蔀関月画の『日本山海名産図会《にほんさんかいめいさんずえ》』(寛政十一年、一七九九年)の巻六四に「章魚《たこ》」のことが記されています。「諸州にあり、中にも播州明石に多し、磁壺《やきものつぼ》二つ三つを縄にまとひ、水中に投じて、自《みづ》から来り入るを常とす、磁器是を蛸壺《たこつぼ》 と称して市中に花瓶《かびん》ともなして用ゆ、蛸は壺中に付て引出すにやすからず、時に壺の底の裏を物をもつて掻撫《かきなづ》れば、おのづから出て、壺を放るること速《すみやか》なり」——と、あります。このようにタコは、タコ壺を海底に沈めておき、タコがその中に潜むのを待って、順次に手繰《たぐ》り上げて獲ります。そのほか、ヤスで突いたり、釣鈎で引っかけたり、機船底曳網でも捕獲します。
蛸壺やはかなき夢を夏の月 芭蕉
タコの戸籍は、学問上からいうと、軟体動物・頭足綱・八腕目に属し、日本近海に棲む四十種類の中でも、わたくしたちに、なじみ深いのはマダコです。産額が多いだけでなく、うまいので、わが国では食べものとして重宝がられています。夜まで、じっと岩陰に潜んでいて、夜陰に乗じてエビ、カニ、小魚、貝などを食べ、飢えると同族のものにまで手を出し、そのため、長い足を食いちぎられているのを、時々見かけますが、再生力が強いので、間もなく回復します。
油断すな柚の花咲ぬいその蛸 支考
春から夏に産卵し、夏場にとりわけ味がよく「麦藁蛸《むぎわらだこ》に祭鱧《まつりはも》」といわれるほど、夏のしゅんものとして、親しまれています。三杯酢、おでん、すし、それにだいこんなどと煮つけにして、賞味します。煮ダコを買う際は、皮の剥《は》がれやすいものは古いものだし、あまりケバケバしい色のものは避けましょう。
蛸壺やはかなき夢を夏の月 芭蕉
タコの戸籍は、学問上からいうと、軟体動物・頭足綱・八腕目に属し、日本近海に棲む四十種類の中でも、わたくしたちに、なじみ深いのはマダコです。産額が多いだけでなく、うまいので、わが国では食べものとして重宝がられています。夜まで、じっと岩陰に潜んでいて、夜陰に乗じてエビ、カニ、小魚、貝などを食べ、飢えると同族のものにまで手を出し、そのため、長い足を食いちぎられているのを、時々見かけますが、再生力が強いので、間もなく回復します。
油断すな柚の花咲ぬいその蛸 支考
春から夏に産卵し、夏場にとりわけ味がよく「麦藁蛸《むぎわらだこ》に祭鱧《まつりはも》」といわれるほど、夏のしゅんものとして、親しまれています。三杯酢、おでん、すし、それにだいこんなどと煮つけにして、賞味します。煮ダコを買う際は、皮の剥《は》がれやすいものは古いものだし、あまりケバケバしい色のものは避けましょう。