オクラは、芙蓉《ふよう》や|とろろあおい《ヽヽヽヽヽヽ》に似た白い美しい花を咲かせ、芯《しん》の部分もまたきれいな紫色をしています。わが国に入って来たのは、明治になってからで、開拓使蔵版の『西洋蔬菜栽培法』(明治六年)には、黄蜀葵の字が当てられ、左右にオクラ、ネリの振仮名がついています。この黄蜀葵とは、とろろあおいのことで、前記のように芙蓉や洋種のハイビスカスと同種のアオイ科に属し、この名称もまんざら当て字ではありません。和名はあめりかねり。原産地は、アビシニア地方といわれ、オクラという名は、西アフリカの黄金海岸の黒人が名付けたといわれます。
オクラの花は早朝開き、午前中にはもうしぼんでしまいますが、このサヤは早いもので翌日の夕方には収穫できます。五、六センチの、種子がまだあまり大きくなっていないものがおいしく、曲げてみて、すぐ折れるようなものなら、若くて鮮度のよいものです。
杉森久英さんの随筆に、「数年前の夏、京都の北山の有名な料亭で昼飯を食べたことがある。(中略)中にひとつ、正体のわからぬものがあった。薄緑色の、ぬるぬるしたもので小さなさらに、ほんのちょっぴり盛ってある。木の芽田楽の味噌に似ているが、山椒の香も、味噌のにおいもしない。山芋をすりつぶしたものに似ているが、へんに青臭くてそれともちがう。
これは何だと聞くと、オクラですという。オクラは、丸のままで焼いたり、いためたりしたのを食べたことはあるが、生のままですりつぶしたのは、はじめてである」と、書かれていますが、さっとゆでてサラダにしたり、和風の吸いものや酢のものにしても乙なものです。また、こまかくきざんで、カツオブシ、しょうゆをかけて食べると、納豆のようなねばりが出て、結構うまい。
オクラの花は早朝開き、午前中にはもうしぼんでしまいますが、このサヤは早いもので翌日の夕方には収穫できます。五、六センチの、種子がまだあまり大きくなっていないものがおいしく、曲げてみて、すぐ折れるようなものなら、若くて鮮度のよいものです。
杉森久英さんの随筆に、「数年前の夏、京都の北山の有名な料亭で昼飯を食べたことがある。(中略)中にひとつ、正体のわからぬものがあった。薄緑色の、ぬるぬるしたもので小さなさらに、ほんのちょっぴり盛ってある。木の芽田楽の味噌に似ているが、山椒の香も、味噌のにおいもしない。山芋をすりつぶしたものに似ているが、へんに青臭くてそれともちがう。
これは何だと聞くと、オクラですという。オクラは、丸のままで焼いたり、いためたりしたのを食べたことはあるが、生のままですりつぶしたのは、はじめてである」と、書かれていますが、さっとゆでてサラダにしたり、和風の吸いものや酢のものにしても乙なものです。また、こまかくきざんで、カツオブシ、しょうゆをかけて食べると、納豆のようなねばりが出て、結構うまい。