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日本むかしばなし集20

时间: 2020-01-19    进入日语论坛
核心提示:きき耳ずきんむかし、オキナワの人が海ばたを歩いておりました。すると、きれいなタイが一ぴき、浅瀬《あさせ》のところでバタバ
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きき耳ずきん

むかし、オキナワの人が海ばたを歩いておりました。すると、きれいなタイが一ぴき、浅瀬《あさせ》のところでバタバタやっていました。きっと、大きな魚に追《お》いかけられて、そこへ逃《に》げてきていたのです。これを見て、その人は、
「こんなところにいては、欲ぶかの人に見つけられて、にたり、焼いたりして、食べられてしまう。さ、深いところへもってってやるから、クニの方へ逃げていきなさい。」
そういって、タイを深いところへもってって、はなしてやりました。その人はよい人だったので、
「きょうは、ひとつよいことをした。」
と、よろこんで、自分のうちの方へ歩いておりました。すると、うしろから、
「もし、もし。」
とよぶ人があります。ちょっと、うしろを向いて見ると、とてもうつくしい女の人であります。それで、
「あんなきれいな人が、自分に用のあるわけはない。」
そう思って、歩きだしますと、
「もしもし、ちょっとお待ちください。」
またよばれました。
「わたしですか。」
そういうと、
「さようでございます。」
その女の人は、ていねいな口調《くちよう》でいうのです。
「わたしは竜宮《りゆうぐう》の竜王から、お使いにまいりました。さきほどは、竜宮のひとり娘、タイヒメの命をお助けくださいまして、ありがとうございました。それについて、竜王がお礼を申しあげたいから、ぜひおつれしてこいと、そう申します。どうか、竜宮へおいでくださいませ。」
そういって、何度も頭をさげました。それで、オキナワの人は、
「竜宮ですか。竜宮といえば、海の底にある御殿《ごてん》でしょう。わたしは、じつは泳ぎができなくて、そういうところへは行けないのです。」
そういって、ことわりました。すると、その竜宮の女の人が、
「それなら、わけはございません。じつは、わたしはクラゲなんです。だから、わたしの上へお乗りになれば、あっというまに、竜宮へつきます。では——。」
そんなことをいいました。いつのまにか、ふたりは海岸へ出ていたのです。そして女の人はもう大きなクラゲになって、海にうかんで、ウッキ、ウッキしておりました。しかも、
「さあ、お乗りください。えんりょなく、お乗りください。」
そう、さいそくするのでした。そこで、オキナワの人は、そのクラゲの人に乗りました。乗ったと思うと、もう遠い海の上をクラゲは泳いでいました。
「ひろい海だなあ。」
オキナワの人が思ったときには、もうクラゲとふたり、竜宮の門についていました。そのとき、そのクラゲの人が、オキナワの人に教えてくれました。
「竜王が、お礼したいが、なにがいるかといわれるでしょう。そうしたら、ほかのものはなにもいりません。きき耳ずきんをちょうだいしたいと、そうおっしゃいませ。」
そして竜王のところへつれてってくれました。竜王は、タイヒメが助けられたことをたいへんよろこんでいて、オキナワの人に何度もお礼をいいました。それから、たくさん、りっぱなごちそうが出ました。赤い色や、こがね色をした海のお酒も出ました。それがべっこうのさらにもられ、サンゴのさかずきにつがれました。そのあいだに、いろいろな魚が出てきて、歌をうたったり、おどりをおどったりしました。そのうち、竜王がいいだしました。
「オキナワのお方、あなたに何かお礼をしたいと思うのですが、おのぞみのものはありませんか。」
すると、オキナワの人は、クラゲにいわれたとおり、
「それなら、ひとつ、きき耳ずきんというものをいただきたいと思います。」
そういいました。これを聞いて、竜王は、
「はて、こまりましたな。そのきき耳ずきんは、この竜王にも、じつは一つしかない宝ものなんで、あなたにさしあげれば、あとには、そういうものはなくなるというわけなんです。」
そういって、しばらく考えておりました。しかし、
「タイヒメを助けてくださった恩人ですから、そんなこともいってはおれません。」
そういって、とうとう、そのきき耳ずきんを、竜王はオキナワの人にくれました。このきき耳ずきんというのは、これをかぶれば、鳥でもけものでも、草でも木でも、生きてるもののことばは、ぜんぶ聞こえて、その意味がわかるという、それこそ便利調法《べんりちようほう》なものなんです。だから、竜王は惜《お》しがりましたし、オキナワの人はほしがったのです。
