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日本むかしばなし集48

时间: 2020-01-19    进入日语论坛
核心提示:山姥《やまんば》と小僧《こぞう》むかし、むかし、ある山里《やまざと》に一つのお寺がありました。そこに、和尚《おしよう》さ
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山姥《やまんば》と小僧《こぞう》

むかし、むかし、ある山里《やまざと》に一つのお寺がありました。そこに、和尚《おしよう》さんと小僧さんとが住んでいました。ある日のこと、和尚さんが小僧さんにいいました。
「小僧、小僧、あすは彼岸《ひがん》の中日《ちゆうにち》だから、山へ行って、仏さまにおそなえするヒガンバナを取ってきてくれ。」
「はい。」
といって、小僧さんが出かけようとしますと、和尚さんが三枚《まい》のお札《ふだ》をくれました。そして、小僧さんにいいました。そのころは、山の中に天狗《てんぐ》だの、山姥だの、それはおそろしいものが住んでいたからです。
「もし、何かこわいものに出あったらな、この札を、それに投げつけて、おまえの出したいと思うものをいえばいいぞ。海が出したかったら、海出ろうッ、というのだ。すると、そこに海が出るからな。こわいものが海をわたりかねて、こまっているあいだに、ここへ逃《に》げてきなさい。いいか、わかったか。」
「はい、わかりました。」
小僧さんは、三枚のお札をもらって、出発しました。
ところで、小僧さん、ヒガンバナを取りに山へはいってみると、や、さいてた、さいてた。大きくて、まっかな花が見わたすかぎりさきみだれていました。小僧さんは、目うつりがして、どれから取っていいかわかりません。それで、あれを取ろうか、これを取ろうかと歩いて行くと、先へ行くほど、花は美しくなり、大きくなり、ついには、一ふさで小僧さんの頭ほどもある、大きな花がさいていました。小僧さんは、こんな花の美しさにさそわれ、ついつい山を奥《おく》へ奥へと歩いて行きました。で、気がついたときには、もう日が暮《く》れかかっていました。
「これはたいへん。」
と、おどろいて、さて帰ろうとすると、また、こまったことに、こんどは道がわからなくなってしまいました。あわてて道をいそぎ、あっちこっちと行ったり、来たり、あせっていますと、いよいよ、道はなくなってしまい、そのうえ、日がすっかり暮れて、あたりがまっ暗になりました。小僧さんは、もう泣《な》きそうになりながら、あるとも、ないともわからないような道をかきわけて、歩いていました。と、むこうに、森の中に、木がくれに、なんだかあかりのようなものが見えました。
「やれ、うれしや、あすこに、だれか人が住んでる。」
小僧さんは大喜びして、そのあかりのようなものをたよりにやって行きますと、そこは、森の中の一軒家《いつけんや》で、窓にあかりがさしていました。
「ありがたや、ありがたや。これも仏さまのおかげだ。」
そう思いながら、小僧さんは、その家の戸口をたたきました。
「おばんでございます。道にまよって、こまっております者、どうか、今晩《こんばん》一晩、とめてくださいませんか。」
すると、中から、
「おう、おう。」
と、へんな声をして戸をあけた者がありました。見ると、それはおそろしい山姥だったのです。山姥は、小僧さんを見ると、
「さあさあ、はいりなさい。道にまよった者かい。それはさぞ難儀《なんぎ》だったろ。」
そんなことをいって、上《じよう》きげんで中へ案内《あんない》しました。小僧さんは、いよいよこまりましたが、しかし、もうしかたがありません。案内されるままに中にはいり、すすめられるままに、晩のごはんも食べました。寝《ね》るときになってみると、山姥がすぐそばに寝て、なんだか、小僧さんの番をしているようです。小僧さんは、山姥がねむったら逃げようと思って、寝たふりをして、グウグウいびきをかいてみせたのですが、山姥は、やっぱり、目をさましているようです。これでは、きっと山姥、今晩のうちに、おれを食うつもりだな——そう思うと、小僧さんは、もうじっとしていられなくなって、山姥にいいました。
「山姥さん、山姥さん、おれ、お便所へ行きたくなった。」
すると、山姥がしかるようにいいました。
「こらえていなさい。」
「それが、こらえられないんだよ。」
山姥は、しかたがないように舌うちをして、
「では、すぐ出てくるんだよ。逃げたら承知《しようち》しないから。」
そういって、小僧さんの腰《こし》に綱《つな》をつけ、自分は床《とこ》の中でその綱のはしをにぎっていました。小僧さんは便所に行くと、その綱をといて、はしを便所の柱に結びつけました。そして、
「便所の神さま、便所の神さま、山姥が、小僧、小僧とよびましたら、まだまだプップッといっておくんなさい。おねがいいたします。おたのみいたします。」
そうおがんでおいて、そこの窓《まど》から、いちもくさんに逃げだしました。
さて、山姥のほうでは、小僧さんの便所があまり長いもので、しだいに、いらいらしてきて、
「小僧、長いぞ。」
そう声をかけました。すると、便所のほうで、
「まだまだプップッ。」
という声がしました。しかたなく、山姥はまたすこし待ちました。しかし、いつまでたっても出てこないので、三べんも四へんも、小僧小僧とよびたてました。
