にんにく博士として名高い、大阪市大の渡辺正先生が、近著『にんにく』の中で、あさつきについて、おもしろいエピソードを紹介しておられます。
�ある時、東京の人が、所用があって秋田地方に出張しました。予定の日がすぎてもさっぱり音さたがありません。奥さんのごきげんが、しだいにナナメになってきたのは当然でした。その時、秋田美人の載っている絵はがきが舞い込んで来ました。見ると、それに歌らしいものが書いてあります。「ひろこよし ひでこもうまし あいこよし おばこもとより きりたんぽよし」これをみた奥さんはカンカンになって怒りだしました。「予定がとうの昔にすぎても帰って来ないというのに、芸者を相手にして遊びくらすとは。おまけに弘子とか愛子とか、よくぬけぬけと女の名まえまであげて……」というのです。
「オバコノハナシ キキタクモナシ ハヤクカエレ」と、早速に電報をうちます。おりかえし「ヒロコアサツキ ヒデコハシオデ ヤサシアイコハ イタイタソウ」�いろいろな植物を賞でて、東北方言で出した|たより《ヽヽヽ》がとんだ珍騒動をまき起したという話。
東北地方では、自生種のあさつきを「ヒロコ」と呼んでいます。あさつきはひる(蒜)の一種なので、そのむかし「ヒルコ」と呼んでいたのが、のちになまって「ヒロコ」になったのでしょう。
山野に自生しますが、畑にも作られ、殆ど一年中あります。二月から三月にかけてが出回りの最盛期。ねぎのようなかおりがあるため、薬味として利用します。早春頃のあさつきの葉は、甘味があって、|にら《ヽヽ》や|にんにく《ヽヽヽヽ》ほどの臭みもなく、汁の実や、ゆでて酢みそあえにします。
あさつきや座頭が妻の好み食 布人
�ある時、東京の人が、所用があって秋田地方に出張しました。予定の日がすぎてもさっぱり音さたがありません。奥さんのごきげんが、しだいにナナメになってきたのは当然でした。その時、秋田美人の載っている絵はがきが舞い込んで来ました。見ると、それに歌らしいものが書いてあります。「ひろこよし ひでこもうまし あいこよし おばこもとより きりたんぽよし」これをみた奥さんはカンカンになって怒りだしました。「予定がとうの昔にすぎても帰って来ないというのに、芸者を相手にして遊びくらすとは。おまけに弘子とか愛子とか、よくぬけぬけと女の名まえまであげて……」というのです。
「オバコノハナシ キキタクモナシ ハヤクカエレ」と、早速に電報をうちます。おりかえし「ヒロコアサツキ ヒデコハシオデ ヤサシアイコハ イタイタソウ」�いろいろな植物を賞でて、東北方言で出した|たより《ヽヽヽ》がとんだ珍騒動をまき起したという話。
東北地方では、自生種のあさつきを「ヒロコ」と呼んでいます。あさつきはひる(蒜)の一種なので、そのむかし「ヒルコ」と呼んでいたのが、のちになまって「ヒロコ」になったのでしょう。
山野に自生しますが、畑にも作られ、殆ど一年中あります。二月から三月にかけてが出回りの最盛期。ねぎのようなかおりがあるため、薬味として利用します。早春頃のあさつきの葉は、甘味があって、|にら《ヽヽ》や|にんにく《ヽヽヽヽ》ほどの臭みもなく、汁の実や、ゆでて酢みそあえにします。
あさつきや座頭が妻の好み食 布人