霜のねぎ土深々と著たるかな 温亭
霜の降りるたびに、黒土の着物を着た畑のねぎが、だんだんおいしくなってきます。ねぎは臭(気=き)の強いゆえに、むかしはキといわれ「紀」の字を当てていました。年を経て、ひとびとの嗜好が変り、栽培技術も進んで、白根の部分を賞味するようになり、キに根の字が冠せられ「ねぎ」と呼ぶようになったといわれます。もっとも、土に埋もれた部分は、正しくは根ではなく、葉鞘《ようしよう》、つまり、葉の一部分です。つやつやしていて、身のしまっているもの、白い部分と緑の部分の境がはっきりしていて、ぶかぶかせず、固いものが良品で、こうしたものなら料理してもやわらかくおいしい。表面が乾いて、かさかさしているものは、固くて味も落ちます。
青菜類と同じく、ねぎも鮮度が直接、味にも栄養にも関係するので、お買いになるときは、鮮度に注意しましょう。できれば泥つきの、しかも、泥の乾いていないものを、お買いになったほうがよく、年末年始以外は買い置きは損。
ねぎはほかの野菜のように、それだけで料理になることは少なく、もっぱら脇役として、かおりと歯ざわりで、主役の味を引き立てます。これからの季節、香味野菜としてスープ、炒《いた》めもの、なべものなどに肉や魚とともに用い、匂いを消し、風味を添えます。
生ねぎにみそをつけて食べると、からだが温まりますが、これはまた、胃病にも利きめがあります。慢性の胃病のひとは、毎日、ねぎの白根を一、二本、こうして食べていると、いつしか忘れたように治ると、祖母に教わったことがあります。
嫁もはや世帯じみたり根深汁 也有
霜の降りるたびに、黒土の着物を着た畑のねぎが、だんだんおいしくなってきます。ねぎは臭(気=き)の強いゆえに、むかしはキといわれ「紀」の字を当てていました。年を経て、ひとびとの嗜好が変り、栽培技術も進んで、白根の部分を賞味するようになり、キに根の字が冠せられ「ねぎ」と呼ぶようになったといわれます。もっとも、土に埋もれた部分は、正しくは根ではなく、葉鞘《ようしよう》、つまり、葉の一部分です。つやつやしていて、身のしまっているもの、白い部分と緑の部分の境がはっきりしていて、ぶかぶかせず、固いものが良品で、こうしたものなら料理してもやわらかくおいしい。表面が乾いて、かさかさしているものは、固くて味も落ちます。
青菜類と同じく、ねぎも鮮度が直接、味にも栄養にも関係するので、お買いになるときは、鮮度に注意しましょう。できれば泥つきの、しかも、泥の乾いていないものを、お買いになったほうがよく、年末年始以外は買い置きは損。
ねぎはほかの野菜のように、それだけで料理になることは少なく、もっぱら脇役として、かおりと歯ざわりで、主役の味を引き立てます。これからの季節、香味野菜としてスープ、炒《いた》めもの、なべものなどに肉や魚とともに用い、匂いを消し、風味を添えます。
生ねぎにみそをつけて食べると、からだが温まりますが、これはまた、胃病にも利きめがあります。慢性の胃病のひとは、毎日、ねぎの白根を一、二本、こうして食べていると、いつしか忘れたように治ると、祖母に教わったことがあります。
嫁もはや世帯じみたり根深汁 也有