終戦後間もなく、すしダネに使われる平貝が、わたしの田舎、東京湾南部の千葉県富津沖で大発生し、漁民は平貝景気を謳歌したことがあります。しかし、この景気は、わずかしか続きませんでした。無計画に稚貝まで獲り尽す乱獲が祟ったのだと、当時、ウワサされたものですが、その後はトンと景気のいい話を聞きません。一度定着すれば移動の出来ない貝だけに、慎重な配慮をし資源保護すべきだったかも知れません。
現在、主な産地としては、東京湾のほか、伊勢湾、瀬戸内海、有明海などがあります。水深三十〜四十メートルの泥の海に、とがったほうに近いところから、足糸を出し、泥の中に逆立ちしたように群棲するので、一名タチガイともいわれ、十一月から翌年三月頃までの漁期に、潜水夫によって採取されます。産卵期は五〜九月で、この直前の初春の頃が、もっともおいしい時季です。三年目で、長さ二十五〜三十センチほどの不等辺三角形の大きな二枚貝に成長し、食用にする貝類の中では、もっとも大きな貝に属します。殻はもろくて、乾燥するとヒビが入りやすく、運搬上不便なので、市場に出、魚屋さんで売られるときは、殆ど貝柱だけになっています。
食べるのは、もちろん、その貝柱ですが、うまいのは刺身。子どもの頃、近くの漁家から俵詰になった獲りたての平貝を、毎日一、二俵はもらい、シーズン中は連日食膳にのぼりました。鮮度のいいものだけに、刺身にすると、やわらかく、わずかながら特有の甘味もあって、それはおいしいものでした。柱ばかりでなく、蝶番《ちようつがい》の役をしている小柱や、貝柱の周辺にあるひれひれの部分(外套膜というのでしょうか)も、佃煮にして食べるとうまい。このほか、フライやきざんでかき揚げ、また中華風のうま煮、照り焼き、吸いものダネにしてもおいしい。
現在、主な産地としては、東京湾のほか、伊勢湾、瀬戸内海、有明海などがあります。水深三十〜四十メートルの泥の海に、とがったほうに近いところから、足糸を出し、泥の中に逆立ちしたように群棲するので、一名タチガイともいわれ、十一月から翌年三月頃までの漁期に、潜水夫によって採取されます。産卵期は五〜九月で、この直前の初春の頃が、もっともおいしい時季です。三年目で、長さ二十五〜三十センチほどの不等辺三角形の大きな二枚貝に成長し、食用にする貝類の中では、もっとも大きな貝に属します。殻はもろくて、乾燥するとヒビが入りやすく、運搬上不便なので、市場に出、魚屋さんで売られるときは、殆ど貝柱だけになっています。
食べるのは、もちろん、その貝柱ですが、うまいのは刺身。子どもの頃、近くの漁家から俵詰になった獲りたての平貝を、毎日一、二俵はもらい、シーズン中は連日食膳にのぼりました。鮮度のいいものだけに、刺身にすると、やわらかく、わずかながら特有の甘味もあって、それはおいしいものでした。柱ばかりでなく、蝶番《ちようつがい》の役をしている小柱や、貝柱の周辺にあるひれひれの部分(外套膜というのでしょうか)も、佃煮にして食べるとうまい。このほか、フライやきざんでかき揚げ、また中華風のうま煮、照り焼き、吸いものダネにしてもおいしい。