白桃や雫もをちず水の色 桃隣
早生種の布目《ぬのめ》、砂子《すなこ》は、とうに店頭から姿を消し、中生種の大久保や白鳳《はくほう》の出回りも過ぎる頃となると、晩生種の白桃のシーズンになります。だいたい七月の下旬頃から八月が出回りの最盛期で、ももの王様の名にふさわしい風格を備えて、お目見えします。
大久保のように、表皮の赤味は、さほど濃くありませんが、白い地肌に淡い紅がさしていて、思わず手に取りたくなるような豊満な形をしています。味はもちろん、ももの中での最高で、果肉は白く、やわらかで、果汁が多く、甘味も強い。しかし、生産量が少ないため(ももの総入荷量の二十パーセント)、値段のほうも、ももの中での最高位。主産地は山梨、福島、長野の各県。熟さないうちは、肉が固く、甘味もそれほどではありません。それが、よく熟《う》れて来ると、本来の持ち味を発揮して、おいしくなります。この品種は明治三十二年、岡山県赤磐郡可真村の大久保重五郎さんの畑で、偶然発見され明治三十四年に「白桃」と命名されました。
ガラス器に白桃盛られ雷遠し 寒四郎
ももはむかしから仙果とされ、悪気を払うのに用いられて来ました。『古事記』の中で、イザナギノミコトは女神を慕って黄泉《よみ》の国へ行かれ、女神の変り果てた姿におどろいて逃げ帰るとき、たくさんの雷神が魔軍を従えて追って来ました。ミコトはそのとき、ももの実を三個取ってお撃ちになると、皆逃げ帰り、あやうく難を逃れることが出来ました。ももと日本人との深いつながりを示すエピソードですが、『日本紀』にも「桃を以て鬼を逐《お》う」ことが記されております。また、『西遊記《さいゆうき》』にも「桃は神果で瘴気《しようき》をはらうものである」という考え方が示されております。
早生種の布目《ぬのめ》、砂子《すなこ》は、とうに店頭から姿を消し、中生種の大久保や白鳳《はくほう》の出回りも過ぎる頃となると、晩生種の白桃のシーズンになります。だいたい七月の下旬頃から八月が出回りの最盛期で、ももの王様の名にふさわしい風格を備えて、お目見えします。
大久保のように、表皮の赤味は、さほど濃くありませんが、白い地肌に淡い紅がさしていて、思わず手に取りたくなるような豊満な形をしています。味はもちろん、ももの中での最高で、果肉は白く、やわらかで、果汁が多く、甘味も強い。しかし、生産量が少ないため(ももの総入荷量の二十パーセント)、値段のほうも、ももの中での最高位。主産地は山梨、福島、長野の各県。熟さないうちは、肉が固く、甘味もそれほどではありません。それが、よく熟《う》れて来ると、本来の持ち味を発揮して、おいしくなります。この品種は明治三十二年、岡山県赤磐郡可真村の大久保重五郎さんの畑で、偶然発見され明治三十四年に「白桃」と命名されました。
ガラス器に白桃盛られ雷遠し 寒四郎
ももはむかしから仙果とされ、悪気を払うのに用いられて来ました。『古事記』の中で、イザナギノミコトは女神を慕って黄泉《よみ》の国へ行かれ、女神の変り果てた姿におどろいて逃げ帰るとき、たくさんの雷神が魔軍を従えて追って来ました。ミコトはそのとき、ももの実を三個取ってお撃ちになると、皆逃げ帰り、あやうく難を逃れることが出来ました。ももと日本人との深いつながりを示すエピソードですが、『日本紀』にも「桃を以て鬼を逐《お》う」ことが記されております。また、『西遊記《さいゆうき》』にも「桃は神果で瘴気《しようき》をはらうものである」という考え方が示されております。