ま え が き
しゅん——といえば、まず思い出されるのがサカナ。もちろん、野菜やくだものにだって、しゅんはあります。サカナでも、野菜やくだものでも、いちばんおいしく、たくさん出回る時季——それがしゅんです。
一年中出回っているアジやサバ、ハマチでも、厳密にいえば、ちゃんとしたしゅんがあります。その時季に食べれば、そのものの持ち味が、最高度に味わえるというわけです。
しゅんは、漢字で書くと「旬」(十日)、つまり、おいしい時季は、ごく短いのです。たべものの正しいしゅんの時季を知って、「時ならざる、食らわず」の心がけで、出盛りの安くて、うまいしゅんものを存分に味わってください。
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そんなわけで、書名も本来なら『しゅんもの歳時記』とすべきでしたが、今日では、もはや「しゅん」といっても、若いひとたちには、通じにくいというので、止むなく『たべもの歳時記』と、変えました。
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ページ数の関係もあって、数あるしゅんものの中から、ひと月二十とかぎり、一年計二百四十(魚九十四、肉二、貝十五、野菜七十三、西洋野菜十四、海藻四、くだもの三十八)のしゅんものを取り上げ、一ページごとに、テーマを変え、原産地・分布・名のいわれ・エピソード・料理名や作り方のヒント・買い方・選び方のコツを、俳句や歌を配して、解説しました。また、しゅんの時季を知っていただくために、巻末に「しゅんもの一覧表」をつけました。
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この本を書くについて、多くの先学の、さまざまな本を参照させていただきました。読者のみなさまへの参考文献をかねて、その主なものを、巻末に列挙し、ご紹介いたしますとともに、心から謝意を表します。