資本や財産をだんだん食い減らすことのたとえによく用いられます。「蛸は身を食う、足を食う」というところから言われたことですが、これは本当の話です。
タコは非常に貪食で、生きた小魚、カニ、エビ、貝類を飽食するばかりか、しばしば共食いをし、また、自身の足まで食うことがあるので「蛸配《たこはい》」(会社がその信用を保つために、株主に配当すべき利益がないのに、自己資本を食い込んで配当すること)などという言葉も生まれたわけです。もっともこれは、タコの精神錯乱状態のときに起こる現象で、たとえ食べ物はあってもなくても、精神が倒錯状態に陥ったときは、よく子どもが爪を噛むように、そのまま自分の足を食べるのだそうです。しかし、タコの足は、タコの腹中に入っても、大体消化せず、二、三日すると、死ぬのがふつうです。
タコの種類は非常に多く、わが国沿岸各地で記録されるものだけでも、四十数種の多きにのぼっています。タコが怪物視されることは、洋の東西を問わず同じことで、外国でも悪魔の魚(デヴィル・フィッシュ)の中の一つに挙げられています。
古代においては子安貝、蜘蛛貝などとともに、非常に、崇拝されたもので、西暦紀元前二〇〇〇年の昔に栄えたクレタ時代の壺や甕《かめ》には、タコを描いたものが多い。これらは、いずれも生命を象徴したものです。
タコがアサリやハマグリの養殖場などに入り込むことがあると、八本の足を八方に踏ん張り、足の吸盤を巧みに利用して、八本の足の先から、貝類をちょうどエスカレーターで物を運ぶように、順々に口元に送り、足の吸盤と筋肉を上手に使っては、わけなく貝殻を開けて、ずいぶんたくさんの貝の肉を一時に食べます。ハマグリ、アサリ、カキなどの養殖場では、実に大敵。
わが国で食用に供されるタコはマダコ、ミズダコ(これは大きなタコで、長さが三メートルもあるのがある)、イイダコ(これは小さなタコで、長さは大きいものでも二〇センチほど)、テナガダコなどですが、その料理法には桜煮、天ぷら、お好み焼き、塩ダコ、酢ダコ、ごまみそあえ、いもダコなどがあり、乙な食べ物としては、イイダコの子と糯米《もちごめ》で炊いた茶漬け飯、または握りずしがあります。浜の悪食《あくじき》連中は、生きているタコの足を口に咥《くわ》えて、タコの吸盤が頬っぺたや鼻の頭に吸い付くのを楽しみながら、歯で噛み切りつつ食うのを得意がっています。製品には、干しダコ、削りダコなどがあり、マダコの生んだ卵の塩漬けは「海藤花《かいどうげ》」と称して、極めて高級な酒の肴となっています。タコはおでんだねとしても非常に珍重がられるせいか、おでん屋の商号に「蛸梅」とか「お多幸」「多幸平」とかタコに因《ちな》んだものが多い。
関西では、「早苗饗《さなぼり》」と言って、半夏生《はんげしよう》の日に、農家でタコを食う風習が伝わっています。夏至の日から数えて十一日目、稲の株が八方に根を張り、よく大地に吸い付いて、今年もよく稔《みの》りますように──との縁起から出たものです。
タコは非常に貪食で、生きた小魚、カニ、エビ、貝類を飽食するばかりか、しばしば共食いをし、また、自身の足まで食うことがあるので「蛸配《たこはい》」(会社がその信用を保つために、株主に配当すべき利益がないのに、自己資本を食い込んで配当すること)などという言葉も生まれたわけです。もっともこれは、タコの精神錯乱状態のときに起こる現象で、たとえ食べ物はあってもなくても、精神が倒錯状態に陥ったときは、よく子どもが爪を噛むように、そのまま自分の足を食べるのだそうです。しかし、タコの足は、タコの腹中に入っても、大体消化せず、二、三日すると、死ぬのがふつうです。
タコの種類は非常に多く、わが国沿岸各地で記録されるものだけでも、四十数種の多きにのぼっています。タコが怪物視されることは、洋の東西を問わず同じことで、外国でも悪魔の魚(デヴィル・フィッシュ)の中の一つに挙げられています。
古代においては子安貝、蜘蛛貝などとともに、非常に、崇拝されたもので、西暦紀元前二〇〇〇年の昔に栄えたクレタ時代の壺や甕《かめ》には、タコを描いたものが多い。これらは、いずれも生命を象徴したものです。
タコがアサリやハマグリの養殖場などに入り込むことがあると、八本の足を八方に踏ん張り、足の吸盤を巧みに利用して、八本の足の先から、貝類をちょうどエスカレーターで物を運ぶように、順々に口元に送り、足の吸盤と筋肉を上手に使っては、わけなく貝殻を開けて、ずいぶんたくさんの貝の肉を一時に食べます。ハマグリ、アサリ、カキなどの養殖場では、実に大敵。
わが国で食用に供されるタコはマダコ、ミズダコ(これは大きなタコで、長さが三メートルもあるのがある)、イイダコ(これは小さなタコで、長さは大きいものでも二〇センチほど)、テナガダコなどですが、その料理法には桜煮、天ぷら、お好み焼き、塩ダコ、酢ダコ、ごまみそあえ、いもダコなどがあり、乙な食べ物としては、イイダコの子と糯米《もちごめ》で炊いた茶漬け飯、または握りずしがあります。浜の悪食《あくじき》連中は、生きているタコの足を口に咥《くわ》えて、タコの吸盤が頬っぺたや鼻の頭に吸い付くのを楽しみながら、歯で噛み切りつつ食うのを得意がっています。製品には、干しダコ、削りダコなどがあり、マダコの生んだ卵の塩漬けは「海藤花《かいどうげ》」と称して、極めて高級な酒の肴となっています。タコはおでんだねとしても非常に珍重がられるせいか、おでん屋の商号に「蛸梅」とか「お多幸」「多幸平」とかタコに因《ちな》んだものが多い。
関西では、「早苗饗《さなぼり》」と言って、半夏生《はんげしよう》の日に、農家でタコを食う風習が伝わっています。夏至の日から数えて十一日目、稲の株が八方に根を張り、よく大地に吸い付いて、今年もよく稔《みの》りますように──との縁起から出たものです。