『倭漢三才図会《わかんさんさいずえ》』によると、「その殻の上の一片は蓋《ふた》の如く、蚶蛤《かんこふ》(アカガイやハマグリ)の輩と同じからず、大なる者は経一二尺、数百群行し、口を開き一の殻は舟の如く、一の殻は帆の如くにし、風に乗つて走る、故に帆立蛤《ほたてがひ》と名づく」——と、帆立貝の名の起りを説明していますが、これは誤りで、動くときは、勢いよく貝殻を閉じながら、俗に貝の耳と呼ばれるところにある二つの噴射口から、水をジェットのように吐き出し、その反動で動くわけです。一度の噴射で軽く一、二メートルは跳び、漁場などで一晩のうちに、帆立貝の大群が姿をかくすことが間々あります。調べによると、一晩のうちに、五百メートルぐらい移動するそうです。
黒海苔は跡へ泳ぐや帆立貝 羊
北海道、東北地方、朝鮮東海岸の寒い海に多産するものですが、南は、日本海岸では富山湾、能登にまで及び、太平洋岸では東京湾に達します。波の静かな内湾の水深数メートルから三十メートルくらいの砂の中に、半ばからだを埋めて棲んでいます。成長すると、殻長二十センチ、左右の幅十九センチ、厚さ四センチほどにもなる、かなり大きな二枚貝です。
美しく均整のとれた二十五条の放射肋(放射肋の数は、必ずしも一定ではなく、十六ないし三十二、通常二十五条)が、まるで扇のように拡がっているところから「海扇」の名でも呼ばれます。産卵期は二、三月頃。漁獲は七月から始め、桁網《けたあみ》・掻網《かきあみ》で、海底をかき起すようにして獲ります。
貝柱はおいしく、貝柱といえば帆立貝の代名詞といわれるくらいで、刺身、酢のもの、お吸いもの、揚げもの、うま煮にして賞味します。煮て干したものは、中国料理によく使われます。
黒海苔は跡へ泳ぐや帆立貝 羊
北海道、東北地方、朝鮮東海岸の寒い海に多産するものですが、南は、日本海岸では富山湾、能登にまで及び、太平洋岸では東京湾に達します。波の静かな内湾の水深数メートルから三十メートルくらいの砂の中に、半ばからだを埋めて棲んでいます。成長すると、殻長二十センチ、左右の幅十九センチ、厚さ四センチほどにもなる、かなり大きな二枚貝です。
美しく均整のとれた二十五条の放射肋(放射肋の数は、必ずしも一定ではなく、十六ないし三十二、通常二十五条)が、まるで扇のように拡がっているところから「海扇」の名でも呼ばれます。産卵期は二、三月頃。漁獲は七月から始め、桁網《けたあみ》・掻網《かきあみ》で、海底をかき起すようにして獲ります。
貝柱はおいしく、貝柱といえば帆立貝の代名詞といわれるくらいで、刺身、酢のもの、お吸いもの、揚げもの、うま煮にして賞味します。煮て干したものは、中国料理によく使われます。