ニシンが獲《と》れなくなって、すでに久しい。最近はこれまでの沿岸漁獲一本やりに加え、ベーリング海への遠洋漁獲をはじめたため、全体の水揚げ量は、なんとか上昇線をたどってはいるものの、最盛期にくらべたら、十分の一にも及ばないほどの減少ぶりです。むかし北海道の西海岸沿いに、津波のように押寄せ、「魚に非ず、松前の米」とまでいわれたニシンの大群は、もう二度と見られないものでしょうか。ニシン不漁の原因を、ひとは「ニシンの獲り過ぎ」といい、「水温の変化」と推測していますが、もちろん、確実なことは全く不明で、ただ、つぎのようなことが知られている程度です。
その一つは、世界的な規模では、ニシンは少しも減っていないということです。ニシンの漁場は、かつてメッカといわれた北海道・南樺太沿岸のほか、オホーツク海北岸、カムチャツカ南西岸、さらに太平洋北東部や大西洋など、世界のあちこちにあります。そして各漁場にあらわれるニシン群は、それぞれグループをなしていて、グループ間の交渉は見られない。だから、北海道ニシンの減少は、全くそのグループだけの「家庭の事情」ということになります。
ニシンはニシン科に属する大洋魚で、イワシに似ていますが、大きくなると、イワシよりも平たい形になります。体長は三十五センチ。春告魚といわれるように、早春から五月頃までがしゅん。漁期に、はしり、中期、後期があり、脂肪が乗っておいしいのははしり。
塩焼きにするほか、みそ焼き、フライにしてもおいしい。身欠《みかき》は米のとぎ汁に灰汁《あく》を少し加えたものに、一日ぐらい浸《つ》けておくと戻り、こぶを巻いて煮たり、蒲焼き、煮つけなどにします。
妻も吾もみちのくびとや鰊食ふ 青邨
その一つは、世界的な規模では、ニシンは少しも減っていないということです。ニシンの漁場は、かつてメッカといわれた北海道・南樺太沿岸のほか、オホーツク海北岸、カムチャツカ南西岸、さらに太平洋北東部や大西洋など、世界のあちこちにあります。そして各漁場にあらわれるニシン群は、それぞれグループをなしていて、グループ間の交渉は見られない。だから、北海道ニシンの減少は、全くそのグループだけの「家庭の事情」ということになります。
ニシンはニシン科に属する大洋魚で、イワシに似ていますが、大きくなると、イワシよりも平たい形になります。体長は三十五センチ。春告魚といわれるように、早春から五月頃までがしゅん。漁期に、はしり、中期、後期があり、脂肪が乗っておいしいのははしり。
塩焼きにするほか、みそ焼き、フライにしてもおいしい。身欠《みかき》は米のとぎ汁に灰汁《あく》を少し加えたものに、一日ぐらい浸《つ》けておくと戻り、こぶを巻いて煮たり、蒲焼き、煮つけなどにします。
妻も吾もみちのくびとや鰊食ふ 青邨