西洋のことわざにも「Rの字のつかない月(May, June, July, August)にはカキを食べるな」というのがあり、青葉どきのカキを敬遠しています。この季節(五月〜八月)のカキがまずいのは、ちょうどカキの産卵期にあたり、生殖巣が成熟し毒化しやすいうえに、その生殖巣を成熟させるために、からだの栄養分が使い果たされ、味も落ちるからです。その点二月は「R」が二つもついていますから、カキの味わいのいちばん深まる月かも知れません。
九月から翌年春四月まで、味のよくなるのはカキばかりとかぎらず、ほかの貝、アサリ・ハマグリ・赤貝・平貝などにしてもそうです。西洋人がカキを例にして、こんなことわざをつくったのも、しゅんもののカキがおいしく、正式のおもてなしの食卓に欠かせぬオールドゥヴルの主役だったからだと思います。
この季節になると、カキはからだが次第に充実し、グリコーゲン及びエキス分が増すので、いちばん美味です。たんぱく質はあまり多くありませんが、無機塩類や造血成分であるところの銅や鉄分を多く含み、他にヨード分を含んでいるので、むかしから貧血症に向く食品として親しまれてきました。ビタミン類では、各種ビタミン、特に、A、Bを多く持ち、肉質は他の貝類にくらべてやわらかですから、消化もよく、お年寄りや子ども、病人などに好適の食品でもあります。また、カキには独特の高い香味がありますので、酒の肴としても多く利用されます。
カキは種類が多く、日本産のうちおもなものとしては、マガキ・ナガガキ・アリアケガキ・イワガキ・イタボガキ・ケガキなどがあり、有名な広島のカキはこのうちの「マガキ」という種類で、小粒で黒ずんでいますが、大味な大粒のものにくらべると、味は格段すぐれています。
よいカキは、内臓を覆っている白い部分が大きくふくらみ、灰白色で、傷がなく、外側の縮《ちぢ》れた部分(外套膜《がいとうまく》)が波状によく縮んでいるもので、こうしたものですと、全体に鈍いつやがあります。つまり、太って大きく、身の締まったものが新鮮で、おいしいものです。
反対に内臓の部分が透きとおって見えたり、弾力がなく、傷のあるもの、ことに外套膜の縮れていないものは、古かったり、おいしくなかったりしますから避けましょう。また、水に長くつけておいたものは、変に白っぽくなり、だらりと伸びきったようになっているので簡単に見分けがつきます。こうしたものは、おいしくないばかりか、中毒の原因にもなりますので注意しましょう。これが殻つきになりますと、見分けにくく、殻つきだから鮮度がよいものと思いがちですからよく注意して、一つ二つ殻を開けて見てもらってから買うようにしましょう。
本場の広島で土手焼きと称する割りたてのカキを、野菜といっしょに白みそで煮ながら食べるカキなべは、からだが暖まって冬の夜の宿にはこよなき相手。またカキ特有の香味を生かしてのカキ酢も、捨てがたい美味です。お好みによってはカキ雑炊をどうぞ。
客ありてよろこばれたる牡蝸酢味噌 みえ
九月から翌年春四月まで、味のよくなるのはカキばかりとかぎらず、ほかの貝、アサリ・ハマグリ・赤貝・平貝などにしてもそうです。西洋人がカキを例にして、こんなことわざをつくったのも、しゅんもののカキがおいしく、正式のおもてなしの食卓に欠かせぬオールドゥヴルの主役だったからだと思います。
この季節になると、カキはからだが次第に充実し、グリコーゲン及びエキス分が増すので、いちばん美味です。たんぱく質はあまり多くありませんが、無機塩類や造血成分であるところの銅や鉄分を多く含み、他にヨード分を含んでいるので、むかしから貧血症に向く食品として親しまれてきました。ビタミン類では、各種ビタミン、特に、A、Bを多く持ち、肉質は他の貝類にくらべてやわらかですから、消化もよく、お年寄りや子ども、病人などに好適の食品でもあります。また、カキには独特の高い香味がありますので、酒の肴としても多く利用されます。
カキは種類が多く、日本産のうちおもなものとしては、マガキ・ナガガキ・アリアケガキ・イワガキ・イタボガキ・ケガキなどがあり、有名な広島のカキはこのうちの「マガキ」という種類で、小粒で黒ずんでいますが、大味な大粒のものにくらべると、味は格段すぐれています。
よいカキは、内臓を覆っている白い部分が大きくふくらみ、灰白色で、傷がなく、外側の縮《ちぢ》れた部分(外套膜《がいとうまく》)が波状によく縮んでいるもので、こうしたものですと、全体に鈍いつやがあります。つまり、太って大きく、身の締まったものが新鮮で、おいしいものです。
反対に内臓の部分が透きとおって見えたり、弾力がなく、傷のあるもの、ことに外套膜の縮れていないものは、古かったり、おいしくなかったりしますから避けましょう。また、水に長くつけておいたものは、変に白っぽくなり、だらりと伸びきったようになっているので簡単に見分けがつきます。こうしたものは、おいしくないばかりか、中毒の原因にもなりますので注意しましょう。これが殻つきになりますと、見分けにくく、殻つきだから鮮度がよいものと思いがちですからよく注意して、一つ二つ殻を開けて見てもらってから買うようにしましょう。
本場の広島で土手焼きと称する割りたてのカキを、野菜といっしょに白みそで煮ながら食べるカキなべは、からだが暖まって冬の夜の宿にはこよなき相手。またカキ特有の香味を生かしてのカキ酢も、捨てがたい美味です。お好みによってはカキ雑炊をどうぞ。
客ありてよろこばれたる牡蝸酢味噌 みえ