常節をひとつ貰ひし試歩路かな 節女
トコブシをアワビの稚貝だと思っているひとがいるかも知れません。確かに形を見ると、小さなアワビによく似ていますが、アワビにくらべると、貝殻がいくぶん長めでひらたく、螺塔部《らとうぶ》は突き出ることなく、吸水孔《きゆうすいこう》も小さくびっしり並び、アワビのように殻の表面から盛り上がらず、数も六〜九個と多くなっています。雌雄異体で、うまいのは夏場。
漁師は一般に、これをナガレコと呼び、また、フクダメ、センネンガイなどともいいます。漢字では「小鮑」「鰒魚」「常節」などと書きます。肉は灰色で、アワビにくらべると、値段も安く味も落ちます。しかし、漁獲量が多いので、いろいろな調理に使われ、乾したものは「灰鮑《ホイパオ》」として、中国に輸出されています。アワビ、トコブシいずれも、たんぱく質は魚肉のたんぱく質標準量よりも多く、栄養価値の高いものです。
アワビとちがい、生食するには不向きで、主に塩蒸しにしたり、ふくめ煮、酢貝などにして賞味します。塩蒸しにする際は、貝を静かに洗い、身の周辺部(アワビでいえば、ミミにあたる)のぐるりに塩をふり込み、強火で十分か十五分ほど蒸します。このほか、殻につけたまま、塩をふりかけて一つ一つ洗い、空なべに入れて蒸すと、たやすく身がはがれ、なべ底に貝の液汁が煮汁となって出て来ますので、これを濾過《ろか》して、別のなべに移し入れ、しょうゆ、酒、または、みりんなどの調味料を入れて、煮えたら、身を入れて佃煮風に、弱火《とろび》 で煮つめます。
アワビにかぎらず、トコブシも死んだものは味が落ち、指ではじいて、肉がキューと締まるような鮮度のよいものを手に入れることがたいせつ。
トコブシをアワビの稚貝だと思っているひとがいるかも知れません。確かに形を見ると、小さなアワビによく似ていますが、アワビにくらべると、貝殻がいくぶん長めでひらたく、螺塔部《らとうぶ》は突き出ることなく、吸水孔《きゆうすいこう》も小さくびっしり並び、アワビのように殻の表面から盛り上がらず、数も六〜九個と多くなっています。雌雄異体で、うまいのは夏場。
漁師は一般に、これをナガレコと呼び、また、フクダメ、センネンガイなどともいいます。漢字では「小鮑」「鰒魚」「常節」などと書きます。肉は灰色で、アワビにくらべると、値段も安く味も落ちます。しかし、漁獲量が多いので、いろいろな調理に使われ、乾したものは「灰鮑《ホイパオ》」として、中国に輸出されています。アワビ、トコブシいずれも、たんぱく質は魚肉のたんぱく質標準量よりも多く、栄養価値の高いものです。
アワビとちがい、生食するには不向きで、主に塩蒸しにしたり、ふくめ煮、酢貝などにして賞味します。塩蒸しにする際は、貝を静かに洗い、身の周辺部(アワビでいえば、ミミにあたる)のぐるりに塩をふり込み、強火で十分か十五分ほど蒸します。このほか、殻につけたまま、塩をふりかけて一つ一つ洗い、空なべに入れて蒸すと、たやすく身がはがれ、なべ底に貝の液汁が煮汁となって出て来ますので、これを濾過《ろか》して、別のなべに移し入れ、しょうゆ、酒、または、みりんなどの調味料を入れて、煮えたら、身を入れて佃煮風に、弱火《とろび》 で煮つめます。
アワビにかぎらず、トコブシも死んだものは味が落ち、指ではじいて、肉がキューと締まるような鮮度のよいものを手に入れることがたいせつ。