食べもののお国自慢にも、いろいろありますが、アユほどお国自慢のタネにされる魚はありません。それというのも、北は北海道の石狩《いしかり》川から、南は九州の玖磨《くま》川まで、ひろく分布しているからです。六月一日前後の解禁日近くなると、あちこちから「アユだより」が聞かれ、釣マニアたちは浮足立ってきます。
三、四月頃の若アユは、口に小さな犬歯状の歯を持っていて、昆虫や小さな甲殻類を餌《えさ》にしていますが、解禁前後の頃になると、動物質の餌を摂《と》るのを止め、歯も犬歯状の歯が退化して、櫛形の歯が出揃うようになり、川底の石や岩についている珪藻《けいそう》や藍藻《らんそう》(釣人たちのいう石垢《いしあか》)を食うようになります。アユの特殊な香味は、主としてこの石垢を食うことに由来するといわれ、その石垢も、川床の岩石の種類によって、ちがいがあるといわれます。アユの香味は川によってちがう——というのも元を質《ただ》せば、食いものに左右されるということです。味は淡泊で、香味に富むところから、香魚ともてはやされ、一年を一生とするところから、年魚ともいわれます。
おもしろうてやがて悲しき鵜舟《うぶね》哉 芭蕉
アユを捕える方法の一つとして、鵜飼《うかい》があります。芭蕉の見た鵜飼は、岐阜の長良《ながら》川のものですが、このほか、九州の筑後《ちくご》川、岩国の錦《にしき》川、京都の保津《ほづ》川などでも行なわれています。
フライ、てんぷらなどにしますが、アユ本来の美味を味わうには、やはり、塩焼きがいちばん。ヤナにかかったアユを、すぐさま河原で「うねりざし」に竹串をうち、水気を拭き取り、塩をふって、こんがり焼き上げ、緑あざやかな蓼酢《たです》を添えて、熱々のうちに召し上がれば、まさに「天下の美味ここにあり」。
三、四月頃の若アユは、口に小さな犬歯状の歯を持っていて、昆虫や小さな甲殻類を餌《えさ》にしていますが、解禁前後の頃になると、動物質の餌を摂《と》るのを止め、歯も犬歯状の歯が退化して、櫛形の歯が出揃うようになり、川底の石や岩についている珪藻《けいそう》や藍藻《らんそう》(釣人たちのいう石垢《いしあか》)を食うようになります。アユの特殊な香味は、主としてこの石垢を食うことに由来するといわれ、その石垢も、川床の岩石の種類によって、ちがいがあるといわれます。アユの香味は川によってちがう——というのも元を質《ただ》せば、食いものに左右されるということです。味は淡泊で、香味に富むところから、香魚ともてはやされ、一年を一生とするところから、年魚ともいわれます。
おもしろうてやがて悲しき鵜舟《うぶね》哉 芭蕉
アユを捕える方法の一つとして、鵜飼《うかい》があります。芭蕉の見た鵜飼は、岐阜の長良《ながら》川のものですが、このほか、九州の筑後《ちくご》川、岩国の錦《にしき》川、京都の保津《ほづ》川などでも行なわれています。
フライ、てんぷらなどにしますが、アユ本来の美味を味わうには、やはり、塩焼きがいちばん。ヤナにかかったアユを、すぐさま河原で「うねりざし」に竹串をうち、水気を拭き取り、塩をふって、こんがり焼き上げ、緑あざやかな蓼酢《たです》を添えて、熱々のうちに召し上がれば、まさに「天下の美味ここにあり」。