禅寺の山門のかたわらに、「葷酒《くんしゆ》山門に入るを許さず」と、記された石碑が立っています。仏教では般若湯《はんにやとう》(お酒)ばかりでなく、葷莱《くんさい》、つまり、くさい匂いのする野菜、にら、にんにく、らっきょう、ねぎ、のびるなどの五種を、精分が強く、精力がつきすぎ、煩悩《ぼんのう》をかき乱して、修行の妨げになるからと、食べることを、厳しく禁じていました。日本書紀、万葉時代には、|ひる《ヽヽ》といわれ、かの有名な『源氏物語』の「雨夜の品定め」のシーンにも�極熱の草薬�として、くさいけれども、薬効は確かなように書かれているのをみても、かなり大むかしから、にんにくの効力を認めていた形跡があります。
わたくしたちの幼時には、火鉢の灰の中に、にんにくを埋めて焼き、虫下しになるといって食べさせられたものです。こうして焼いたものは、その割りに臭みもなく、わずかながら甘味もふくまれていて、慣れると結構うまいものでした。虫下しのほか、肺病に利くとか、腺病質なこどもにもよいということで、田舎では、身近な薬用植物の一つとして、重宝がられていました。
今でも農村地帯へ行くと、門や軒下に、にんにくの束を吊して、邪気払《じやきばら》いにしているところもあるし、土用の入りに、赤|小豆《あずき》とにんにくの小片を水で飲めば、その年の疫病から免かれるといういい伝えがあります。にんにくに駆虫剤、消毒薬的な効能を認める意味から来ているのでしょう。
にんにくの芽の黄のふかくかげろひぬ 空々洞
にんにくはユリ科の植物で、料理に使われるあの球《たま》は地下茎です。原産地は西アジアといわれ、中国を経て、日本に伝わりました。匂いさえ気にしなければ、きざんだり、すりおろしたり、油いためなどして、料理の味の引き立て役として、威力を発揮します。
わたくしたちの幼時には、火鉢の灰の中に、にんにくを埋めて焼き、虫下しになるといって食べさせられたものです。こうして焼いたものは、その割りに臭みもなく、わずかながら甘味もふくまれていて、慣れると結構うまいものでした。虫下しのほか、肺病に利くとか、腺病質なこどもにもよいということで、田舎では、身近な薬用植物の一つとして、重宝がられていました。
今でも農村地帯へ行くと、門や軒下に、にんにくの束を吊して、邪気払《じやきばら》いにしているところもあるし、土用の入りに、赤|小豆《あずき》とにんにくの小片を水で飲めば、その年の疫病から免かれるといういい伝えがあります。にんにくに駆虫剤、消毒薬的な効能を認める意味から来ているのでしょう。
にんにくの芽の黄のふかくかげろひぬ 空々洞
にんにくはユリ科の植物で、料理に使われるあの球《たま》は地下茎です。原産地は西アジアといわれ、中国を経て、日本に伝わりました。匂いさえ気にしなければ、きざんだり、すりおろしたり、油いためなどして、料理の味の引き立て役として、威力を発揮します。