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日本むかしばなし集14

时间: 2020-01-19    进入日语论坛
核心提示:ウグイスのほけきょうむかし、むかし、あるところに、若いお百姓《ひやくしよう》がありました。秋になって、稲《いね》のとり入
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ウグイスのほけきょう

むかし、むかし、あるところに、若いお百姓《ひやくしよう》がありました。秋になって、稲《いね》のとり入れもすみましたので、江戸《えど》へ出て、ひとかせぎしてこようと思い、村を出てきました。三国峠《みくにとうげ》という大きな峠にかかったとき、秋の日がもう西へかたむき、峠の中ほどのお堂の前にくると、すっかり日が暮《く》れてしまいました。
「これはこまったことだ。これでは、とても、この大きな峠はこせない。」
と、とほうにくれておりますと、むこうの山にかすかなあかりが一つ、星のように見えてきました。
やれうれしやと、そのあかりを目あてに、一つの山をこえて行きますと、なんとふしぎなことに、この山の中にはめずらしい、りっぱな家が立っていました。トントン、トントンと戸をたたいて、お百姓は声をかけました。
「もしもし、道に行き暮れて、難儀《なんぎ》をしておる者でございます。どんなところでもよろしゅうございますから、今晩《こんばん》一晩とめてくださいませんか。」
すると、中から美しい女の人が出てきて、
「それはさぞおこまりのことでございましょう。むさくるしいところではございますが、さあ、おあがりになって、えんりょなくおとまりください。」
こんなに親切にいってくれました。お百姓は、大喜びして、
「それでは——」
といって上にあがり、とめてもらうことになりましたが、その通された部屋《へや》がとてもりっぱな部屋で、しかも、晩ごはんにといって出されたおぜんが、山の中にはめずらしいごちそうばかりです。すっかり感心していると、女の人が出てきました。
「おまえさんは、これからどこへ行きなさるのですか。」
「ハイ、お江戸でひとかせぎしたいと思いまして。」
すると、女の人が、
「ひとかせぎというのでしたら、わたしのこの家でかせいでみたらどうですか。仕事といっても、るす番をするだけのことですが。」
といいました。そこでお百姓は、どこでかせぐのも同じことと思いましたので、
「それではひとつ、そうおねがいいたします。」
と、その家で働くことになりました。
さて、あくる朝のことです。女の人はお百姓に馬の用意をさせて、馬に乗って出て行きました。そこにはうまやがあって、りっぱな馬が飼《か》ってあったのです。ところが、出て行くときになって、女の人がいいました。
「おなかがすいたら、おまえさんの食べたいと思うものが戸だなの中にはいっていますからね、かってにいくらでも食べてください。しかし、四つある倉のうち、いちばんおしまいの倉の戸だけは、けっしてあけてはいけませんよ。いいですか。」
「ハイ、いちばんしまいの倉は、けっしてあけはいたしません。」
お百姓がそういいますと、女の人はうれしそうにニコニコして、出て行ったそうであります。ところが昼ごろになって、お百姓はおなかがすいてきましたので、
「ご主人は、戸だなの中に、おまえさんの食べたいと思うものがはいっているからといわれたが、おれは今、おさとうのはいっている、あまいおだんごを食べたいんだが——」
そう思いながら、戸だなの戸をそっとあけてみました。と、オヤオヤ、おどろかないではおれませんでした。だって、ちゃんと、そこに大きなさらがあって、できたての、湯気《ゆげ》のほやほや立っているキビだんごが、山もりおいてあったのです。
「すみません、すみません。ごちそうでございます。」
お百姓は、まるでそこに女の人でもいるように、お礼をいって、おだんごの大ざらをおしいただいて、戸だなから取りだしました。そしてこのおいしい、あまいおだんごをたらふくごちそうになりました。
で、それからは毎日、女主人が乗って行く馬の用意をするばかりで、あとは、戸だなからおいしいごちそうを取りだして食べて、倉の中など、ひとつも見ようとせず、忠実にるす番をいたしました。女主人は朝出て行って、晩になるときまって帰ってきました。毎日、すこしの変わりもなく、そうして一年ばかりの月日がたちました。そこで、ある日のこと、お百姓が、女主人にいいました。
「これは長いあいだごやっかいになりました。家のほうも心配になりますので、このへんでおひまをいただきとうぞんじますが。」
そうすると、女の人が、
「そうですか、今までなんともよくるす番をしてくれて、残り惜《お》しゅうは思うけれど、家が心配といえばしかたがない。では、これは、ほんのお礼のしるしばかり——」
