むかし、ある寺に、和尚《おしよう》さんと小僧さんとがありました。和尚さんは、くいしんぼうで、ひとりで、うまいものばかり食べていました。小僧さんには、みんなかくして、なに一つやりませんでした。ある日のこと、和尚さんが、卵をゆでておりました。すると、そこへ、小僧さんがはいってきて、その卵を見ると聞きました。
「和尚さん、和尚さん、この白いものは、なんですか。」
和尚さんは、へんじに困《こま》りました。
むかしは、お寺では、精進料理《しようじんりようり》といって、野菜やくだもののほかは、食べないことになっていました。
そこで、
「これはな、ナスだ。畑になる、あのナスだ。」
そう、いいました。小僧さんは、
「しかし、白いじゃありませんか。」
そう、いいました。
「うん、これは、白ナスだ。」
和尚さんが、いいました。そのあくる朝のことです。お寺の庭で、ニワトリが鳴《な》きました。
「ほっけぼうず、こけこうろ。」
このお寺は、ほっけ宗《しゆう》と思われます。そこで、小僧さんは、すぐ行って、和尚さんにいいました。
「和尚さん、和尚さん、ただいま、お寺の庭で、ほっけぼうず、こけこうろと、あの白ナスの親が鳴いております。」
和尚さんも、これには、おうじょうしたということです。