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日本むかしばなし集130

时间: 2020-01-30    进入日语论坛
核心提示:竜宮《りゆうぐう》の娘《むすめ》むかし、むかしのお話です。その家は、ほんとにふしあわせなうちでした。おかあさんと八人も子
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竜宮《りゆうぐう》の娘《むすめ》

むかし、むかしのお話です。その家は、ほんとにふしあわせなうちでした。おかあさんと八人も子どもがいたのですが、それが、七人まで死んで、いちばんすえのむすこだけ、残りました。そのうえ、お金もなければ、土地もありませんでした。しかたなくて、むすこが、山から花をとってきて、これを売って、暮らしておりました。
ある日のことです。花がちっとも売れなくて、むすこは、たくさんの花をかついで、海ばたを帰っておりました。波が、ザアッと、浜べによせてはかえし、よせてはかえししているのを見て、むすこがいいました。
「花を、うちへ持って帰っても、しかたがないから、海のなかの神さまにでも、さしあげよう。」
そこで、その花を、海の中に投げこんで、むすこは、大声でいいました。
「海のなかの神さま、そうれ、花をあげますぞう。」
すると、花は、見るまに、波の底にすいこまれるように、しずんでいきました。で、むすこが、身がるになって、うちへ帰ろうと歩きだしますと、ひょっこり、波の上に、カメが頭をのぞけてきました。そして、そのカメが、いいました。
「もしもし、ただいまは、たくさん、花をありがとう。」
むすこが立ちどまると、カメが、つづけていいました。
「わたしは、海の神さま、竜王《りゆうおう》さまのお使いです。花のお礼に来たのです。どうですか、海の御殿《ごてん》、竜宮というところへ、行ってみられませんか。わたしが、案内をいたします。」
むすこは、
「しかし、竜宮というところは、ずいぶん遠いところと聞きますが——」
と、いいました。すると、カメのいいますことに、
「いいえ、わたしの背中《せなか》に乗って、ちょっと、目をつぶってさえおられれば、一息つくまもありません。」
「それでは——」
ということになって、むすこは、浦島太郎《うらしまたろう》のように、カメの大きな背中に乗りました。カメは、海を泳いで、波をわけて、ほんとに、一息《ひといき》するまもなく、もう、竜宮へやってきました。大きくて、美しくて、それは、目のさめるような御殿でした。
ところが、竜宮へつくと、カメが、いいました。
「竜王が、あなたに、なにかほしいかと聞かれたら、およめさんがほしいと、いいなさい。」
竜宮では、むすこは、大へんごちそうになりました。海の音楽という、ふしぎで美しい音楽も、聞かせてもらいました。タイやヒラメの、おもしろいおどりも、見せてもらいました。そして、三日ばかり遊んで、いよいよ、帰るときになりますと、竜王が、いいました。
「竜宮のおみやげに、おまえさんは、なにがほしいか。」
そこで、むすこは、カメにいわれたとおり、
「竜宮の娘さんを、わたしのおよめさんに、くださいませんか。」
そう、いいました。そして、ひとりの娘さんをもらい、また、カメの背中に乗って、帰ってきました。ところが、どうでしょう。たった三日と思って、竜宮で遊んだ日にちが、帰ってみたら、三年もたっていました。そして、あとに残したおかあさんが、食べる物がなくて、家のそばの石にもたれて、ねむるように死んでいました。むすこが、どんなにかなしく思ったことでしょう。
「おかあさん、すみません。貧乏《びんぼう》ゆえに、すまないことをしました。」
と、涙《なみだ》を流しました。これを見ていて、竜宮のおよめさんが、いいました。
「泣《な》くのをおやめなさい。おかあさんなら、わたしが、もとどおり、生きかえらせてあげます。」
そして、竜宮から持ってきていた、『生きむち』というものを、とりだしました。それで、おかあさんのからだを、一なで、二なでしながら、水を、頭の上から、そろそろと、かけたのです。すると、今まで死んでいたおかあさんが、むちの一なでで、フウッと、一つ、大息をつき、二なででは、目をパチパチとひらき、三度目には、もう、立ちあがって歩きだしました。むすこも、おかあさんも、どんなに喜んだことでしょう。
ところで、おかあさんは、生きかえりましたが、さしあたり、三人の住む家がありません。それで、あたらしい家をたてることになり、野原の木を切りたおして、そこに、ひろい敷地《しきち》を作りました。そこで、およめさんが、竜宮から持ってきた、打出《うちで》の小づちというのをふって、
「家出ろ!」
と、いいました。すると、そこには、もう、大きな家がたっていました。まるで、光るような、りっぱな家でした。およめさんは、また、小づちをふって、倉を出したり、米を出したりして、みるみるうちに、大へんなお金持になりました。そのうえ、そのおよめさんは、三国一というほど、きれいなおよめさんでした。
「りっぱなおよめさん、美しいおよめさん。」
と、有名になりました。それが、まもなく、殿《との》さまのところへも、聞こえました。すると、殿さまは、
「そのようなおよめさんならば、うちへ来て、ここのおよめさんになってもらいたい。」
と、そんなことをいいだしました。そして、ある日、とうとう、むすこをよんで、いいました。
