山の端に佗住む日々や韮《にら》の雨 草堂
にらは古名「こみら」「かみら」あるいほ「みら」と呼び、にらはそこから転じた名で、ねぎを「ひともじ」と呼ぶのに対して、「ふたもじ」ともいいます。
東洋の特産物で、『史記《しき》』貨殖編《かしよくへん》に「千畦の韮圃あらばその富、千戸の侯に及び、その分限は一県の領主と異ならず」と説かれ、たいへん重要な野菜の一つであったようです。わが国には中国から伝わったものらしく、『古事記』にも現われて、神武天皇の御歌に、
みつみつし久米《くめ》の子らが粟生《あわふ》には 臭韮《かみら》一茎《ひともと》
そねが茎《もと》そね芽繋《めつな》ぎて撃《う》ちてしやまむ
と、出ています。こうした歌謡のなかに、にらが出てくるのは、これを食用にしていたからで、むかしは五菜の一つにも数えられ、供御《くご》(飲食物の敬称、天皇・上皇・皇后・皇子のものにいう。「飯」の女房ことば)の料《りよう》となっていたことが『延喜式』にも記されています。
にらは強い匂いから、これをきらうひとも多いようですが、冬を除いて、一年中いつでも利用でき、自家用野菜としてべんりなもの。近頃は、「もやしにら」といって、冬場にこれを軟化したものが売られ、匂いも弱く、おいしいものです。益軒先生の『菜譜《さいふ》』には、「正月色黄にして、いまだ土を出《いで》ざる時、味尤《もつとも》よし、韮黄《にらき》と名づく」と記されていますが、これがおそらく今日いう|もやしにら《ヽヽヽヽヽ》でしょう。病人食として「にらがゆ」「にらのおじや」は古くから親しまれ、ぬたにしたり、みそ汁の実としても用いられ、強精保健食としても、ありがたがられてきました。また早漏《そうろう》を防ぐ作用があり、たびたび食用すれば、スタミナのつくことは確かです。
韮切つて酒借りにゆく隣りかな 子規
にらは古名「こみら」「かみら」あるいほ「みら」と呼び、にらはそこから転じた名で、ねぎを「ひともじ」と呼ぶのに対して、「ふたもじ」ともいいます。
東洋の特産物で、『史記《しき》』貨殖編《かしよくへん》に「千畦の韮圃あらばその富、千戸の侯に及び、その分限は一県の領主と異ならず」と説かれ、たいへん重要な野菜の一つであったようです。わが国には中国から伝わったものらしく、『古事記』にも現われて、神武天皇の御歌に、
みつみつし久米《くめ》の子らが粟生《あわふ》には 臭韮《かみら》一茎《ひともと》
そねが茎《もと》そね芽繋《めつな》ぎて撃《う》ちてしやまむ
と、出ています。こうした歌謡のなかに、にらが出てくるのは、これを食用にしていたからで、むかしは五菜の一つにも数えられ、供御《くご》(飲食物の敬称、天皇・上皇・皇后・皇子のものにいう。「飯」の女房ことば)の料《りよう》となっていたことが『延喜式』にも記されています。
にらは強い匂いから、これをきらうひとも多いようですが、冬を除いて、一年中いつでも利用でき、自家用野菜としてべんりなもの。近頃は、「もやしにら」といって、冬場にこれを軟化したものが売られ、匂いも弱く、おいしいものです。益軒先生の『菜譜《さいふ》』には、「正月色黄にして、いまだ土を出《いで》ざる時、味尤《もつとも》よし、韮黄《にらき》と名づく」と記されていますが、これがおそらく今日いう|もやしにら《ヽヽヽヽヽ》でしょう。病人食として「にらがゆ」「にらのおじや」は古くから親しまれ、ぬたにしたり、みそ汁の実としても用いられ、強精保健食としても、ありがたがられてきました。また早漏《そうろう》を防ぐ作用があり、たびたび食用すれば、スタミナのつくことは確かです。
韮切つて酒借りにゆく隣りかな 子規