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日本むかしばなし集54

时间: 2020-01-19    进入日语论坛
核心提示:ネズミとトビむかし、むかし、あるところに、いろいろな姿《すがた》にばけるふたりの人がいました。あるとき、ふたりは相談《そ
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ネズミとトビ

むかし、むかし、あるところに、いろいろな姿《すがた》にばけるふたりの人がいました。あるとき、ふたりは相談《そうだん》しました。
「おれたちは、なんにでもばけられる、じょうずな術を知ってるのだから、これでひとつ、金もうけをしようではないか。何か、いい考えは思いつかないか。」
ひとりがいいますと、もうひとりが、
「ウン、それにはいいことがある。」
と、ひざをたたいて答えました。そして、よく相談したのち、ひとりがりっぱな黒駒《くろこま》にばけました。それこそ三国一《さんごくいち》というような、毛色のつやつやした、せいの高い、よくこえた、とても元気そうな馬でした。もうひとりは、それをひいていくばくろうになりました。
で、ばくろうは馬をひいて、村へやってきました。
「どうでしょうか。馬はいりませんか。三国一の名馬です。」
そういうと、たくさんの人が集まってきて、その馬を見ました。
「なるほど、いい馬だ。」
十人も二十人も、集まった人が、口をそろえて、そういいました。それで、
「おれに売ってくれ。」
「いや、おれがほしい。」
そんなことをいう人が、たくさん出てきて、
「おれは、八百円で買う。」
「おれは、千円で買う。」
「いや、おれは千五百円だ。」
と、いうようになりました。そして、とうとう、千五百円で、その化《ば》け馬は売られました。買った人は、たいへんな名馬というので、大喜び、すぐ家にひいて帰り、うまやに入れて、シッカリ綱《つな》でつないで、草や麦《むぎ》やごちそうをしてやりました。
ところが、そのあくる朝、その人がうまやへ行ってみると、どうしたことでしょう。一夜のうちに、その名馬は、影《かげ》も形もなくなっていました。千五百円もだしたのですから、たいへん残念《ざんねん》がって、ほうぼうへ人を走らせ、あっちにいるか、こっちへ行ったか、とさがしまわらせましたが、ついに馬はどこへ行ったかわかりませんでした。それではというので、こんどは、ばくろうをさがしましたが、これもまた、ゆくえがわかりません。
ふたりは、もうそのとき、とっくにもとのすがたにかえり、もうけたお金でお酒を飲んだり、おいしいものを食べたりしていました。そして、
「しかし、高く売れたもんだなあ。いい商売がみつかって、今後《こんご》くらしにこまることはない。」
こんなことをいいあっていました。ところが、ふたりはまもなくお金を使いはたしてしまいました。それでまた馬とばくろうになって、馬を売りに行くことになりました。こんどは、まえに馬になったほうがばくろうになり、ばくろうになったほうが馬になりました。
やがて、ふたりはまえとちがった村へやってきました。そして、いいました。
「三国一の名馬です。買う人はありませんか。」
そこで、村の人たちは、
「名馬がきた。名馬がきた。」
と、集まってきて、その馬のりっぱなのを見て、みんな感心して、また、千五百円だして買う人がありました。しかし、どこかの村で、名馬を買ったら、これが一晩《ひとばん》のうちにいなくなったといううわさがたっていましたので、その馬を買った人は馬をうちへつれて帰ると、うまやへ入れて、シッカリ綱でつなぐのはもとより、そこの戸を外から厳重《げんじゆう》に、クギで打ちつけておきました。
ところが、そのあくる日です。その人がうまやへ行ってみると、やっぱり馬はいませんでした。化け馬ですから、逃《に》げてしまったらしいのです。しかし、その人は、あんなに大きいものが、戸もはずれていないのに、どうして逃げたろうと、ふしぎでなりません。ふし穴から馬が逃げるはずもないというので、おおぜいで、うまやの中をすみからすみまで、さがしました。ところが、うまやのすみに小さなクモが一ぴき、巣《す》をかけて、その上にとまっていました。そこで、そのクモをつかまえ、綱でくくってみますと、それが、ほんとうの人間になりました。それで、買い元《もと》の人は、たいへん腹《はら》をたてて、