そのたびに便所からは、
「まだまだプップッ。」
という返事ばかり聞こえてきました。で、どうもこれはすこしへんだと考えて、
「いかになんでも、あまりてまがとれるじゃないか。」
そうおこって、綱のはしをぐんぐん、ぐんぐん、引っぱりました。すると、これはどうしたことでしょう。便所の柱がゴトゴト大きな音をたてて、ころがってきました。山姥は、これにはおどろき、腹《はら》をたてて、
「小僧のやつ、よくもおれをたぶらかして逃げやがった。」
と、とび起きて、小僧さんのあとを追いかけました。小僧さんは、一生《いつしよう》けんめい走りましたが、なにぶん知らない道ではあるし、それに、山姥は足が早いもので、見るまに山姥に追いつかれてしまいました。山姥は、もう小僧さんのすぐ後にきて、
「小僧、待て、待たんか、小僧。」
とよびたてました。そこで、小僧さんは、このときぞと、和尚さんにもらったお札を取りだして、その一枚を山姥のほうへ投げました。そして、大きな声でいいました。
「川になれ、大川になれい。」
と、そこに大きな川ができました。水がどうどうとすごいいきおいで流れている大川です。しかし、山姥のことですから、そんなことはすこしもおかまいなく、ザブザブ、ザブザブと、その水の中をわたって、また、たいへんな元気で追いかけてきました。そして小僧さんがいくらも逃げのびるひまもなく、すぐもう後に追いついて、また、
「小僧、待て、待たんか、小僧。」
とよびました。そこで、小僧さん、二枚めのお札をだして、
「山になれ、高い高い山になあれ。」
と、山姥のほうに投げました。と、こんどは、そこに山ができました。それこそ、何千メートルという高山ができたのです。しかし、山姥のことです。
「なに、これしきの山が。」
といって、見るまにそれにかけのぼり、見るまにそれをかけおりました。そして小僧さん、いくらも逃げのびるひまがありません。すぐもう後に追いつめてきました。
「小僧、待て、待たんか、小僧。」
もう、後でよび始めたのです。そこで小僧さん、こんどこそはと、おわりの三枚めのお札をだしました。
「火事になれ、大火事になれ。」
そういって、山姥のほうに投げました。すると、山姥の前に、火の海ができました。ゴンゴン、ゴンゴン、山のような大きな火が、海のようにもえひろがったのです。しかし、山姥のことですから、それも煙《けむり》をわけ、炎《ほのお》をわたりしてやってきました。やはり小僧さん、いくらも逃げのびるひまがなかったのです。
ところが、そのとき、小僧さんふと気がついてみると、お寺の門の前に立っていました。
「あれ、お寺ではないか。」
思わず、小僧さんはそういいましたが、まったくお寺にちがいありません。それで、たいへん安心《あんしん》して、すぐ玄関《げんかん》にかけこみました。ところが、なにぶん夜だもので、そこにはかたく戸がしまっていました。で、戸をとんとん、とんとん、たたいて、大声で和尚さんをよびました。
「和尚さん、和尚さん、早く戸をあけてください。山姥に追われて逃げてきたのです。もう、そこまで追いかけてきています。早く早く。」
すると、和尚さんの声が、中から聞こえました。
「よしよし、今、戸をあけてやる。しかし、ちょっと小便をしなけりゃ。」
のんきなことをいうもので、小僧さん、気が気でなく、
「和尚さん、山姥はもう門をはいりました。早く、戸をあけてください。すぐあけてください。」
また大声でよびました。と、また、中から和尚さんがいいました。
「せくな、せくな、今、手を洗ってるところだ。」
そして、やっと戸をあけて、小僧さんを入れてくれました。それからこんどは大いそぎで、つづらの中に小僧さんをおしこみ、そのつづらを井戸《いど》の天井《てんじよう》につるしました。
和尚さんが、そのつづらをつるしたとたんに、玄関へ山姥がとびこんできて、大きな声でわめきました。
「和尚、和尚、ここへ小僧がひとり逃げこんだろう。」
和尚さんはいいました。
「あわてなさんな、山姥どん。小僧なんてものはこなかったよ。」
「いやいや、たしかに、この寺にとびこんだ。おれは、それをこの目で見た。」
山姥がいいました。そして、ふたりは、
「いや、こない。」
「いや、きた。」
と、いいあいになりました。それで、和尚さんは、
「それなら、どこでも、さがしてみるがよい。」
といいました。山姥は、
「よしきた。」
と、お寺のなかにかけこんで、うちの中をあちらこちらとさがしまわりました。どこにも、小僧さんの影も形もありません。しかし、おわりに山姥が、井戸の中をのぞくと、そこの水の上に、つるしたつづらのすがたがうつっていました。これを見た山姥は、それが水にうつったつづらとは知らないで、
「なあんだ。こんなとこにかくしてやがる。」
と、大喜びして、そのうつったつづらをめがけて、まっさかさまに井戸の中にとびこみました。これを見た和尚さんは、大いそぎで井戸のふたをして、その上に大きな石をおいて、山姥が出られないようにしてしまいました。さすがの山姥も、それなり井戸から出ることができず、和尚さんに退治《たいじ》されてしまったそうです。めでたし、めでたし。
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