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日本むかしばなし集39

时间: 2020-01-19    进入日语论坛
核心提示:はなたれ小僧《こぞう》さまむかし、むかしです。貧乏《びんぼう》な男がおりました。花をつくって、毎日、町へ売りに出かけてい
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はなたれ小僧《こぞう》さま

むかし、むかしです。貧乏《びんぼう》な男がおりました。花をつくって、毎日、町へ売りに出かけていました。
「花や花、美しい花。」
ところが、どんなに美しい花でも、売れることもあれば、売れないこともあります。売れなくて、その美しい花が残ることがあると、帰《かえ》りに、川口のところで、花を水へ投げこみました。そして、そのたび、
「そうれえ、竜宮《りゆうぐう》の乙姫《おとひめ》さま、花をあげますぞう。」
そういいました。ところが、ある日のこと、花を売って帰ってくると、たいへんです。その川が大水になっていて、わたることができません。
「はて、困ったなあ。どうしよう。」
岸に立って考えていると、足もとに泳ぎよってきたものがあります。一ぴきのカメです。カメもカメ、大きなカメです。浦島太郎《うらしまたろう》が乗ったという、あんなカメなんです。しかも、そのカメが背中《せなか》を後向《うしろむ》きにして、その男に、さも「乗れ、乗れ」というようなかっこうをしております。
「あ、そうか。むこうへわたしてくれるのか。」
男は、そうひとりがってんをして、そのカメのこうらの上に乗りました。すると、こころえたもので、カメはスーッと川のなかへ出て行きました。出て行ったのはいいのですが、しばらくたって気がつくと、なんだか、わけのわからないところへ来ています。シナのようにも思えれば、インドのようにも思われて、果《は》てはゴクラクかとも思えるようなところです。そこで、男は、
「カメさん、カメさん、ここはいったいどこですか。」
そういって、カメにきいてみました。
「ここですか。」
カメは短い首を後にねじ向けていいました。
「ここは竜宮というところです。」
「あっ、竜宮ですか。それは困《こま》った。むかし、むかし、浦島太郎という人が、二、三日おったと思ったら、そのあいだに百年もたっていたという、あの海の底の竜宮でしょう。どうも、このカメさん、浦島太郎が乗ったカメによく似《に》ていると思ったんだが、やっぱり、そうだったのですか。しかし、竜宮へ来てしまっては、もう日本では二、三十年たってるでしょうね。こまった、こまった。」
男はしきりにそういいました。しかし、カメは、
「そんなことはありませんよ。おまえさまが、いつもよく花をくださるんで、それで、乙姫さまがお礼をいいたいと、おっしゃるんだ。心配いりません。」
そういうのでした。そして、すぐ竜宮の乙姫さまの御殿《ごてん》につきました。タイや、ヒラメや、タコや、クラゲが、御殿の玄関《げんかん》で大ぜいならんで、その男を待っていました。
「いらっしゃいませ。」
みんなは、いっせいに頭をさげ、男を乙姫さまのところへ案内しました。すると、乙姫さまがいいました。
「いつも美しいお花をありがとう。きょうは、花のお礼に、おまえさんにひとり、男の子をあげようと思って、それでカメをお迎《むか》えに出しました。その子というのは、これですが、これを家へつれてって、たいせつにやしなってごらんなさい。おまえさんの望みは、なんでもかないます。この子はそういう子なんです。」
そう乙姫さまにいわれて、男は、
「ありがとうございます。」
と、頭をさげました。それから乙姫のそばに立ってるその男の子を、つくづくとながめました。見れば見るほど、しかし、その子はきたない子どもでした。はなをたらし、よだれをたらし、なんともみっともない子どもなんです。
「それで、その子は、なんという名まえでございましょうか。」
男がきくと、
「トホウというのです。」
乙姫がいいました。
「それでは、トホウをちょうだいしてまいります。」
男はそういって、トホウをつれて、カメの背に乗って、日本へ帰ってきました。帰ってみると、自分の家がせまく思われてなりません。そこで、まず、ものはためしと、トホウに話しかけました。
「トホウ、トホウ、家がせまくて困るんだが。」
いうかいわないかに、トホウは目をつぶって、手を三つ、パン、パン、パンと打ちました。すると、もう目のさめるようなきれいな家が目のまえに立っていました。
「や、ありがとう。おまえさん、たいへんな術ができるんだねえ。」
男は感心してしまいました。しかし、家へ入ってみると、しきものがほしくなりました。そこで、
「トホウ、トホウ。」
とよんで、しきものをたのみました。しきものができると、タンスがほしくなりました。タンスができると、きものがいるようになりました。こうして、なにからなにまで、もうほしいものが考えつけないほど、トホウにたのんで出してもらいました。おわりに、お金《かね》を、むかしの金で千両《りよう》ほど出してもらって、番頭《ばんとう》さんはおく、女中《じよちゆう》さんはおく、ぜいたくにくらすことになりました。もう花売りになんか行きません。人にお金を貸して、貸し賃《ちん》をとって、それでくらすようになったのです。
それから五年ほど、月日がたちました。男もそのへんで指折りのお金持になったもので、あっちへよばれ、こっちへよばれ、お客さまに行くことが多くなりました。ごちそうをして、お客さまをよぶことも、たびたびでした。
ところが、トホウです。そのダンナになった男のそばについていて、一分たりともはなれません。男は、しだいしだいに、トホウがきたなく思われ、いやになってきたのです。どこに行くにも、ついてくるしまつで、ほんとに困ってしまいました。それで、
「トホウ、トホウ、そのはなをかむわけにはいかんのかい。」
あまりはなをたらすので、そうききますと、
「おれには、かまれない。」
トホウは、そういいます。
「よだれをふくわけにはいかんかい。」
そういいますと、
「そんなこと、おれにはできない。」
そういうのです。そこで、男はもうトホウに用がなくなったように思われ、
「では、長いあいだ、やっかいになったが、おまえ、帰るところはないのか。」
そういいました。すると、トホウは、
「わかりました。」
そういって、その家を出て行きました。
トホウがその家を出ると、とたんに、家がむかしの貧乏家《びんぼうや》に変り、男のきているきものも、むかしどおり、そまつなきものになりました。夢《ゆめ》がさめたようなありさまです。男はびっくりしましたが、どうすることもできませんでした。
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