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日本むかしばなし集56

时间: 2020-01-19    进入日语论坛
核心提示:こぶとりじいさんむかし、おじいさんとおばあさんとが住んでおりました。おじいさんは山へ行ってたきぎを取り、おばあさんは川へ
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こぶとりじいさん

むかし、おじいさんとおばあさんとが住んでおりました。おじいさんは山へ行ってたきぎを取り、おばあさんは川へ行って、せんたくをしてくらしておりました。
ところで、このおじいさん、左のほっぺたに大きなコブがありました。ほっぺたをふくらませているようなコブだったのです。
ある日のことです。おじいさんは山で、たきぎの大たばをつくって、ドッコイショと、それを背中《せなか》にせおいました。もう帰《かえ》る時間だったのです。ところが、そのとき、にわかに雨がパラパラ落ちてきました。すぐ大つぶになり、イナビカリ、大カミナリで、なかなか帰るどころではありません。しかたなく、おじいさんは近くの大きな杉《すぎ》の木の根もとにある、ほら穴《あな》の中に入りました。そこで荷物をおろして、雨やどりをしたのです。しばらく、そこでそうして休んでいるうちに、つい、ウトウトとねむってしまいました。
なにか、音がしたように思って、おじいさんが目をさまし、前を見たとき、ビックリぎょうてんしました。だってもう、そのへんはまっくらの夜です。夜中だったのかもしれません。それなのに、そこの広場で、火があかあかと燃えております。
それをまん中にして、赤い顔で、青い鼻で、目のおそろしい人間が、五人も六人も輪になって、なにか、わけのわからん歌をうたっております。そして、からだを右に左にゆすり、手をパッタ、パッタとたたいております。その火のそばには、なにかごちそうのようなものが、大ざらに山盛《やまも》りになっており、片方《かたほう》にはタルがあって、お酒もいっぱいあるようでした。この人たちは酒盛りをして、うたったり、おどったりしているのでした。
しかし、よくよく見れば、それは人間ではありません。天狗《てんぐ》です。背中に大きなツバサが二枚《まい》、かさなりあってついていました。大天狗、小天狗、カラス天狗なんていうものでしょう。そうです。なかに、カラスのように口先のとがった天狗もおりました。また、羽根でつくったウチワのようなものを、背中や肩《かた》のほうにつるしている天狗もありました。天狗の羽《は》ウチワというものなんでしょう。
そのうち、どこからか、ド——ン、ド——ンと太鼓《たいこ》の音がしてきました。それといっしょに笛《ふえ》の音もしてきました。天狗の歌やおどりにつれて、おはやしというものが始まったのでありましょう。
しかし、このありさまを見て、このコブじいさん、ついおもしろくなってきました。自分でも、うたったり、おどったりしたくなってきたのです。それでつい、こううたいだしてしまいました。
「天狗、天狗、八天狗。」
天狗は八人いたのです。で、そううたうと、もう恐《おそ》ろしくも、なんともなくなり、ひとりでに自分のからだが、ほら穴から出て行きました。
「おれまでかぜれば九天狗。」
そううたったときには、おじいさんはもう天狗の輪の中に入って、手をあげたり、足をあげたりして、おどっておりました。はじめ、天狗たちは、みんな恐ろしい目をして、おじいさんを見ました。しかし、おじいさんの声がとてもよい声で、そのうえ、おどりがまたすばらしく、おもしろいものなので、つい、
「ハッハッハ。」
と、ひとりが笑いだすと、みんな声をそろえて、
「ワッハッハ、ワッハッハ。」
と笑いました。おじいさんは、これで元気も出て、いろいろな歌をうたい、いろいろな踊《おど》りをおどりました。天狗たちは、そのたびにおもしろがり、なかでもカラス天狗などは、二つの大きな羽根をひろげて、羽ウチワを片手にさしあげ、
「それれ、それれ、
とひゃら、とひゃら
それれ、とひゃら
とひゃら、それれ。」
とうたいながら、クルクルまわって、天狗舞《てんぐまい》というのを舞いました。たいへんなさわぎです。そのうちに時間がたって、どこかでニワトリが鳴きだしました。
「そろそろ夜があける。それではまた明日。」
天狗のひとりが、こういいますと、
「ところで、じいさん、あしたまた来てくれるかい。おまえの歌も踊りも、とてもじょうずだったので、ぜひ来てやってもらいたいね。」
ひとりが、こんなことをいいました。
「はいはい、まいります。」
おじいさんは、そういったのですが、
「しかし、もしこないことがあるかもしれないから、なにかあずかっとくといいな。」
ひとりの天狗が、そういいました。
「そうだ。このコブでもあずかっとくか。」
その天狗はそういって、おじいさんの左のほおの大コブを、わけなく、スッとにぎりとってしまいました。
「あれ。」
おじいさんが、ほおのへんが妙《みよう》に軽くなったような気がして、なでてみると、もうそこには、コブはありません。右とおなじ、あたりまえのほおになっていました。
ところで、おじいさんは、それから家に帰り、昨夜《さくや》の恐ろしかったことや、おもしろかったことの話をしました。コブをとられた話もしたのです。すると、これを聞いたとなりのおじいさんが、
「それはいいことを聞いた。」
といいました。だって、このおじいさんは右のほおに大きな大きなコブがあったのです。
「おれも今夜行って、その天狗さんに、このコブをあずかってもらってこよう。」
そのおじいさんはそういって、その晩《ばん》のこと、まだ日がくれないあいだから山へ行って、杉の木のほら穴で待っていました。そして天狗が来て、うたったり、おどったりしはじめると、おそわったとおりに、
「天狗、天狗、八天狗
おれまでかぜれば九天狗。」
そういって出て行きました。天狗はこれを見ると、
「来た来た。来た来た。コブのおやじが来た。」
そういってよろこびました。しかし、このおじいさん、歌もへたなら、踊りもまったくできません。昨夜のおじいさんと大ちがいで、ただボンヤリ立っているだけです。
「おい、じいさん、昨夜のようにうたわんか。」
そういう天狗もあれば、
「おい、じいさん、ゆかいなやつを一つ、おどってくれ。」
そういう天狗もありました。それでも、このじいさんは立っているばかりです。そこで、とうとう、
「これはダメだ。きょうのおじいさんは、まるでおもしろくない。それじゃ、これを返すから、さっさと家へ帰るがいい。それっ。」
そういうと、天狗は昨夜あずかったおじいさんのコブを、今晩やって来たとなりのおじいさんの左のほっぺたへ、パタンとくっつけてしまいました。それで、となりのおじいさんは右に一つ、左に一つ、二つのコブを持つ、大コブじいさんになってしまいました。人まねしてはならないというお話です。めでたし、めでたし。
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