しかし、オキナワの人はとうとうそれを手にいれて、またクラゲに乗せられて、もとの海岸へ帰ってきました。そこへあがると、岩の上に腰をおろして、しばらく休んでおりました。すると、むこうの木の枝《えだ》にスズメが二、三羽とまって、チュンチュン、チュンチュン鳴いております。
「そうだ。まず、あのスズメで、このきき耳ずきんをためしてみよう。」
オキナワの人は、このとき、ふっとそう思いつきました。そこで、持っていたずきんを、すぐ頭にかぶりました。すると、どうでしょう。スズメの話が、つぶっていた目があいたように、はっきりわかってきました。
「人間というものは、かしこいようでいて、じつはなんにも知らない。ね、おれが今とまってるこの木の下に、小さい川があるだろう。その川のまんなかに石が一つあって、人間は川をわたるとき、みんな、それをふんでわたってるんだ。それが、その石が金なのさ。人間がおがむようにして、たいせつにする、あの金なのさ。それを知らないで、もう何年、あれをふみにじって、人間がとおっていくことか。人間てバカなものさ。チュッチュッチュッ。」
なんと、スズメがこんなことをいっているのです。そこで、その人はさっそく、その木の下の川へ行って見ると、スズメのいうとおりに、一つ石があります。コケをかぶった石なので、そのコケをのけてみると、まったくの黄金石《こがねいし》です。大カボチャを二つも三つもあわせたような金のかたまりです。その人はおどろくやら、よろこぶやら。その金のかたまりをおこして、道でひろったなわでくくって、肩にかけていきました。
しばらく行くと、高い松の木の上で、こんどはカラスが二羽、ガアガア、ガアガア鳴いております。
「さてな。こんどは——。」
そう思って、またずきんをかぶりました。すると、カラスのことばが、わかってきました。
「人間というものはバカなものじゃ。」
カラスまでやっております。
「あれだけたくさんのお医者さんが集まって、殿《との》さまの娘《むすめ》ひとりの病気をなおすことができない。これはなんということだ。それは病気のもとが、お医者さんたちにはわかっていないからなのじゃ。殿さまの家の屋根を見るがよい。あそこへカヤをふくとき、ヘビを一ぴき、まちがえてカヤの中へふきこんでしまった。それから三年にもなる。ヘビはそこへしばられたままじゃ。あのヘビを屋根からほどいてやって、食物を食べさせてやれば、娘さんの病気は、すぐ全快じゃ。カア、カア、カア。」
オキナワの人は思いました。
「これはいいことを聞いた。」
そこで、すぐ、殿さまの家をさして歩いて行きました。行ってみると、門に立札《たてふだ》が立っております。
『当家《とうけ》の娘、なにかわからない病気で、長く苦しんでおる。これをなおしてくれたものは、うちのおむこさんにしてやるものなり。』
そう、立札に書いてありました。オキナワの人は、さっそく玄関《げんかん》へ入っていきました。そして、
「お娘さんの病気は、わたしがなおしてあげます。」
そう申しこみました。しかし、そこにいた大ぜいのお医者さんたちは、
「なにが、この男が——。」
と思っておるものですから、てんで、あいてにしません。しかし、殿さまは、娘がかわいそうですから、だれかれなしに、なおすという人はみんな座敷《ざしき》にとおして、娘さんを見てもらいます。オキナワの人にも、
「とおって、娘を見てやっておくれ。」
そういいました。そこで、その人は座敷にあがり、娘をしんさつするようなかっこうをしました。それから殿さまにいいました。
「これは、ただの病気ではありません。当家で苦しんでいる生きものがあります。それを助けなければ、お娘さんの病気はなおりません。」
そして、カラスに聞いたとおり、ヘビの話をしました。さっそく、屋根をしらべてみると、やはりヘビが一ぴき、くくられておりました。それをはなして、卵をやったり、米つぶをやったりしました。死にそうになっていたヘビは、しだいに元気になってきました。そして、それが一尺《いつしやく》はうと、娘さんも一尺動け、ヘビが三尺はうと、娘さんも三尺動けるようになりました。ヘビがどっかへ行ってしまうと、娘さんはもうすっかり丈夫《じようぶ》になり、平常とかわらぬからだになりました。殿さまは大喜び。
「ぜひ、うちのおむこさんになってくれ。」
そういって、おむこさんにしてしまいました。オキナワのその人は、そうして、のちには殿さまになり、しあわせにくらしました。
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