イシナギはハタ科に属する魚で、成長すると、体長二メートル、体重二百五十キロにも達する大魚です。北海道から南日本にまで広く分布し、とくに北海道で多く獲れ、ふつう四百〜五百メートルの深海の岩礁地帯に棲み、五、六月頃には百五十メートルくらいの浅海に移り、産卵し、幼魚のときは浅海にいますが、成長すると深海に移っていきます。
紀州|和深《わぶか》には、イシナギについて、次のような大師説話があります。むかし、この村に一人の遍路姿の旅の僧が来て、「まことに申し訳ないが、ノドが渇いてたまらないので、水を一杯いただきたい」と、ある漁師に乞うた。「それは定めしお困りでしょう。水はからだに毒ですから、しばらくお待ちください」といって、漁師は忙しい仕事の手を休め、親切に茶を沸《わか》して、接待しました。軒先の石に腰掛けて、お茶をうまそうに飲みながら、僧は沖の方を指して、「この方角の沖合、二、三里の処に、大きな底島(海底の岩場)があるが、そこに大きな魚が棲んでいるから、春先になったら、そこへ行って釣ってみなされ」といって、立ち去りました。
それから、この地では、毎年春になると大魚が獲れるようになり、その僧が弘法大師であることがわかり、いつしかこの魚をダイシウオ(大師魚)と呼ぶようになり、後世、漁師の家の前に大師堂を建て、腰掛け石も祀られ、旧暦正月二十一日には、多くの参拝者があるということです。
春はイシナギが、岸辺に近づく季節です。刺身、塩焼き、照り焼き、煮つけ、吸いものダネと、イシナギは各種の料理に用いられます。また、腹の中の浮き袋からニカワが採れ、肝臓からは良質の肝油が採れます。七、八十センチぐらいのものが美味。
紀州|和深《わぶか》には、イシナギについて、次のような大師説話があります。むかし、この村に一人の遍路姿の旅の僧が来て、「まことに申し訳ないが、ノドが渇いてたまらないので、水を一杯いただきたい」と、ある漁師に乞うた。「それは定めしお困りでしょう。水はからだに毒ですから、しばらくお待ちください」といって、漁師は忙しい仕事の手を休め、親切に茶を沸《わか》して、接待しました。軒先の石に腰掛けて、お茶をうまそうに飲みながら、僧は沖の方を指して、「この方角の沖合、二、三里の処に、大きな底島(海底の岩場)があるが、そこに大きな魚が棲んでいるから、春先になったら、そこへ行って釣ってみなされ」といって、立ち去りました。
それから、この地では、毎年春になると大魚が獲れるようになり、その僧が弘法大師であることがわかり、いつしかこの魚をダイシウオ(大師魚)と呼ぶようになり、後世、漁師の家の前に大師堂を建て、腰掛け石も祀られ、旧暦正月二十一日には、多くの参拝者があるということです。
春はイシナギが、岸辺に近づく季節です。刺身、塩焼き、照り焼き、煮つけ、吸いものダネと、イシナギは各種の料理に用いられます。また、腹の中の浮き袋からニカワが採れ、肝臓からは良質の肝油が採れます。七、八十センチぐらいのものが美味。