アオヤギなどというと、妙に|よそよそしく《ヽヽヽヽヽヽ》、やはり、バカガイ(馬珂貝、馬鹿貝)といったほうがピッタリします。アオヤギなんていい方は、東京あたりにかぎったいい方で、地方では、貝にも、その貝柱に対しても、もっぱらバカガイ、また略してバカが通り名。いつも殻をあけ、赤い口(足)を出しています。このように、殻をあけているところが、口許の締まらない顔付きを連想させ、バカガイと名付けられたのでしょう。
東京近辺では、埋立前の千葉県五井あたりが本場中の本場とされていました。旅のものとしては、伊勢、神戸などがありますが、柱にしても、形の大粒な割りに甘味がうすく、色合いも本場もののような冴えた赤味がなく、全体に白っぽくて、やはり一級品とは、いいがたいようです。
東北地方から南にかけて、広く分布し、比較的塩分の低い深さ三、四メートルの砂泥の中に棲んでいます。一年でりっぱに成熟し、富津岬の遠浅の海には、例年大量発生し、夏、海に入ると、足の裏一面がバカの稚貝で、獲り尽くせないほどいっぱい。ちょっと風でも吹こうものなら、長い砂浜の波打ち際は、打ち上げられたバカガイの死屍累々で、暑いさかりはすぐ腐り、異臭に思わず鼻をつまむような惨状を呈します。
獲りたてのものをさっとゆで、わさびを薬味の二杯酢で食べるとおいしい。ただし、砂をたくさん噛んでいるので、貝殻から取り出すとき、ゆで汁で一々丹念に洗わないといけません。
貝柱はかき揚げの材料として珍重され、吸いものダネ、酢のものにしてもおいしい。五目ずし、煮ものなどに、取り合わせるにしても、煮すぎないのがコツ。
馬鹿貝の歯ごたへしかと若さあり 良子
東京近辺では、埋立前の千葉県五井あたりが本場中の本場とされていました。旅のものとしては、伊勢、神戸などがありますが、柱にしても、形の大粒な割りに甘味がうすく、色合いも本場もののような冴えた赤味がなく、全体に白っぽくて、やはり一級品とは、いいがたいようです。
東北地方から南にかけて、広く分布し、比較的塩分の低い深さ三、四メートルの砂泥の中に棲んでいます。一年でりっぱに成熟し、富津岬の遠浅の海には、例年大量発生し、夏、海に入ると、足の裏一面がバカの稚貝で、獲り尽くせないほどいっぱい。ちょっと風でも吹こうものなら、長い砂浜の波打ち際は、打ち上げられたバカガイの死屍累々で、暑いさかりはすぐ腐り、異臭に思わず鼻をつまむような惨状を呈します。
獲りたてのものをさっとゆで、わさびを薬味の二杯酢で食べるとおいしい。ただし、砂をたくさん噛んでいるので、貝殻から取り出すとき、ゆで汁で一々丹念に洗わないといけません。
貝柱はかき揚げの材料として珍重され、吸いものダネ、酢のものにしてもおいしい。五目ずし、煮ものなどに、取り合わせるにしても、煮すぎないのがコツ。
馬鹿貝の歯ごたへしかと若さあり 良子