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日本むかしばなし集81

时间: 2020-01-19    进入日语论坛
核心提示:頭にカキの木むかし、むかし、あるところに、お酒の好きな下男《げなん》がおりました。主人《しゆじん》がおさむらいだったもの
(单词翻译:双击或拖选)
頭にカキの木

むかし、むかし、あるところに、お酒の好きな下男《げなん》がおりました。主人《しゆじん》がおさむらいだったものですから、お上《かみ》から、江戸《えど》のそのだんなのところへ、たびたびお使いにやられました。すると、とちゅうに一軒《けん》の茶店《ちやみせ》があって、そこではお酒を売っておりました。下男は、お酒が好きなものですから、どうしてもそこをす通りすることができません。かならずたちよって酒を飲み、よっぱらっては、店さきにグウグウねむりました。すると、そこのおかみさんが、
「さあさあ、もう日が暮《く》れます。早く行かんと、だんなにしかられますよ。」
そう、起こし起こしするのでした。下男は、
「や、これは寝《ね》すごし、しくじった。」
というので、ウサギのように、ピョンピョンはねとんで、お江戸をさしていそぎました。
ところで、ある日のことです。下男は、いつものようにお酒によって、店さきでグウグウねむっておりました。そこへ、近所のおさむらいの子どもたちが五、六人でやってきて、その茶店で、カキを買って食べました。カキのことですから、いくつもいくつも種があります。子どもたちは、その種を口からだすと、店さきへポンポン、ポンポンと投げつけました。すると、その種の一つが、その下男の大きなはげ頭のまんなかへ、ぴたっとばかりくっつきました。ちょうどそのとき、お日さまが西にかたむいて、もう日が暮れそうになりました。そこで、そこのおかみさんが、いつものように、下男を大声で起こしました。
「さあさあ、日が暮れますよ。」
これを聞くと、下男はとび起き、カキの種が一つ、はげの頭にくっついているのも知らず、お江戸をさしていそぎました。
ところで、その下男の頭のカキの種です。いつのまにかそこで芽をだし、いつのまにかそこで木になり、いつのまにかそこで花がさき、とうとう、たくさんの実がなってしまいました。たいへんなことになったものです。しかし、下男は、そんなことを、みじんもこまることとは思いません。いいえ、思わないどころか、そのカキが赤くうれるころになると、大得意《だいとくい》で、また、その茶店へやってきました。そして、
「おかみさん、おかみさん、ちょっとごらんよ。」
と、頭のカキをさしだしながらいいました。
「ほら、カキがよくうれて、ひどくおいしそうになってるだろう。ものは相談《そうだん》だが、このカキをとって、その代だけお酒を飲ましてくれないかね。」
しかたがありません。たいへんなお酒好きの下男のたのみです。おかみさんは、カキのかわりに、お酒を飲ませてやりました。すると、下男はまたそれでよっぱらって、グウグウ寝こんでしまいました。ちょうどそのとき、その店さきを、五、六人のおさむらいの子どもたちが通りかかりました。そして、頭にカキの木をはやしてねむっている下男をみつけました。いたずらざかりの子どもたちですから、これを見ると、だまっているわけにいきません。
「おい、だれかのこぎりを持ってこい。頭にカキの木なんかはやして、このおやじ大いばりで寝ていやがる。ひとつひき切ってやろうじゃないか。」
ひとりがいうと、ほかのみんなもいいました。
「うん、それがいい、それがいい。」
おもしろがって、ひとりが家へかけて帰《かえ》り、すぐ、のこぎりを一ちょう持ってきました。そして、下男の頭のカキの木を根もとからゴシゴシ、ゴシゴシひき切りました。しかし、下男は何も知らず、おかみさんに起こされて、日が暮れる、日が暮れるといわれるまで、グウグウ寝こんでおりました。そして、いつものように起こされると、いつものようにとび起きて、お江戸をさしていそぎました。
ところで、その下男の頭のカキの木の切《き》り株《かぶ》です。そこに、いつのまにか、こんどはヒラタケがたくさんはえてきました。すると、下男はまた茶店へやってきました。そして、おかみさんにいいました。
「おかみさん、おかみさん、ほら、タケがたくさんはえてるだろう。これを酒代《さかだい》に一ぱい飲ませてくれないかね。」
大酒好きの下男のたのみです。
「はいはい、はい。」
と、おかみさんは、また、たくさんお酒をだしてやりました。下男はまたよっぱらって、店さきにグウ、グウ、グウ、ねてしまいました。すると、また子どもたちがやってきました。
「あれい、あのおやじさん、また、ここんところでねむってやがらあ。」
ひとりがいうと、すこしあとからきたほかのひとりがいいました。そのとき、きっとおかみさんに教えられたのでしょう。
「このおやじ、カキの切り株にはえたタケを酒代にして、酒を飲んだんさ。」
「え——っ」
みんなは、おどろいてしまいました。と、ひとりが、
「じゃ、もう酒代のできないように、カキの切り株、ほり取ってしまってやろうよ。」
そういったものですから、いたずら者の子どもたち、みんな一度に賛成《さんせい》して、また、
「それがいい、それがいい。」
ということになり、ひとりが家へまきわりを取りにかけて行きました。まきわりがくると、みんなは、それで下男の頭の切り株を、こなごなにわり取って、あとに大穴《おおあな》をあけてしまいました。しかし、名代《なだい》の大酒好きの下男ですから、あいかわらず、グウグウ、ねむっておりました。そして、日が暮れかかると、また、おかみさんに起こされ、なにも知らず、お江戸をさしていそぎました。ところで、こんどはへんなことになりました。だって、下男の頭には、大穴があいているのでしょう。それなのに、下男は、雨のふる日も、からかさもささず、ぼうしもかぶらず歩くものですから、その穴に水がたまって、いつのまにか、そこに、ドジョウがわくようなことになってしまいました。それも、一ぴきぐらいならよろしいのですが、何十何百と、とてもたくさんわいて、泳いだりはねたり、大さわぎをするようになりました。ふつうの人ならくすぐったくて、顔をしかめたり、人にはずかしくて、ほおかむりをしたりするのでしょうが、大酒好きの下男のことですから、ちょっともかまわず、また、茶店へやってきました。そして、おかみさんにいいました。
「おかみさん、おかみさん、このドジョウで、ひとつ一ぱい飲ませてくれないかよ。」
これを聞くと、毎度のことで、おかみさんもあきれてしまい、何もいわずに、またたくさんお酒をだしてやりました。それで、下男はまたようて、また店さきにねむりました。
すると、子どもたちはまたそこへ通りかかりましたが、これも毎度のことで、すっかり手にあまして、
「もうこのおやじ、どうしてもしかたがないや。」
ということになり、いたずらもせずにすてて行ってしまいました。
それで、その下男は、それからは、だれにいたずらされることもなく、ドジョウを売っては酒を飲み、酒を飲んではグウグウねむり、ねむりすぎては起こされて、
「これは寝すぎた、しくじった。」
と、お江戸をさしていそぎました。めでたし、めでたし。 この作品は昭和五十一年四月新潮文庫版が刊行された。
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