「この大どろぼう。」
といって、役所へうったえて出ました。役所でしらべてみますと、まえにも、このように馬にばけて、千五百円お金をとったということがわかりました。そこで、役所でも、
「このような人間を生かしておいては、世の中にどのようなわざわいをするかもわからない。」
ということになり、裁判《さいばん》でとうとう死刑《しけい》になることにきまりました。
ところが、いよいよ刑場《けいじよう》に引っぱりだされて、今にも死刑になろうというときでした。その馬にばけた人が、役人にいいました。
「わたしは悪いことをしたのですから、死刑になっても、すこしも不服はありません。そして、またいい残したいこともありません。ただ最後のおねがいに、あそこのあの高いさおに、のぼらせてくださいませんか。」
役人が、その人の指さすところを見ると、そこに、一本の高い竹ざおが立っていました。それは、十メートルもあるような高いさおでした。とても、人間がのぼれるようなさおではありません。で、役人がいいました。
「最後のねがいとあれば、ゆるしてやってもいいが、しかし、あれにのぼっていかれるのかい。」
「ハイ、まあ、ごらんになっていてください。」
そういうと、その人は、その竹ざおの前にかけよりました。そして、さおの下に行くと、ハッというまもなく、それが一ぴきのネズミになっていました。そして、スルスルとさおのいただきにのぼりつくと、そこにとまって、あちこち頭を向けてながめまわしました。それから、
「チュッチューチュー。」
と、二声三声鳴きました。と、
「これは!」
と、役人がハッとしたのですが、どこからか、一羽《わ》のトビが飛んできました。そして、そのさおのいただきのネズミをくわえて、スウーッと、空高くまいあがり、それなり、遠くへ飛んで行ってしまいました。役人はもとより、見ていた人たちも、あっけにとられ、声さえ出ませんでした。どうすることもできず、どうするまもありません。
ところが、そのばけることのじょうずなふたりです。ふたりはまたもとのすがたにかえり、だまし取ったお金で、ごちそうを食べたり、お酒を飲んでくらしました。が、それもまもなく、また、なくなりました。で、ひとりがまたいうのでした。
「どうだろう。もう一度やってみたら——。こんどは、おれが馬になる。」
これは、はじめ、馬になった人でした。
「さあ——こんどしくじったら、いよいよ、命がなくなるぞ。」
二度めに馬になったほうがいいました。しかし、ふたりともお金がなくなったので、とうとう、また馬とばくろうになって出かけました。
「三国一の名馬、三国一の名馬。」
そう、ふれ歩いて、また千五百円に売りました。こんども買う人は用心して、うまやをクギづけにしたばかりか、そこへ番人《ばんにん》までつけました。それで、馬にばけていた人は、逃げるまもなく、夜明けまで起きていたので、ついねむくなって、人間のすがたにかえってねむってしまいました。そこを朝になって主人《しゆじん》に見つけられ、たいへんなことになりました。いよいよ役所にうったえるというのです。そこで、その馬にばけた者がいいました。
「しかたがありません。うったえてください。しかし、そのまえに、わたしに芸をさせてください。おわびのしるしに、おもしろい芸をおめにかけます。」
主人は、ついその話にのり、その者のいうとおり、一升《しよう》入りのトックリを持ってきました。すると、その男は、主人の前で、そのトックリの中にスポン——と、はいってしまいました。主人はビックリしましたが、大いそぎで、そのトックリをそばの石に打ちつけ、わって、中を見ました。しかし、中にはもう水一てき、チリ一ぺんさえもありませんでした。どうしたのでしょう。
でも、それからのち、このばけることのじょうずなふたりも、それきり、その地方にすがたを見せなくなりました。トックリといっしょに、打ちくだかれたのかもしれません。それとも、遠いどこかで、また馬にばけばけしているのかもしれません。めでたし、めでたし。
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