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日本むかしばなし集18

时间: 2020-01-19    进入日语论坛
核心提示:権兵衛《ごんべえ》とカモ むかし、むかし、あるところに、権兵衛という男がいました。その権兵衛さんのうちの近くに大きな沼《
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権兵衛《ごんべえ》とカモ

 むかし、むかし、あるところに、権兵衛という男がいました。その権兵衛さんのうちの近くに大きな沼《ぬま》がありました。沼には秋から冬へかけて、たくさんのカモが飛んできて、水にもぐったり波にういたりして、遊んでいました。
寒い冬になって、沼の上に氷がはっても、カモはその上に群《むれ》になって、ねむったりしておりました。それで権兵衛さんは、そのカモをワナでとって、それでくらしをたてておりました。しかし、どうしたことか、権兵衛さんのおとうさんのころから、ワナはいつでも一つかけて、カモを一羽《いちわ》だけとるしきたりになっておりました。のんきに遊んでいるカモですから、それを何羽も一度にとるのはかわいそうだというので、そうなっていたのかもしれません。
ところで、権兵衛さんは考えました。——一日一羽なんてめんどくさい。一度に百羽《ひやつぱ》とって、あとの九十九日とらないでおれば同じことだ。そのほうが、九十九日遊んでおられて、どんなに楽なことだろう——。
そこで、権兵衛さんは、うまいことを考えついたと、ひとりで大喜びして、さっそく沼の氷の上に百のワナをしかけました。そのワナというのは、長いなわに、たくさんの輪形《わがた》がつくってあって、それに、カモの足がひっかかるようになったものであります。
さて、権兵衛さんが百のワナをしかけて、木のかげにかくれて、そのなわのはじっこを持ち、今か今かと待っていました。ところが、そんなワナとは知らないで、カモは、つぎからつぎへときて、みんなその足をとろうともがいておりました。そのときちょうど夜明けでしたので、沼の上が少し明かるくなりはじめ、権兵衛さんに、ワナにかかっているカモの数がかぞえられました。
「一羽、二羽、三羽——」権兵衛さんがかぞえてみますと、なんともう九十九羽も、かかっております。
「しめた、しめた、もう一羽だ。もう一羽で、九十九日は寝《ね》てくらせる。」
権兵衛さんはそう思って、一生けんめい、なわのはじっこをにぎったまま待っていました。そのあとの一羽が、どうしたことか、なかなかかかってくれません。ところが、だんだん夜が明けてきて、東の山の上に、ヌッとお日さまが出てきました。するとお日さまの光が沼の氷の上に、サッとばかりさしてきました。すると、九十九羽のカモは、みんないちように、ワナにかかっているのに気づき、ビックリして一度に、バタバタ、バタバタと、たちあがりました。九十九羽もが一度にたったのですからたまりません。そのなわのはじを持っていた権兵衛さんは、九十九羽の力で、ズズズ——と引きずられ、そのすえ、とうとう、カモといっしょに空高く引きあげられてしまいました。
カモたちはひとかたまりになって空にまいあがり、やがて山をこして、見知らぬ村のほうへ飛んで行ったのです。
権兵衛さんは気が気でありません。一本のなわにぶらさがったまま、
「オーイ、助けてくれ——」
よんでみましたけれども、高い空を飛んで行くものを、助けてくれる人もありません。
そのうち、権兵衛さんのぶらさがっていたなわが、ミリミリブツッと切れました。そしてアッというまもなく、下へ落ちて行きました。
ところが、落ちてるとちゅうでふしぎなことがおこりました。いつのまにか、権兵衛さんは、カモになっていました。羽《はね》がはえ、クチバシができて、そうなんです、身もかるがると空を飛んでいるのです。
どうもふしぎで、権兵衛さんには夢《ゆめ》のようにしか思えません。しかしなんにしても、もうカモになってしまっているのですから、カモのようにして生きていくよりしかたがありません。それで、空から見ると、むこうのほうに、一つの沼が見えたので、そこへおりることにきめました。おりて何か餌《えさ》を食べなければ、おなかがすいてたまらなくなったのです。
さて、どこの村とも知らない、一つの村の沼の岸に、カモになって権兵衛さんは、おりました。で、何か食べるものはと、そのへんを見まわしますと、小ブナが一ぴき、岸の水ぎわで、ピチピチ泳いでおりました。これは助かったと、その小ブナを食べに、そちらへ歩いて行きましたが、そのとき、何か足にひっかかったようで、もがいても、もがいてもとれません。よく見ると、それはいつも権兵衛さんが、それでカモをとっていた、あのワナでした。これを知ると、権兵衛さんは悲しくなりました。
「ああ、なんとしたことだろう。一羽とってさえ、カモはどんなに、かわいそうなことだろう。それを自分は、九十九日寝てくらそうと、百羽も一度にとろうとした。そのバチがあたって、とうとうカモになったばかりか、ワナにまでかかって、自分がカモにしたと同じようなめに、あうことになった。悪いことはできないものだ。」
そう思って、ポロポロと涙《なみだ》をこぼしました。すると、どうでしょう。その涙がワナにかかると、ワナがポロリと切れました。ワナが切れると、権兵衛さんは、
「やれ、ありがたや。」
と、また涙を流しましたが、その涙がこんどは目から顔を伝わって、からだのほうへ流れました。するとふしぎなことに、いつのまにか権兵衛さんのカモは、もとの人間の権兵衛さんになっていました。権兵衛さんは、これでもうカモとりをやめて、正直なしんせつな、やさしいお百姓《ひやくしよう》さんになったということであります。めでたし、めでたし。
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