赤羽根の堤に生《お》ふるつくづくし 伸びにけらしも摘む人なしに
『病牀六尺《びようしようろくしやく》』の中に収録されている正岡子規の歌です。この歌を詠《よ》んだ頃、子規はすでに不治の病いに侵され、再起不能になっていました。のびのびとしたうたいぶりの中に、赤羽根の堤に摘む人もなしに、伸び惚《ほう》けているつくしを、、再び起《た》つことのできない病いの床において偲ぶ子規の、そのときの感懐がよく表わされています。
つくしは、つくしんぼ、つくづくし、うまのさとう、きつねのたばこ……と、土地土地によって、いろんな名まえで呼ばれていますが、トクサ科に属する「すぎな」の胞子茎(花)に対する呼び名です。多くのひとは、つくしの|はかま《ヽヽヽ》から「すぎな」の葉が出るものと思っているようですが、よくよく見ていると、つくしんぼの花が見るかげもなく枯れてしまった頃に、すぎなは芽を出して来ます。つまり、花が先に咲き、花が散ってから、いっせいに葉が出て来るのです。はかまといっているふしについた苞様《つとよう》の部分を取り、きれいに洗ってのち、ゆでてアクを抜き、あえもの、酢のもの、てんぷら、佃煮などにし、ごはんにも炊き込みます。
土筆《つくし》めし山妻をして炊かしむる 風生
なるべく若い、穂先の固い、肥《ふと》ったものが、香味のあるよいものです。「つくしめし」にするときは、つくしの若いものがよく、アク抜きしたものを、みりん、しょうゆ、煮ダシで、あらかじめ下煮しておきます。ごはんは薄く塩味をつけて炊き、火を引く直前に、下煮したつくしをまぜ入れ、移すときに、よくまぜ合わせます。つくしのほのかなかおりと、さくさくした歯ざわり——「つくしめし」は、いかにも春にふさわしいごはんものです。
『病牀六尺《びようしようろくしやく》』の中に収録されている正岡子規の歌です。この歌を詠《よ》んだ頃、子規はすでに不治の病いに侵され、再起不能になっていました。のびのびとしたうたいぶりの中に、赤羽根の堤に摘む人もなしに、伸び惚《ほう》けているつくしを、、再び起《た》つことのできない病いの床において偲ぶ子規の、そのときの感懐がよく表わされています。
つくしは、つくしんぼ、つくづくし、うまのさとう、きつねのたばこ……と、土地土地によって、いろんな名まえで呼ばれていますが、トクサ科に属する「すぎな」の胞子茎(花)に対する呼び名です。多くのひとは、つくしの|はかま《ヽヽヽ》から「すぎな」の葉が出るものと思っているようですが、よくよく見ていると、つくしんぼの花が見るかげもなく枯れてしまった頃に、すぎなは芽を出して来ます。つまり、花が先に咲き、花が散ってから、いっせいに葉が出て来るのです。はかまといっているふしについた苞様《つとよう》の部分を取り、きれいに洗ってのち、ゆでてアクを抜き、あえもの、酢のもの、てんぷら、佃煮などにし、ごはんにも炊き込みます。
土筆《つくし》めし山妻をして炊かしむる 風生
なるべく若い、穂先の固い、肥《ふと》ったものが、香味のあるよいものです。「つくしめし」にするときは、つくしの若いものがよく、アク抜きしたものを、みりん、しょうゆ、煮ダシで、あらかじめ下煮しておきます。ごはんは薄く塩味をつけて炊き、火を引く直前に、下煮したつくしをまぜ入れ、移すときに、よくまぜ合わせます。つくしのほのかなかおりと、さくさくした歯ざわり——「つくしめし」は、いかにも春にふさわしいごはんものです。