赤貝
「蛤は初手赤貝は夜中なり」ご存知『誹風末摘花《はいふうすえつむはな》』の冒頭に出て来る艶笑句です。この句をはじめ、|女性自身《ヽヽヽヽ》を貝類にたとえるのは、むかしからのことで、古川柳にはシジミ、アサリ、ハマグリ、アカガイ、トリガイを、幼女、少女、適齢期、成人、商売女というふうに分けて、いろいろ詠《よ》み込んでいます。一説には、貝は発音が開に通じるからといわれますが、やはり形からの連想でしょう。中でもハマグリの句が多く、
蛤になったに母はしじみの気
お察しのよい方に解釈は任せるとして、赤貝のほうはと見れば、
赤貝をくじってたわけ喰いつかれ
いささか、おだやかでない句もあります。
赤貝のしゅんは晩冬から春で、とくに産卵期を前にした春がいちばんうまい。
ふつう赤貝といわれているものには、サルボウ、ハイガイなどもふくまれています。これらのものを見分けるには、貝殻の筋によってですが、赤貝では四十二、三本、サルボウでは二十九〜三十二本、ハイガイでは約二十本で、見かけはさほど変らないので、市販品の中には、ほんとうの赤貝でないのもまじり、たいていはサルボウ、ハイガイとは知らずに食べています。
むかしから千葉県富津産のものは有名で、肉は厚く、色は赤味の強い樺色《かばいろ》をしています。貝殻付きの生きたものなら、すしダネや刺身がうまく、わかめとの二杯酢もいけます。赤貝はこのほか、「ひも」がよく、コリコリする歯ざわりと噛みしめたときの味は、身よりも賞味に価いします。
赤貝や蝶に開いてにぎり鮨 雪魚
蛤になったに母はしじみの気
お察しのよい方に解釈は任せるとして、赤貝のほうはと見れば、
赤貝をくじってたわけ喰いつかれ
いささか、おだやかでない句もあります。
赤貝のしゅんは晩冬から春で、とくに産卵期を前にした春がいちばんうまい。
ふつう赤貝といわれているものには、サルボウ、ハイガイなどもふくまれています。これらのものを見分けるには、貝殻の筋によってですが、赤貝では四十二、三本、サルボウでは二十九〜三十二本、ハイガイでは約二十本で、見かけはさほど変らないので、市販品の中には、ほんとうの赤貝でないのもまじり、たいていはサルボウ、ハイガイとは知らずに食べています。
むかしから千葉県富津産のものは有名で、肉は厚く、色は赤味の強い樺色《かばいろ》をしています。貝殻付きの生きたものなら、すしダネや刺身がうまく、わかめとの二杯酢もいけます。赤貝はこのほか、「ひも」がよく、コリコリする歯ざわりと噛みしめたときの味は、身よりも賞味に価いします。
赤貝や蝶に開いてにぎり鮨 雪魚