スマートな姿態と、大きな胸ビレをもつトビウオが、春を背負って、出回って来ました。春の日は、おだやかな日和がつづくと、トビウオの入荷が目立ちます。いま時分、東京あたりに出回るものは、伊豆七島あたりで獲れたものが多く、体重も揃っていて、一本約四百グラム程度のもの。トビウオは、目方で売られず、一尾といわず、一本いくらで売り買いするのが、むかしからの|ならわし《ヽヽヽヽ》になっています。
胸鰭も藍にただよふ飛魚を買ふ 君子
末広先生のお話によると、「トビウオの胸ビレは、決して鳥のようにはばたくことはしない。つまり、トビウオの飛行はグライダーのようなのである」とのこと。つまり、トビウオは、飛行するに際して、海の表層を、スピードを速め、力いっぱい泳ぎ、充分加速度がついたと思える頃合を見計らって、尾でもって水面をたたき、同時に長い胸ビレを左右にピンと張りひろげて、空中に舞い上がるのです。高さは約二メートルから数メートル、一回の飛行距離は、トビウオの種類や大きさ、風向き、風力などによって、多少の差はあるものの、一飛びだいたい三百メートルだといわれています。
白身の小骨の多い魚で、むかしから煮つけにはしません。また、刺身にも向かないようです。しかし、塩をふってしばらく置き、洗って拭いて、焼くときにいま一度、心もち化粧塩をすると、なかなか風味もあるし、おいしく召し上がれます。『本朝食鑑《ほんちようしよつかん》』に「生食|佳《よ》からず、乾魚味好し」と書かれているとおり、トビウオのほんとうのうまさは、干ものにして引き出すもののようです。このほか、フライ、すり身にして吸いものダネにもします。
胸鰭も藍にただよふ飛魚を買ふ 君子
末広先生のお話によると、「トビウオの胸ビレは、決して鳥のようにはばたくことはしない。つまり、トビウオの飛行はグライダーのようなのである」とのこと。つまり、トビウオは、飛行するに際して、海の表層を、スピードを速め、力いっぱい泳ぎ、充分加速度がついたと思える頃合を見計らって、尾でもって水面をたたき、同時に長い胸ビレを左右にピンと張りひろげて、空中に舞い上がるのです。高さは約二メートルから数メートル、一回の飛行距離は、トビウオの種類や大きさ、風向き、風力などによって、多少の差はあるものの、一飛びだいたい三百メートルだといわれています。
白身の小骨の多い魚で、むかしから煮つけにはしません。また、刺身にも向かないようです。しかし、塩をふってしばらく置き、洗って拭いて、焼くときにいま一度、心もち化粧塩をすると、なかなか風味もあるし、おいしく召し上がれます。『本朝食鑑《ほんちようしよつかん》』に「生食|佳《よ》からず、乾魚味好し」と書かれているとおり、トビウオのほんとうのうまさは、干ものにして引き出すもののようです。このほか、フライ、すり身にして吸いものダネにもします。