漢字で「甘味」と書くと、あま味なのか、それともうま味なのか、迷うほど、日本人の舌は、あま味とうま味が混乱しているように思います。たまたま、講演など頼まれて田舎に行くと、精いっぱい心を籠めてごちそうする気で、砂糖をたっぷり入れた料理を出され、食うに食われず、さりとて箸を取らなければ礼を失する……、まったく閉口することがあります。田舎の特色ある料理材料の持ち味が全く殺されてしまい、せっかくのごちそうも、逆にありがたくないものになってしまいます。こうした例は、田舎だけに止まらず、都会にもあります。砂糖の甘味を補助味にして、味を整えてよいものは、せいぜいでんぷん質のさつまいも、くり、ゆりねくらいのもので、そのほか、一般のよい材料には、砂糖は邪魔になります。これから出回る山菜なども、できるだけ、持ち味を生かした調理を心がけ、一年一度の季節の風味を味わいたいものです。
折もてる蕨凋《わらびしお》れてくれ遠し 蕪村
わらびは四月下旬から六月にかけて、|にぎりこぶし《ヽヽヽヽヽヽ》に似た嫩茎《わかぐき》を、もたげます。この嫩茎には、多くのでんぷんがふくまれています。朝方山に入り、摘み採って、その日のうちに食べるか、加工します。そうしないと、時間が経つに従って、根元のほうから段々固くなり、食べられなくなってしまいます。保存と運搬には、不便この上ないわらびも、山菜の中では、とくに美味なこと、利用量の多いことで、群を抜いています。一般には、わらびの嫩茎を木灰にまぶし、その上から熱湯を注いで、一晩寝かせ、そのあと水洗いをよくして、アクの抜けたところで、煮つけをはじめ、汁の実、三杯酢のひたしもの、酢みそなどにして食べます。
折もてる蕨凋《わらびしお》れてくれ遠し 蕪村
わらびは四月下旬から六月にかけて、|にぎりこぶし《ヽヽヽヽヽヽ》に似た嫩茎《わかぐき》を、もたげます。この嫩茎には、多くのでんぷんがふくまれています。朝方山に入り、摘み採って、その日のうちに食べるか、加工します。そうしないと、時間が経つに従って、根元のほうから段々固くなり、食べられなくなってしまいます。保存と運搬には、不便この上ないわらびも、山菜の中では、とくに美味なこと、利用量の多いことで、群を抜いています。一般には、わらびの嫩茎を木灰にまぶし、その上から熱湯を注いで、一晩寝かせ、そのあと水洗いをよくして、アクの抜けたところで、煮つけをはじめ、汁の実、三杯酢のひたしもの、酢みそなどにして食べます。