イボダイはマナガツオ科に属する魚だけに、しゅんの鮮度のよいものならみそ漬け、照り焼きにすれば、並みのタイ以上に、いい味を持っているのに、疣《いぼ》を連想させるところから、食わずぎらいのひとたちに、不当な評価を受け、ずいぶんと損をしている魚です。東京あたりでは、エボダイとなまっていい、関西ではウボゼ、下関ではナツカン、シュス、舞鶴ではヨヨシ、高知では多量の液がヨダレのように流れるからでしょうか、ちょっとひどい名のバカ、瀬戸内海では、クラゲの傘の下に泳いでいるというので幼魚をクラゲウオ。体形は確かにマナガツオに似ていますが、ずっと小形で、成魚になっても、十七、八センチ。小柄なのと腹ビレのある点が、マナガツオとちがいます。
からだは幅広く、平たく、鼻先が円く、口が小さく、皮は薄くて、ウロコが落ちやすく、全身が粘液で覆われていて、網にかかって苦しむと、いちじるしいほどの粘液を分泌させ、しばしば漁師たちを手こずらせます。魚屋に出回る頃は、このウロコも粘液も殆ど落ちて、ありません。
元来、鉛色の皮肌の白身魚ですが、やや黒ずんでいるほうが、イキがいいようです。マナガツオが冬うまいのにくらべ、イボダイは六月末頃から十月のはじめにかけておいしく、店では煮魚、焼き魚にすすめていますが、フライにすると、存外おいしくいただけます。
しかし、なんといってもおいしいのは、みそ漬け。三枚におろして、薄塩にし、洗って拭いて、白みそに漬けた西京漬けに、かなう食べ方はありません。また、頭を落し、二つ三つに切って、ゆでておき、うど、さやえんどう、生しいたけを入れた|だし《ヽヽ》を作り、イボダイを汁の中で温めてから、そぎゆず、木の芽とともに盛っての椀ダネもいけ、ちりなべ、バター焼きも。
からだは幅広く、平たく、鼻先が円く、口が小さく、皮は薄くて、ウロコが落ちやすく、全身が粘液で覆われていて、網にかかって苦しむと、いちじるしいほどの粘液を分泌させ、しばしば漁師たちを手こずらせます。魚屋に出回る頃は、このウロコも粘液も殆ど落ちて、ありません。
元来、鉛色の皮肌の白身魚ですが、やや黒ずんでいるほうが、イキがいいようです。マナガツオが冬うまいのにくらべ、イボダイは六月末頃から十月のはじめにかけておいしく、店では煮魚、焼き魚にすすめていますが、フライにすると、存外おいしくいただけます。
しかし、なんといってもおいしいのは、みそ漬け。三枚におろして、薄塩にし、洗って拭いて、白みそに漬けた西京漬けに、かなう食べ方はありません。また、頭を落し、二つ三つに切って、ゆでておき、うど、さやえんどう、生しいたけを入れた|だし《ヽヽ》を作り、イボダイを汁の中で温めてから、そぎゆず、木の芽とともに盛っての椀ダネもいけ、ちりなべ、バター焼きも。