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日本むかしばなし集16

时间: 2020-01-19    进入日语论坛
核心提示:お地蔵《じぞう》さま一むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがありました。貧乏《びんぼう》だけれども、たい
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お地蔵《じぞう》さま

むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがありました。貧乏《びんぼう》だけれども、たいへん正直なおじいさん、おばあさんでありました。
ある年のお正月、もちをつく米がないので、ふたりは粉米《こごめ》とぬかとを買ってきて、それで粉《こ》ぬかもちというのをつきました。それができると二つの大きなおそなえをつくって、うらの川ばたの水神《すいじん》さまへそれをそなえに行きました。そのとき、元日の朝一番にくむ若水《わかみず》というのをくむつもりだったのです。ところで、水神さままで行ってみると、ふところに入れたはずのおもちが見えなくなっておりました。
「はあてな。」
いくら考えてもわかりません。落としたのかと、そのへんをさがしてもないのです。もしかしたら、川の中に落として、それが川下《かわしも》へ流れて行ったかもしれないと、川ばたをさがしさがし行きました。すると、川下の橋のたもとに三つのお地蔵さまが立っていました。そこに行くと、お地蔵さまが、なんだか、にやにや笑っておられるようにみえました。
「お地蔵さま、お地蔵さま。」
それで、たずねてみたのです。
「今、ここへおそなえの粉ぬかもちが流れてはきませんでしたか。」
まんなかのお地蔵さまがいわれました。
「来た、来た、来はしたが、このおれが自分のおそなえにもらっている。」
見れば、まったく、その地蔵さまの前へ、ちゃあんとおそなえになってそなえてありました。それを知ると、おじいさんは、
「ようございます、ようございます。それは、お地蔵さまにおそなえいたします。」
そういって家へ帰り、水神さまへは、べつのおもちを持って、おそなえしました。
ところで、そのころお地蔵さまの前を年よりのキツネとびっこのキツネの二ひきがおなかをすかして、
「お正月といっても、なんにもいいことはない。」
といいながら通りかかっておりました。これを見て、お地蔵さまが、
「キツネ、キツネ。」
とよびとめられました。そして、
「なんにもないが、おれの前のこの粉ぬかもちは、今貧乏なおじいさんがくれて行ったばかりなんだ。おれはいらん。ふたりでおあがり。」
といわれたのであります。キツネはどんなに喜んだことでありましょう。
「ありがとうございます。これで、いい年とりができました。まず新年おめでとうございます。」
といって、さもおいしそうに、大きなおもちを食べました。

つぎの年のお正月です。やはり貧乏ではありましたが、ほんのすこしおもちをつく米を買うお金ができました。それでおじいさんは、
「おばあさん、今年こそおもちをついて食べようぜ。」
そういって、その米を買いに、町へさがしに出かけました。いうまでもありません。それは大みそかの晩《ばん》だったのです。寒い晩、しかも雨がザアザアふっておりました。前のお米屋の前に行ったとき、おじいさんは、くる道で見たお地蔵さまのすがたが思いだされ、目にうかんでなりませんでした。三人のお地蔵さまは雨にうたれて、さも寒そうにみえたのです。
「きょうだけではない。春がくるまでお地蔵さまは寒い寒い雨ざらしだ。」
そう考えると、どうも、お米を買う気がしなくなりました。
「お地蔵さまを雨ざらしにして、自分たちだけおもちを食べるわけにもいくまいて。」
首をかたむけて考え考えしたすえ、おじいさんはとうとうおもちの米を買うのをやめ、そのお金で三つのすげがさを買いました。そしておもちのほうは去年と同じに粉米とぬかの粉ぬかもちをつくことにきめました。それはかさを買った残りのお金でじゅうぶん買うことができたのです。
「お地蔵さま。お地蔵さま。まずまずこれでもかむっていらっしゃい。」
帰りの道で、おじいさんはすげがさを一つ一つお地蔵さまの雨にぬれた頭の上にかむらせてあげました。
「おう、ありがとう、ありがとう。」
むかしのことです。お地蔵さまもこういって、さもうれしそうに、お礼をいわれたそうであります。おじいさんもうれしくなって、
「なんの、これくらいのこと、もったいない、もったいない。」
と大喜びで家へ帰って行きました。ところが、そのあとでお地蔵さまの前をかさのない三人が通りかかりました。それこそ貧乏で、気のどくなおとうさんとおかあさん、それにそのひとりの子どもだったのです。これを見ると、お地蔵さまはすぐ声をかけてよびとめ、
「おれたちはいい、人間は雨にぬれてはたいへんだ。さあさあ、かむって行け、かむって行け。」
そういって、すげがさを三つとも、やってしまわれました。
その人たちがまたどんなに喜んだことでありましょう。手をあわせて、お地蔵さまを長いあいだおがんで行きました。

またつぎのお正月がやってきました。貧乏なおじいさんも一年じゅう一生けんめい働きましたので、去年よりすこしばかりお金ができておりました。それで、今年こそはお米のほかにおさかななども買ってこようと、やはり大みそかの日、町をさして出かけました。ところがなんとその日、外は雪がふっていて、お地蔵さまの前までくると、三人のお地蔵さまがすっかり雪をかむって、まっ白になって立っておられました。これを見ると、おじいさんはまたおもちの米を買う気にも、お祝いのさかなを買う気にもならなくなってしまいました。それで町へ行く道、ひとりでこんなに考えました。
「去年も粉ぬかもちでお正月をしたし、一昨年も、やはり粉ぬかもちのお正月だったんだ。今年だけ、白いおもちでおさかなつきのお正月ってこともあるまい。」
それでとうとう、また、粉米とぬかを買ってしまいました。残りのお金で赤いたんもののきれを買ったのです。そして帰り道、お地蔵さまのところにかかりますと、
「お地蔵さま、お地蔵さま、まあこの雪に、さぞ寒くておこまりでしょう。」
そういって、赤いきれを切って小さなお地蔵さまから、じゅんじゅんにかむらせかけて行きました。ところがどうでしょう。きれが買いたりなかったのか、大きなお地蔵さまにかむせてあげるきれがたりなくなってしまいました。雪はどんどんふっているのに、その地蔵さまだけ、はだかでほうっておくわけにいきません。そこでこんどはおじいさんが、自分で着ていたみのとかさをぬぎ、
「お地蔵さま、そまつですが、まずこれでも着ていてくださいませ。」
そういって、お地蔵さまに着せてあげ、自分は雪にまみれて帰ってきました。
ところでその夜、新年の朝、まだ明けぬ暗いうちのことであります。ごろごろと大きな木を引くような音がおじいさんの家に近くやって来ました。なんだろうと思っていると、玄関《げんかん》のほうで声がしました。
「おれたちは、昨日おじいさんにかさをもらったものたちだが、ちょっと起きてもらえまいか。」
それで、おじいさんがいいました。
「起きてもいいが、家にはたきぎがなくて、火ももせないしまつなんだ。」
と、外の声はいいました。
「火をもすのには、おれたちが大きな木を持って来ている。」
それで起きて、玄関をあけると、外ではふぶきの中を三人のお地蔵さまがノコノコ帰って行くところでありました。そして、そこには大きな木が一つ残してありました。そこでそれをたきぎにしようと、おのでゴンゴン割《わ》りつけると、なんと、中から金や銀がコロコロ、コロコロころがり出て、おじいさんとおばあさんは、その新年からにわかに長者になりました。
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