むかしの旗日、神嘗祭《かんなめさい》の十月十七日前後、京の街々は、まつたけの香りでいっぱいになります。赤松林に自生するまつたけは、古くから愛好され、京人ならずとも忘れられない秋の味覚です。
茸狩は紅葉狩より世帯|染《じ》み
と、古川柳によまれるくらい、親しまれてきました。紅葉狩がもみじそのものの美しさを観賞するレクリエーションなのに、茸狩は採《と》ったまつたけをその場で焼いて食べたり、すき焼きといっしょに賞味したり、果ては家に持ち帰って、おかずの一菜としたり、なんとはなしに世帯じみているというのです。
香り高く、歯切れのよい新鮮なまつたけは、焼いてよし、煮てよし、揚げてよし、土びん蒸しや包み焼きにして、|ゆず《ヽヽ》や|すだち《ヽヽヽ》のしぼり汁を滴らして賞味すれば、特有の風味に、ひとしお秋の深まりを覚えさせます。
まつたけのしゅんは九月の末から十月のはじめにかけてで、六月ごろに少し顔を出しますがこれを早《さ》まつたけと言い、七月に出回るのは土用まつたけの名で呼ばれます。しゅんもその年の気温や雨量によって、出盛りは十月の初旬か、時には中旬以降になることもあります。
俗にまつたけは上方の味——と言われ、京都が本場。今日では京都にかぎらず、長野、岐阜、三重、兵庫、岡山、広島、山形などの各県からも出荷され、一部は韓国からも輸入されています。東京の青果市場では、大まかに関西ものと信州ものに区別していますが、関西ものは、やわらかなせいか、虫喰いが多く、乾燥度の高い信州ものは、虫喰いの少ない反面、いくぶん固い難点があります。
まつたけは傘の開かない、軸の太くて短いもので、押して弾力のあるものが良品です。傘の開ききったものは古く、味もグンと落ちます。傘の開かない良質のまつたけは一本丸ごと使うことが多く、焼きまつたけ、すまし汁、土びん蒸し、ほうろく焼き、包み焼きなどが向きます。中開きのものは香りも強く、焼きまつたけやちり蒸しに、開ききったものは水分も少なく、香りも落ちていますが、値段が安いので、すき焼き、まつたけごはん、フライなどにすれば結構楽しめます。|ころ《ヽヽ》まつたけはつくだ煮か辛煮にして賞味します。「匂い松茸」と言われるくらいで、料理するときは、このにおいを逃さないように、火をとおしすぎないことが肝心です。
しめじは晩秋、雑木林に群生し、場所によっては一月ごろまで顔を見せますが、いたみやすいので、味の上等なわりに都会の八百屋の店先には姿を見せません。しろしめじ、むらさきしめじ、きしめじ、だいこくしめじと種類も多く、傘の分厚い軸の太く短いものがよい品です。
採れたての鮮度のよいものなら、とうふのおすましやみそ汁に入れると相性がよく、しめじごはんもおいしく、ゆず釜の中身にすれば、コリコリした歯ざわりが楽しめます。
塗盆に千本しめぢにぎはしや 的浦
茸狩は紅葉狩より世帯|染《じ》み
と、古川柳によまれるくらい、親しまれてきました。紅葉狩がもみじそのものの美しさを観賞するレクリエーションなのに、茸狩は採《と》ったまつたけをその場で焼いて食べたり、すき焼きといっしょに賞味したり、果ては家に持ち帰って、おかずの一菜としたり、なんとはなしに世帯じみているというのです。
香り高く、歯切れのよい新鮮なまつたけは、焼いてよし、煮てよし、揚げてよし、土びん蒸しや包み焼きにして、|ゆず《ヽヽ》や|すだち《ヽヽヽ》のしぼり汁を滴らして賞味すれば、特有の風味に、ひとしお秋の深まりを覚えさせます。
まつたけのしゅんは九月の末から十月のはじめにかけてで、六月ごろに少し顔を出しますがこれを早《さ》まつたけと言い、七月に出回るのは土用まつたけの名で呼ばれます。しゅんもその年の気温や雨量によって、出盛りは十月の初旬か、時には中旬以降になることもあります。
俗にまつたけは上方の味——と言われ、京都が本場。今日では京都にかぎらず、長野、岐阜、三重、兵庫、岡山、広島、山形などの各県からも出荷され、一部は韓国からも輸入されています。東京の青果市場では、大まかに関西ものと信州ものに区別していますが、関西ものは、やわらかなせいか、虫喰いが多く、乾燥度の高い信州ものは、虫喰いの少ない反面、いくぶん固い難点があります。
まつたけは傘の開かない、軸の太くて短いもので、押して弾力のあるものが良品です。傘の開ききったものは古く、味もグンと落ちます。傘の開かない良質のまつたけは一本丸ごと使うことが多く、焼きまつたけ、すまし汁、土びん蒸し、ほうろく焼き、包み焼きなどが向きます。中開きのものは香りも強く、焼きまつたけやちり蒸しに、開ききったものは水分も少なく、香りも落ちていますが、値段が安いので、すき焼き、まつたけごはん、フライなどにすれば結構楽しめます。|ころ《ヽヽ》まつたけはつくだ煮か辛煮にして賞味します。「匂い松茸」と言われるくらいで、料理するときは、このにおいを逃さないように、火をとおしすぎないことが肝心です。
しめじは晩秋、雑木林に群生し、場所によっては一月ごろまで顔を見せますが、いたみやすいので、味の上等なわりに都会の八百屋の店先には姿を見せません。しろしめじ、むらさきしめじ、きしめじ、だいこくしめじと種類も多く、傘の分厚い軸の太く短いものがよい品です。
採れたての鮮度のよいものなら、とうふのおすましやみそ汁に入れると相性がよく、しめじごはんもおいしく、ゆず釜の中身にすれば、コリコリした歯ざわりが楽しめます。
塗盆に千本しめぢにぎはしや 的浦