すいかと天ぷら、カニと柿、ウナギと梅干し、青梅と黒砂糖……いずれも同時に食べると、下痢や腹痛などを起こして、よくないと言われてきた「食べ合わせ」例です。
こうした「食べ合わせ」例は、すでに一〇〇〇年前の平安時代、中国伝来の医書を引用して編集された『医心方《いしんほう》』に、「ふきとわらび」「コイとねぎ」など四五種の食べ合わせが挙げられています。その後、こうした医学的な啓蒙書や女子の生活心得を説いた女訓書などに採り上げられ、有名な貝原益軒の『養生訓』や『婦宝文庫《おんなたからぶんこ》』(いずれも江戸時代)などにも、多くの「食べ合わせ」例が紹介されています。当時の農民や町民など庶民は、もちろん、こうした本を通して食べ合わせを知ったわけではなく、多くは、こうした本を読むことのできた人たちから、さらには親から子へと、みずからの体験例も加えられながら伝承されてきました。
食べ合わせについては、今日も大方の人が多かれ少なかれ気にしていて、食べ合わせを避けている人は意外に多く、「昔の人の経験から生まれた言い伝えだから大切に守りたい」という人がほとんどで、食べ合わせというタブーは、予想外に根強く生き続けております。
冒頭に例示した食べ合わせは、全国的に共通しているもので、知名度の高いものばかりです。また、実際にも敬遠されているケースです。例示の食べ合わせ以外にも、「ラーメンと天ぷら」「生卵とバナナ」「牛乳とたけのこ」といった新作(?)とおぼしき例も、近ごろでは取り沙汰されています。
古典に挙げられたものにしろ、新作にしろ、それら二つの食べ物を同時に食べたために、からだに急激な悪影響を及ぼすとは考えにくいし、科学的な根拠もありません。ただ、食べ合わせに登場する食べ物には、例外は多いものの、組み合わせの一方に、
㈰消化しにくいもの(タコ、タニシなど)
㈪有害、有毒成分を含んでいるもの(青梅、フグなど)
㈫腐敗しやすいものや鮮度の見分けにくいもの(サバやカニなど)
㈬アレルギー源になりやすいもの(サバや生卵など)
㈭アクや刺激が強いもの(たけのこやわらび、唐がらしなど)
のあるのが目立った共通点です。あるいは油っ濃いものと水気の多いものとの組み合わせ(ウナギ、あるいは天ぷらとすいかなど)も考えられます。このため、食べた人の体調や体質、さらに食品の鮮度や調理法など、さまざまな要因がからんで、時には腹痛などを起こし、また、そうした体験から、これらの食べ物を食べる際には、十分注意する必要があることを示唆《しさ》する手段として、食べ合わせに織り込んで伝承してきたように思われます。現代的に申せば、「食べ合わせ」は科学的知識の乏しかった昔の人の「食品衛生法」の一つと考えられます。つまり、食べ合わせも暮しの知恵──だったわけです。
こうした「食べ合わせ」例は、すでに一〇〇〇年前の平安時代、中国伝来の医書を引用して編集された『医心方《いしんほう》』に、「ふきとわらび」「コイとねぎ」など四五種の食べ合わせが挙げられています。その後、こうした医学的な啓蒙書や女子の生活心得を説いた女訓書などに採り上げられ、有名な貝原益軒の『養生訓』や『婦宝文庫《おんなたからぶんこ》』(いずれも江戸時代)などにも、多くの「食べ合わせ」例が紹介されています。当時の農民や町民など庶民は、もちろん、こうした本を通して食べ合わせを知ったわけではなく、多くは、こうした本を読むことのできた人たちから、さらには親から子へと、みずからの体験例も加えられながら伝承されてきました。
食べ合わせについては、今日も大方の人が多かれ少なかれ気にしていて、食べ合わせを避けている人は意外に多く、「昔の人の経験から生まれた言い伝えだから大切に守りたい」という人がほとんどで、食べ合わせというタブーは、予想外に根強く生き続けております。
冒頭に例示した食べ合わせは、全国的に共通しているもので、知名度の高いものばかりです。また、実際にも敬遠されているケースです。例示の食べ合わせ以外にも、「ラーメンと天ぷら」「生卵とバナナ」「牛乳とたけのこ」といった新作(?)とおぼしき例も、近ごろでは取り沙汰されています。
古典に挙げられたものにしろ、新作にしろ、それら二つの食べ物を同時に食べたために、からだに急激な悪影響を及ぼすとは考えにくいし、科学的な根拠もありません。ただ、食べ合わせに登場する食べ物には、例外は多いものの、組み合わせの一方に、
㈰消化しにくいもの(タコ、タニシなど)
㈪有害、有毒成分を含んでいるもの(青梅、フグなど)
㈫腐敗しやすいものや鮮度の見分けにくいもの(サバやカニなど)
㈬アレルギー源になりやすいもの(サバや生卵など)
㈭アクや刺激が強いもの(たけのこやわらび、唐がらしなど)
のあるのが目立った共通点です。あるいは油っ濃いものと水気の多いものとの組み合わせ(ウナギ、あるいは天ぷらとすいかなど)も考えられます。このため、食べた人の体調や体質、さらに食品の鮮度や調理法など、さまざまな要因がからんで、時には腹痛などを起こし、また、そうした体験から、これらの食べ物を食べる際には、十分注意する必要があることを示唆《しさ》する手段として、食べ合わせに織り込んで伝承してきたように思われます。現代的に申せば、「食べ合わせ」は科学的知識の乏しかった昔の人の「食品衛生法」の一つと考えられます。つまり、食べ合わせも暮しの知恵──だったわけです。