「米を千石《せんごく》(一石は約一四二キログラム)持ってまいれ。もし、持ってこなければ、おまえのおよめさんを、つれてまいれ。」
これには、むすこは、弱りました。どうしたらいいのか、わからないまま、頭をかかえて、家へ帰ってきました。心配そうなその顔を見て、およめさんが、聞きました。
「殿さまは、どんなご用でしたか。」
むすこには、そのへんじさえできません。すると、およめさんが、また、いいました。
「男ともあろうものが、そんなことで、どうしますか。」
しかたなく、むすこが、いいました。
「千石の米を持ってこられなければ、おまえをつれてこいと、おっしゃる。」
これを聞くと、およめさんが、いいました。
「なあんです。そんなことなら、ぞうさありません。」
およめさんは、その晩《ばん》、浜に出て、水をあび、竜宮のほうを向いて、ポンポンと、かしわ手を打ちました。そして、なにか、口のうちでいっていましたが、やがて、大波の中をすかして見るようにして、こっちこっちと、手まねきをしました。すると、どうでしょう。そこから、何百という馬が、みんな、背中に米だわらを負うて、つぎからつぎと、出てきました。そして、むすこの家の庭へ、その米だわらを、運んできました。
むすこは、大喜びして、すぐ、殿さまのところへ、使いの者をやり、
「千石の米を、すぐ、おうけとりください。」
と、いわせました。
殿さまは、ほんとうと思えないで、まず、役人を、見によこしました。ところが、まちがいなく、千石の米が、むすこの庭に、つみあげてありましたので、役人は、すっかりおどろき、大急ぎで御殿《ごてん》に帰って、そのことを、殿さまにいいました。殿さまも、おどろきましたが、
「それでは——」
ということになり、何百という馬を集めてきて、その千石の米を、馬の背中につんで、帰っていきました。
これで、しばらく、殿さまは、なにもいいませんでしたが、ある日のこと、また、むすこがよびだされました。そして、
「千《ち》ひろ(一ひろは、両手《りようて》を左右《さゆう》にひろげたながさ)のなわを、あすまでに、持ってこい。持ってこられなければ、およめさんをつれてこい。」
と、難題《なんだい》をいいつけられました。こんども、むすこは、困《こま》って、頭をかかえて、家に帰ってきました。
すると、前のように、およめさんが、聞きました。
「きょうのご用は、なんでしたか。」
むすこは、
「千ひろのなわを、あすまでに、持ってこいといわれるのだが、どうして、わたしに、そんなことができよう。」
そういって、また、かなしそうな顔をしました。これを聞くと、およめさんは、前のように、浜べに出ていって、波に向かって、手まねきをしました。
千ひろのなわは、見るまに、浜べにつみあげられました。そこで、また、殿さまに、そのことをいって、このなわを、御殿にとどけました。こんどは、
「この正月に、六百九十九人の家来《けらい》をつれて、おまえのうちへ、ごちそうになりに行く。あわもりという酒を、七十七つぼ、用意しておけ。」
と、いってきました。
まもなく、正月になりました。元日には、いよいよ、殿さまが、家来をつれて、やってきました。ところが、上から下まで、じゅんじゅんに、姿《すがた》を変えていて、殿さまが、いちばん下の家来になり、いちばん下の家来が、殿さまの姿になっていました。およめさんは、一目見ると、そのことを知りました。そして、六百九十九人のおぜん、ごちそうをならべ、いざ、みんなが、おぜんの前にならぶときになると、
「ちょっと、お待ちください。」
といって、殿さまを、いちばん先にすわらせ、それから、じゅんじゅんに、席につかせました。そして、四斗《と》(約七二・一二リットル)入りのお酒、七十七つぼをだし、そのほか、たいへんなごちそうもしました。すると、殿さまが、
「なにか、芸を出して見せないか。」
といいましたので、およめさんが、
「どんな芸を出しましょうか。」
といいますと、
「あらい芸が見たいね。」
と、殿さまは、いうのでした。
「それでは——」
というので、およめさんは、手に持っていた小さな箱《はこ》をあけました。と、そのとたんに、中から、何百人という人間が、みんな、同じような着物を着て、おなじようなはかまをはいて、出てきて、おもしろい歌をうたい、おもしろいおどりをおどりました。殿さまも、家来たちも、大へんおもしろがって、
「こんどは、こまかい芸をだして見せろ。」
といいますと、およめさんは、
「こまかいほうは、みなさん、あぶのうございますよ。」
と、いいました。しかし、
「いや、あぶなくてもかまわん。どんどん、やって見せろ。」
と、殿さまがいうのでした。
「それでは、出しますよ。」
およめさんは、そういうと、こんどは、べつの小さい箱をあけ、
「それっ。」
と、力をこめたかけ声をいたしました。と、どうでしょう。その中から、はちまきをし、刀を持った何百という人が出てきて、見るまに、殿さまや家来たちに切ってかかりました。それで、殿さまやけらいは、「これはかなわん。」と、大あわてにあわてて、逃げだし、みんな、御殿に帰ってしまいました。
それからは、もう、こりごりしたとみえ、殿さまも、むすこのところへ、難題をいってこなくなり、むすこは、おかあさんとおよめさんと三人で、安楽に暮らしました。めでたし、めでたし。
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