お月見には、月見団子といっしょに、掘りたてのさといもの子(皮を剥《む》かずに蒸したきぬかつぎ〈衣被〉)を三方《さんぽう》にのせ、月に供えます。そのため、八月十五夜を一名「芋名月」ともいい、俳句では秋の季題になっています。
蒸し上げて、ほどよく塩かげんした小いもをつまむと、やわらかい皮を破って、白い小いもが飛び出してきます。平安時代以来、高貴の婦人が外出する際、顔をかくすために、かぶりものとして用いた単衣《ひとえ》の小袖《こそで》——衣被《きぬかつぎ》を連想したのでしょうか、衣被とは、よくぞ名付けたものです。
京都では、衣被を三方に盛るにも、平年とウルウ年では数がちがい、平年には十二個、ウルウ年には十三個盛るのが、旧家のしきたり。
さといもは、セイロン、スマトラ、マレーなど、東南アジアが原産地で、日本には古くから伝わっていますが、栽培の起源ははっきりしません。山野に自生する山いもに対して、黒いもは里——すなわち村に作るために里いも(畑いも、家いも)の名が生まれたといいます。品種は非常に多く、葉柄の色によって、赤茎種と青茎種とに大別できます。
近頃では、きぬかつぎまで、出はじめてから、きれいに皮を剥き、有害な漂白剤でさらしたものが売られ、しかも、このほうがねだんも高く、味わいは皮つきのものにくらべると、はるかに落ちます。泥つきの小いもが少なくなったのは、手を汚すのをきらう無精な主婦が多くなったせいですが、一面、皮を剥いて洗うとき、手がむずがゆくなるからで、これを防ぐには、重曹や灰汁《あく》、食塩などを加えればよいのです。うま煮、おでんダネ、汁の実などに用います。
芋煮えてひもじきままの子の寝顔 季野
蒸し上げて、ほどよく塩かげんした小いもをつまむと、やわらかい皮を破って、白い小いもが飛び出してきます。平安時代以来、高貴の婦人が外出する際、顔をかくすために、かぶりものとして用いた単衣《ひとえ》の小袖《こそで》——衣被《きぬかつぎ》を連想したのでしょうか、衣被とは、よくぞ名付けたものです。
京都では、衣被を三方に盛るにも、平年とウルウ年では数がちがい、平年には十二個、ウルウ年には十三個盛るのが、旧家のしきたり。
さといもは、セイロン、スマトラ、マレーなど、東南アジアが原産地で、日本には古くから伝わっていますが、栽培の起源ははっきりしません。山野に自生する山いもに対して、黒いもは里——すなわち村に作るために里いも(畑いも、家いも)の名が生まれたといいます。品種は非常に多く、葉柄の色によって、赤茎種と青茎種とに大別できます。
近頃では、きぬかつぎまで、出はじめてから、きれいに皮を剥き、有害な漂白剤でさらしたものが売られ、しかも、このほうがねだんも高く、味わいは皮つきのものにくらべると、はるかに落ちます。泥つきの小いもが少なくなったのは、手を汚すのをきらう無精な主婦が多くなったせいですが、一面、皮を剥いて洗うとき、手がむずがゆくなるからで、これを防ぐには、重曹や灰汁《あく》、食塩などを加えればよいのです。うま煮、おでんダネ、汁の実などに用います。
芋煮えてひもじきままの子の寝顔 季野