、十勝丸、北見丸の五隻が沈没し、千数百人がその犠牲となった。
第十一青函丸船長溝上敬吉や洞爺丸機関部員、室伏秀夫もその中の一人だった。
その夜の秀夫の働きぶりが、生き残りの乗員の口から伝えられた。
それによると、風のもっとも強くなりだした二十時頃から、船内の海水の浸入がものすごく、このため、船にとっては心臓ともいうべき、機械室、汽缶室への浸水がはじまった。もし、海水のため汽缶の火が消えれば、船はたちまち押し流され、座礁顛覆《ざしようてんぷく》することは目に見えている。秀夫たち機関部員は必死になって水と闘った。
浸水のため復原力の減少した船体は、激しく動揺し、何かにつかまらなければ立っていることも覚束ない状態だった。
それから約二時間後、必死に守り続けた三、四、五号缶の火が遂に消えた。それでも一、二号缶はまだ守られていた。
二十二時十二分頃、船長は航行をあきらめ、全員に救命胴衣の着用を命じ、避難体勢をととのえさせた。
そして、二十二時四十分頃、七重浜沖で座礁し、そのまま横転沈没したのだった。
秀夫は最後まで一、二号缶のそばを離れず、火を守っていたという。
彼はこのとき二十六歳、妻の奈津子は妊娠五か月だった。
 一年は夢のように過ぎた。
秀夫の遺骨を塩谷の両親の墓の傍へ納め、更に秀夫が世話になったボースンこと、溝上敬吉の遺骨をその隣りに埋葬した。
溝上には血縁関係者が絶えたのか、誰《だれ》も遺骨の引き取り手がなかった。
奈津子はもちろん雄一郎夫婦の家に引き取られ、三月六日、皇后誕生日の日に丸々と肥った男児を出産した。
名前は雄一郎が考え、秀彦とつけた。
やがて、秀夫の一周忌も間近い八月二十五日、七重浜の遭難現場のよく見える函館山の中腹に、十五号台風による海難慰霊碑が建てられ、その除幕式が行なわれた。
雄一郎も有里と奈津子を連れて式に参列した。
式のあと、雄一郎たちは大勢の人の群をはなれ、港や函館市内の見晴らせる場所へ行った。
港も空も、一年前のあの事がまるで嘘《うそ》のように穏やかだった。静かな海面におもちゃのような船がひっそりとへばりついている。その平和なたたずまいに、雄一郎も有里も戸惑いすら感じるほどだった。
有里は若い頃、この山に今日と同じように夫と共に登ったことがあるのを思い出した。初めて姉の弘子と共に北海道へ来た時のことである。
有里はそっと夫の横顔を見た。
昔は黒々としていた髪の毛に、随分白いものが混っている。
雄一郎はじっと放心したように、向いの山の上に高く湧《わ》いている入道雲を見詰めていた。
有里はふっと不安に襲われた。
「あなた……何を考えていらっしゃるんです……秀夫のことですか?」
「フム……」
「秀夫のことだったら、もう忘れましょうよ、いくら考えてもきりのないことですもの……私たちがいつまでも悲しんでいては、あの子がかえって浮かばれませんわ……」
「そうじゃないよ……」
雄一郎がふりかえった。
「俺はあいつのことを思い出して哀《かな》しんでいたんじゃない……あの雲の向うの秀夫の奴《やつ》に、あの晩、よく機関部員としての職責をはたし、最期まで汽缶の火を守ってくれた、よくやったと褒《ほ》めてやっていたんだよ」
「あなた……」
「心配しなくていい、俺はまだまだ老いぼれやせん……第一、秀夫の奴がこんな小さな奴を俺に預けて行っちまったじゃないか……」
雄一郎はそう言うと、まるで壊れ物にでもさわるような手つきで、奈津子から秀彦を抱き取った。
「こいつの為にも、俺は長生きして働かなきゃならんのだ……」
雄一郎は秀彦に眼を細めた。しかし秀彦は何が気に入らないのか顔をくしゃくしゃにして激しく泣いた。
「おお、よしよし……」
有里があわてて雄一郎から赤ん坊を取り上げた。
「おじいちゃんは下手くそねえ……よしよし、よしよし……」
さすがに馴《な》れた手つきであった。
「さあねんこしましょうね……坊やはいい子だ、ねんねしな……」
いつか有里の顔からも、哀しみや不安はあとかたもなく消えていた。
そこには最早《もはや》、赤ん坊をあやすことのみに熱中する、ごく当り前の女の表情しか無かった。
有里の歌う子守唄《こもりうた》が、蒼《あお》く澄み切った北海道の空に遠く流れた。
風にのって、汽笛がかすかに聞えた。
いま、遥《はる》か下界の函館駅を、白い蒸気を吐きながら、列車が長い旅路へと出発するところだった。
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