冴え冴えした朱色の肌のつややかに美しく、朝の陽に照り映える熟れがきの色。秋は「飽《あ》き、穀物が飽き満ちる季節」「開《あ》き、明らかで、空が明るく澄む季節」「緋《あき》、木の葉が紅葉する季節」——と、語源説はさまざまですが、この秋に、かきの朱色がよく似合います。
もぎたての朝の柿露しとどなり 竿よりはづす掌にしみにけり 中島哀浪
かきはわが国に自生していたらしく、記紀の人名や地名に「かき」ということばがしばしば現われるのをみても、このことは窺えます。『本草和名《ほんぞうわみよう》』には「加岐」と万葉仮名で記されています。
かきは日本人に好まれたので、優良な品種が多く、他のくだもののように外国から招来されるということは殆どありませんでした。くだもの好きの欧米人も、|かき《ヽヽ》は苦手らしく、栽培もごく一部に限られ、店頭では二流品扱いされると聞きます。
大別すると、甘がきと渋がきに分けられ、甘がきは西日本に、渋がきは主に北日本に栽培されます。甘がきの中でも富有は、うまさ、ふっくらとした形、赫々とした色合い、そのどれ一つをとっても、かき界の王者にふさわしい風格を備えています。十一月の中、下旬が富有の味のいちだんと冴えるときで、この頃市場に出回るかき類のうち、七、八割を占めています。
この世に登場したのは、かなりむかしのようですが、「富有」の名でお目見えしたのは、明治三十五年のこと。はじめは岐阜県が本場でしたが、近頃は愛知県でたくさん作られ、和歌山県から、岡山、四国とその産地は全国的となった感があります。
柿を食ふ君の音またこりこりと 誓子
もぎたての朝の柿露しとどなり 竿よりはづす掌にしみにけり 中島哀浪
かきはわが国に自生していたらしく、記紀の人名や地名に「かき」ということばがしばしば現われるのをみても、このことは窺えます。『本草和名《ほんぞうわみよう》』には「加岐」と万葉仮名で記されています。
かきは日本人に好まれたので、優良な品種が多く、他のくだもののように外国から招来されるということは殆どありませんでした。くだもの好きの欧米人も、|かき《ヽヽ》は苦手らしく、栽培もごく一部に限られ、店頭では二流品扱いされると聞きます。
大別すると、甘がきと渋がきに分けられ、甘がきは西日本に、渋がきは主に北日本に栽培されます。甘がきの中でも富有は、うまさ、ふっくらとした形、赫々とした色合い、そのどれ一つをとっても、かき界の王者にふさわしい風格を備えています。十一月の中、下旬が富有の味のいちだんと冴えるときで、この頃市場に出回るかき類のうち、七、八割を占めています。
この世に登場したのは、かなりむかしのようですが、「富有」の名でお目見えしたのは、明治三十五年のこと。はじめは岐阜県が本場でしたが、近頃は愛知県でたくさん作られ、和歌山県から、岡山、四国とその産地は全国的となった感があります。
柿を食ふ君の音またこりこりと 誓子