年寄りに似合わない元気のよいしわざ。年寄りが自分のからだの状態を考えずにムリをするのを、ひやかしたり、戒めたりすることば。事実、年寄りが若い者に負けまいと冷たい水を使ったり、でしゃばった仕事をしたりするのは健康のためによくありません。
自分では、まだまだ若いつもりでいても、からだは年々老化の一途をたどり、いうことをきかなくなっています。からだの老齢化がすすむと食欲が減るばかりか、ちょっとした傷も治りにくくなり、暑さ寒さがめっきりからだにこたえ、ものを考える力や記憶力までが、いまいましいほど衰えてきます。若いと思う気持ち(精神年齢)と、自分の気付かないからだの衰え(肉体年齢)——このギャップが冷水の原因なのでしょう。
ところで飲み水としての冷水は、からだにどのような働きをもつものなのでしょう?
さる高名な外国の医師は「冷たい生水を多く飲むことを怠らなければ、肌を美しくし、血液の循環もよくなり、腎臓病や結石、胃腸病にかかる率も少なくなる」と、さかんに生水の効用を力説しています。冷水の効用については、日本でも『陸奥庵養生訓』という本に、
「冷水には酸素といえる自然の精気ありて人の血気を清涼にするの効あり。もし一度湯に混ずれば、この精気蒸発して清涼の効力を減損す。世俗に水に毒ありと思い、常に冷水を禁じ、かつ熱病人の煩渇ある者にも直に冷水を与えず、湯を冷やして用いる者あり、皆大なる誤りなり。尋常の熱病は別に薬剤を服せず、ひとり冷水のみを用いて活するもの少なからず、これ清涼の効あり。また、たまたま水を飲んで、あるいは腹痛し、あるいは下痢すれば、すなわち水毒に当りたりと思う者あり。これその人のその時の胃腸の状態に因るものにて決して水毒にあらざるなり。老少の差別なく、疾病の有無に拘らず、常に掛念なく冷水を用いて妨げなし。」
朝、起きたときに冷水をコップに一杯飲む——これはたしかに健康に役立ちます。冷水は生理的に胃腸を刺激し、消化器系統の目覚めをうながす効果があります。また、食事中の冷水も胃を刺激して消化を助けます。かと言って、いちじにあまりガブ飲みすれば、血液や胃液をうすめ、からだがだるくなる原因となりますから、ほどほどに。生水は胃腸の刺激剤のほかに、酸素やカルシウム、イオンなど、からだの働きを活発にする有効成分がたくさん含まれていることは見逃せません。それにおいしさの点からいっても、水道の水の遠く及ぶところではありません。近ごろ、富士山麓の水が「ミネラル・ウオーター」と銘打たれ、大いに売れていますが、日本人が再び水の味に注意を向けはじめた|きざし《ヽヽヽ》として、慶賀に堪えません。
「年寄りに冷水」——老人大いに冷水を飲むべし。ただし、やむを得ず水道の水を飲まねばならぬとしたら、蛇口からすぐ口中へ……ではなく、前の晩に汲み置いて、冷蔵庫に収め、冷たくしてから、起きぬけに飲むと効果テキメン。とは言って、飲んで頭や胃が痛くなるほど冷たくしてはいき過ぎ。飲み水の適温は、ビールの飲みごろの温度と同じ八度Cから一二度C。
自分では、まだまだ若いつもりでいても、からだは年々老化の一途をたどり、いうことをきかなくなっています。からだの老齢化がすすむと食欲が減るばかりか、ちょっとした傷も治りにくくなり、暑さ寒さがめっきりからだにこたえ、ものを考える力や記憶力までが、いまいましいほど衰えてきます。若いと思う気持ち(精神年齢)と、自分の気付かないからだの衰え(肉体年齢)——このギャップが冷水の原因なのでしょう。
ところで飲み水としての冷水は、からだにどのような働きをもつものなのでしょう?
さる高名な外国の医師は「冷たい生水を多く飲むことを怠らなければ、肌を美しくし、血液の循環もよくなり、腎臓病や結石、胃腸病にかかる率も少なくなる」と、さかんに生水の効用を力説しています。冷水の効用については、日本でも『陸奥庵養生訓』という本に、
「冷水には酸素といえる自然の精気ありて人の血気を清涼にするの効あり。もし一度湯に混ずれば、この精気蒸発して清涼の効力を減損す。世俗に水に毒ありと思い、常に冷水を禁じ、かつ熱病人の煩渇ある者にも直に冷水を与えず、湯を冷やして用いる者あり、皆大なる誤りなり。尋常の熱病は別に薬剤を服せず、ひとり冷水のみを用いて活するもの少なからず、これ清涼の効あり。また、たまたま水を飲んで、あるいは腹痛し、あるいは下痢すれば、すなわち水毒に当りたりと思う者あり。これその人のその時の胃腸の状態に因るものにて決して水毒にあらざるなり。老少の差別なく、疾病の有無に拘らず、常に掛念なく冷水を用いて妨げなし。」
朝、起きたときに冷水をコップに一杯飲む——これはたしかに健康に役立ちます。冷水は生理的に胃腸を刺激し、消化器系統の目覚めをうながす効果があります。また、食事中の冷水も胃を刺激して消化を助けます。かと言って、いちじにあまりガブ飲みすれば、血液や胃液をうすめ、からだがだるくなる原因となりますから、ほどほどに。生水は胃腸の刺激剤のほかに、酸素やカルシウム、イオンなど、からだの働きを活発にする有効成分がたくさん含まれていることは見逃せません。それにおいしさの点からいっても、水道の水の遠く及ぶところではありません。近ごろ、富士山麓の水が「ミネラル・ウオーター」と銘打たれ、大いに売れていますが、日本人が再び水の味に注意を向けはじめた|きざし《ヽヽヽ》として、慶賀に堪えません。
「年寄りに冷水」——老人大いに冷水を飲むべし。ただし、やむを得ず水道の水を飲まねばならぬとしたら、蛇口からすぐ口中へ……ではなく、前の晩に汲み置いて、冷蔵庫に収め、冷たくしてから、起きぬけに飲むと効果テキメン。とは言って、飲んで頭や胃が痛くなるほど冷たくしてはいき過ぎ。飲み水の適温は、ビールの飲みごろの温度と同じ八度Cから一二度C。