冬至は二十四気の第二十二、太陽が冬至線(南回帰線)上に直射するときで、一年じゅうで最も南に位し、北半球における正午の太陽の高さが最も低く、昼がいちばん短くなり、夜がいちばん長くなるときでもあります。
太陽暦では大抵十二月二十二、三日にあたりますが、むかしの冬至は陰暦を用いたので、十一月の朔日《ついたち》が冬至になることがあります。こういうことは二十年めに一ペんぐらいなので、瑞祥《ずいしよう》なりと言って、古代の天皇は、南殿へ出て節会《せちえ》を開いて祝い、禅寺では冬夜振舞《とうやぶるまい》などと言って、師弟の間で、互いにもてなし合う風習があり、一方、民間ではお餅をついて祝いました。これを朔旦冬至《さくたんとうじ》と言い、この餅がのちにかぼちゃになり、こんにゃくになりました。かぼちゃもこんにゃくも、ともに外来品なので、これは珍しい野菜を冬の祭りのときに神に捧げた名残りと言われています。
また、冬至にかぼちゃを食べると、中風にかからない、風邪《かぜ》をひかない、しもやけにならない、魔除《まよ》けになる——などと言われ、今でも冬至になると、かぼちゃを食べる風習が一部には行なわれています。これなどは栄養学の知識などまるでなかった私たちの祖先が、体験的に習得した生活の知恵と言うことができましょう。
今日の栄養学に照らしてみても、かぼちゃは冬季のビタミンA、B1、Cの供給源として、たいへん貴重な働きをしています。ビタミンAが不足するとトリ目になったり、風邪をひきやすくなり、病気に対する抵抗力が衰えたりします。また、皮膚の健康とも関係して、皮膚をしっとりと美しく保つには、ビタミンAが必要です。ビタミンCは、不足すると壊血病になり、歯ぐきから出血したり、血が出やすくなります。また、細菌に対する抵抗力も衰えます。したがって、むかしの人の言い伝えも、まんざら迷信とばかりは言いきれません。
一般に、野菜は秋口の穫《と》れ盛りのころ、最高の成分をふくみ、日が経つにつれ、ビタミン類が急激に減って、冬至ごろには「枯れ」とか「凍結」などで、栄養分に変化を生じ、なかには全くなくなってしまうものもあります。幸いなことに、かぼちゃ(特によくみのったかぼちゃ)は硬い身が厚い外皮に覆われていて、中身は有利な方向に変化して、栄養分の損失がほとんどないので、真冬の食料としては、いちばんの野菜と言うことができます。また、味わいの点でも真冬まで放置し、陽にさらすことによって、さらに含有するでんぷん質を熟《う》れさせ、糖分が増し、甘味が濃くなり、おいしくなります。
このように見てきますと、甘味が増しビタミン類の豊富なかぼちゃを冬至に食べることは、確かに有意義なことだし、当を得た食べ方だと言えましょう。それでも春まで持ち越すのは、せっかくのかぼちゃの効用を殺すことになるので、戒めを守って、せめて保存は冬至まで。それ以上年をとらせるのはムダと言うものです。
南瓜食ふ小乗の妻の冬至かな 城太郎
太陽暦では大抵十二月二十二、三日にあたりますが、むかしの冬至は陰暦を用いたので、十一月の朔日《ついたち》が冬至になることがあります。こういうことは二十年めに一ペんぐらいなので、瑞祥《ずいしよう》なりと言って、古代の天皇は、南殿へ出て節会《せちえ》を開いて祝い、禅寺では冬夜振舞《とうやぶるまい》などと言って、師弟の間で、互いにもてなし合う風習があり、一方、民間ではお餅をついて祝いました。これを朔旦冬至《さくたんとうじ》と言い、この餅がのちにかぼちゃになり、こんにゃくになりました。かぼちゃもこんにゃくも、ともに外来品なので、これは珍しい野菜を冬の祭りのときに神に捧げた名残りと言われています。
また、冬至にかぼちゃを食べると、中風にかからない、風邪《かぜ》をひかない、しもやけにならない、魔除《まよ》けになる——などと言われ、今でも冬至になると、かぼちゃを食べる風習が一部には行なわれています。これなどは栄養学の知識などまるでなかった私たちの祖先が、体験的に習得した生活の知恵と言うことができましょう。
今日の栄養学に照らしてみても、かぼちゃは冬季のビタミンA、B1、Cの供給源として、たいへん貴重な働きをしています。ビタミンAが不足するとトリ目になったり、風邪をひきやすくなり、病気に対する抵抗力が衰えたりします。また、皮膚の健康とも関係して、皮膚をしっとりと美しく保つには、ビタミンAが必要です。ビタミンCは、不足すると壊血病になり、歯ぐきから出血したり、血が出やすくなります。また、細菌に対する抵抗力も衰えます。したがって、むかしの人の言い伝えも、まんざら迷信とばかりは言いきれません。
一般に、野菜は秋口の穫《と》れ盛りのころ、最高の成分をふくみ、日が経つにつれ、ビタミン類が急激に減って、冬至ごろには「枯れ」とか「凍結」などで、栄養分に変化を生じ、なかには全くなくなってしまうものもあります。幸いなことに、かぼちゃ(特によくみのったかぼちゃ)は硬い身が厚い外皮に覆われていて、中身は有利な方向に変化して、栄養分の損失がほとんどないので、真冬の食料としては、いちばんの野菜と言うことができます。また、味わいの点でも真冬まで放置し、陽にさらすことによって、さらに含有するでんぷん質を熟《う》れさせ、糖分が増し、甘味が濃くなり、おいしくなります。
このように見てきますと、甘味が増しビタミン類の豊富なかぼちゃを冬至に食べることは、確かに有意義なことだし、当を得た食べ方だと言えましょう。それでも春まで持ち越すのは、せっかくのかぼちゃの効用を殺すことになるので、戒めを守って、せめて保存は冬至まで。それ以上年をとらせるのはムダと言うものです。
南瓜食ふ小乗の妻の冬至かな 城太郎