ゆうがおといえば、まず思い出されるのが『源氏物語』�夕顔�の巻。光源氏が六条の御息所《みやすどころ》のほとりに通うと、五条のわたりに、夕顔の花の美しく咲いている家がある。源氏は足を止めて、「この花は何の花ぞ」と問うと、その家の女、白い扇にこれをのせて源氏の君に捧げる。源氏は、
よりてこそ それかとも見め たそがれに ほのほのみつる 花のゆふがほ
と詠み、それから、この夕顔の女のもとへ足繁く通うようになった。
八月十五夜の月見とて、某の院へ行き、その夜は泊まり、さて翌日になると夕顔の女は俄かに病んで露の命と消えてしまった。ゆうがおの花の生命の短さにも譬うべき人の生命のはかなさ、五十四帖中「夕顔」の巻は、もっとも凄艶な情趣を描き、�もののあわれ�をうたい上げております。
ゆうがおは一年生草本で、蔓が太く、葉はハート形をしていて、葉のつけ根に巻きひげができ、垣根などにまといついて育ちます。花は白色の五弁花で、夕方に開き、翌朝しぼむので、この名があります。未熟果はやわらかく、生食する場合は、とうがんと同じ料理法で、角切りにして、うす味に煮込み、くずあんをかけたり、あるいは煮込んだものを卵とじにしたりします。味は島木赤彦の歌にもあるように、
「夕顔は煮て食ぶるにすがすがし 口に噛めども味さへもなし」——きわめて淡泊。殆どのゆうがおは、細長くけずり天日に干して、のり巻きやこぶ巻きに欠かせぬ「かんぴょう」にします。かんぴょうは干すことによって、特有の甘味が出ます。繊維を多くふくみ、利尿、便通をよくする作用があり、肥りすぎの婦人には、おすすめしたい好食品。
よりてこそ それかとも見め たそがれに ほのほのみつる 花のゆふがほ
と詠み、それから、この夕顔の女のもとへ足繁く通うようになった。
八月十五夜の月見とて、某の院へ行き、その夜は泊まり、さて翌日になると夕顔の女は俄かに病んで露の命と消えてしまった。ゆうがおの花の生命の短さにも譬うべき人の生命のはかなさ、五十四帖中「夕顔」の巻は、もっとも凄艶な情趣を描き、�もののあわれ�をうたい上げております。
ゆうがおは一年生草本で、蔓が太く、葉はハート形をしていて、葉のつけ根に巻きひげができ、垣根などにまといついて育ちます。花は白色の五弁花で、夕方に開き、翌朝しぼむので、この名があります。未熟果はやわらかく、生食する場合は、とうがんと同じ料理法で、角切りにして、うす味に煮込み、くずあんをかけたり、あるいは煮込んだものを卵とじにしたりします。味は島木赤彦の歌にもあるように、
「夕顔は煮て食ぶるにすがすがし 口に噛めども味さへもなし」——きわめて淡泊。殆どのゆうがおは、細長くけずり天日に干して、のり巻きやこぶ巻きに欠かせぬ「かんぴょう」にします。かんぴょうは干すことによって、特有の甘味が出ます。繊維を多くふくみ、利尿、便通をよくする作用があり、肥りすぎの婦人には、おすすめしたい好食品。