そういって、お金の包みと、白木綿《しろもめん》を一反《いつたん》くれました。お百姓はお礼をいって峠をくだり、国へ帰ってきました。家へつくと、今までの話をして、おかみさんに白木綿を見せ、それから、お金の包みを開きました。ところが、ふしぎなことに、そこにはへんな形をした一文銭《いちもんせん》が、一枚はいっているきりでした。一文銭というのを知っていますか。それが十枚で一銭になるというお金で、むかしはあったのですが、今はありません。とにかく、お金の中でもいちばん安いお金です。ですから、お百姓はビックリしたり、ふしぎに思ったりしたのです。
で、おかみさんに、
「どうしたというのだろう。おれは一年もまめに働いてきたんだよ。そのお礼に一文ということは、どうもあたりまえとは思われない。」
そういってみましたが、おかみさんもなんということもできません。それで、この一文銭を持って、庄屋《しようや》さんに相談に行きました。庄屋さんというのは、むかしの村長さんです。庄屋さんは、その一文銭を見ると、アッとビックリしていいました。
「いや、これはおどろいた。これはウグイスの一文銭といってね、この世にめずらしい宝物《たからもの》なんだよ。おまえさんが一年や二年働いたって、とてもさずかるものではない。もしかまわないなら、このおれに千両で売ってくれないか。」
これを聞くと、お百姓は、またもや、おどろくやら喜ぶやら、そして庄屋さんにいいました。
「そうですか、ありがとうぞんじました。では庄屋さん、どうか千両でお買いください。」
で、お百姓は一度にたいへんにお金持となりました。ところが、そのお百姓のおとなりに、欲ばりのおやじがひとり住んでおりました。これを聞くと、おれもひとつその一文銭をもうけてこようと、三国峠をさして出かけました。そして、この美しい女の人のいる一軒家をさがし、そこで働かせてもらうことになりました。朝になると、女の人はやはり馬に乗って出かけました。出かけるとき、お百姓にいったように、
「食べたいものは、戸だなの中にありますよ。それから、四つの倉のうち三つまではあけてよいが、おしまいの四つめの倉は、けっしてあけてはなりません。いいですか。」
そう念をおして、出て行きました。
ところが、なにぶん欲ばりのおやじさんですから、戸だなの中から、いろいろのごちそうを思うぞんぶん取りだして食べましたが、それでも満足せず、倉のほうに何かいい宝物でもありはしないかと考えました。それで、見てもいいといわれた第一の倉をあけて見ました。すると、そこには、べつになんという宝物はありませんでしたが、中にはじつにいい景色《けしき》がはいっていました。夏らしく、海には波がたっていて、上を白いカモメが飛んでいました。おやじさんは、これではつまらないと、つぎの倉をのぞいて見ました。と、これも景色で、一本のカキの木があり、これに赤いカキの実がたくさんなっていました。そしてまわりに菊《きく》の花がさき、空にガンがカギになって飛んでいました。
なあーんだ、これもつまらないというので、またつぎの倉を開きました。すると、これも景色で、ここには雪がふっていて、雪の上をウサギなどがはねていました。これもつまらないというので、いよいよ四つめの倉の前に立ちました。ところが、これは、女の人がけっしてあけてくれるなといった倉でした。だから、おやじさん、ちょっと考えたのですけれども、あけてくれるなといったところをみると、きっと、この中にこそ、ほんとうの宝物がドッサリはいっているのにちがいない——そう考え、あけたくてたまらなくなりました。で、ちょっとだけ、ちょっとだけならわかりゃすまい、そう考えて、倉の戸をちょっとあけて中をのぞきました。
ところが、どうでしょう。そこには一本の梅《うめ》の木があって、花が美しくさいております。そしてその枝に、一羽のウグイスがとまっていて、ホウ、ホケキョウ、ホウ、ホケキョウと美しい声で鳴いていました。で、おやじさんはガッカリして、こんなものを見るなといったのは、いったいどうしたことなんだろうと、また倉の戸をしめようとしますと、ハッと、この倉も、それからそこにあった家も、何もかも一度になくなって、自分もさみしい山の中に立っていました。
「オヤオヤ、オヤ。」
と、ビックリして、夢でも見たのかと、あたりを見まわしました。と、そばで、女主人の声がしました。
「おまえさんは、なんとたいへんなことをしてくれたんだ。四つめの倉は、あれほどあけてくれるなとたのんでおいたではないか。わたしは、じつをいえば、千年のとしをかさねたウグイスなんです。千年の間に、山々谷々をめぐって、毎日毎日ほけきょうという尊いお経《きよう》を読みためて来て、それをあの倉の中にしまってあった。それがおまえのおかげで、みんな外に出て、どことなく消えていってしまった。残念だがしかたがない。そのかわりおまえさんの帰り道も、かいもくわからなくなってしまったよ。」
おやじさんは、おどろいて身のまわりを見まわしましたが、まったく、どこをどう行って家へ帰っていいのか、サッパリわからない山の中でありました。
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