水がめ買い
きっちょむさんがセトモノ屋へ水がめを買いに出かけました。
「今日《こんにち》は。水がめをください。」
「はい、いらっしゃい。水がめは大きいのと、小さいのとありまして、大きいのが六十銭、小さいのが三十銭です。」
セトモノ屋のおかみさんがいいました。
「それでは、その小さいほう、三十銭のをもらいましょう。」
きっちょむさんは、三十銭はらって、小さいのを持って帰りました。
「水がめ、買って来たよ。三十銭だった。」
そういって、家のおかみさんにその水がめを見せました。すると、おかみさん、
「それは小さいです。もっと、もっと大きいのを買ってきてください。」
そういいました。
「あ、そうか。この上は六十銭だ。」
きっちょむさんは、こういって、またセトモノ屋へ出かけました。
「さっきの水がめですがね。うちで小さいっていいますから、六十銭のと、とりかえてください。では、これ返しますよ。」
きっちょむさんは、その三十銭の水がめをセトモノ屋のおかみさんにわたして、それからこういいました。
「さっき、おかみさんに三十銭あげましたね。それからこの水がめを返しますから、合わせて六十銭になります。ね、わかったでしょう。で、その大きいほうの水がめをもらって行きますよ。」
そして、大きいほうの水がめをもらって行きました。しかし、どうでしょうか。それでいいのでしょうか。あとでセトモノ屋のおかみさんがしきりに首をかしげ、何度もソロバンをしていたそうであります。
「今日《こんにち》は。水がめをください。」
「はい、いらっしゃい。水がめは大きいのと、小さいのとありまして、大きいのが六十銭、小さいのが三十銭です。」
セトモノ屋のおかみさんがいいました。
「それでは、その小さいほう、三十銭のをもらいましょう。」
きっちょむさんは、三十銭はらって、小さいのを持って帰りました。
「水がめ、買って来たよ。三十銭だった。」
そういって、家のおかみさんにその水がめを見せました。すると、おかみさん、
「それは小さいです。もっと、もっと大きいのを買ってきてください。」
そういいました。
「あ、そうか。この上は六十銭だ。」
きっちょむさんは、こういって、またセトモノ屋へ出かけました。
「さっきの水がめですがね。うちで小さいっていいますから、六十銭のと、とりかえてください。では、これ返しますよ。」
きっちょむさんは、その三十銭の水がめをセトモノ屋のおかみさんにわたして、それからこういいました。
「さっき、おかみさんに三十銭あげましたね。それからこの水がめを返しますから、合わせて六十銭になります。ね、わかったでしょう。で、その大きいほうの水がめをもらって行きますよ。」
そして、大きいほうの水がめをもらって行きました。しかし、どうでしょうか。それでいいのでしょうか。あとでセトモノ屋のおかみさんがしきりに首をかしげ、何度もソロバンをしていたそうであります。