さんぽうかんは「其の大きさ柚の如くにして、其の蔕《へた》乳房の如く高く起りて其の状頗る壺に似たるを以て、壺柑とは名付」と、岡村尚謙の『桂園橘譜《けいえんきつぷ》』という本に記されています。なり口の部分が高く盛り上がっていて、みかんの上に頭をつけたような形をしているところから、一名|達磨《だるま》蜜柑《みかん》ともいいます。
いつ頃のことかはっきりしませんが、徳川御三家の一、紀州家和歌山城内に唯一本あって、維新までは「お止めみかん」と名付けられ、よそへは種を一切出さない、いわゆる城外不出の珍種とされ、一般には長いこと知られずにいました。明治の御代になって、はじめてある士族の庭に移し植えられ、さらに田殿村字田口の大江城平というひとが、これを接木繁殖して、次第に田栖川村方面に伝播したといわれています。紀州は、みかんの生育にふさわしい土地柄のようで、紀州みかんをはじめ、良質の各種みかんを産出し、名実ともに日本の柑橘類の本場になっています。ところで、「三宝柑」の名の由来ですが、例年、実が熟すと、これを三方《さんぽう》にのせ、紀州侯に献上する|ならわし《ヽヽヽヽ》があり、のちに三方が三宝になって、かくは名付けられたといいます。
さわやかなかおりと、やわらかい肉質、さっぱりした風味で、甘酸が実によく調和したおいしい果汁は、まさに三方に載せて供するにふさわしく、日本特有の品格をそなえたくだものといえましょう。うま味が出るのは、三月の初旬からで、これから四、五月頃までが、味も色艶もよい食べ頃の季節です。お買いになるときは、皮肌がなめらかで、艶があり、手に持って心地よい重量感のあるものをお選びください。結実したまま年を越すので、産地の条件、その年の気象条件によって、「す上がり」現象を起し、水分の少なくなった劣等品がありますので、ご注意を。
いつ頃のことかはっきりしませんが、徳川御三家の一、紀州家和歌山城内に唯一本あって、維新までは「お止めみかん」と名付けられ、よそへは種を一切出さない、いわゆる城外不出の珍種とされ、一般には長いこと知られずにいました。明治の御代になって、はじめてある士族の庭に移し植えられ、さらに田殿村字田口の大江城平というひとが、これを接木繁殖して、次第に田栖川村方面に伝播したといわれています。紀州は、みかんの生育にふさわしい土地柄のようで、紀州みかんをはじめ、良質の各種みかんを産出し、名実ともに日本の柑橘類の本場になっています。ところで、「三宝柑」の名の由来ですが、例年、実が熟すと、これを三方《さんぽう》にのせ、紀州侯に献上する|ならわし《ヽヽヽヽ》があり、のちに三方が三宝になって、かくは名付けられたといいます。
さわやかなかおりと、やわらかい肉質、さっぱりした風味で、甘酸が実によく調和したおいしい果汁は、まさに三方に載せて供するにふさわしく、日本特有の品格をそなえたくだものといえましょう。うま味が出るのは、三月の初旬からで、これから四、五月頃までが、味も色艶もよい食べ頃の季節です。お買いになるときは、皮肌がなめらかで、艶があり、手に持って心地よい重量感のあるものをお選びください。結実したまま年を越すので、産地の条件、その年の気象条件によって、「す上がり」現象を起し、水分の少なくなった劣等品がありますので、ご注意を。