むかし、むかし、日本のお仁王さまのところへ、唐《から》のが王さんから、手紙がきました。
「仁王さん、わたしは、唐のが王です。唐の国一の力持です。ひとつ、力くらべをしようではありませんか。」
そこで、お仁王さまは、が王さんの来るのを待っておりました。しかし、が王さんに、なにかごちそうをあげなければならない、ということになりました。そこで、お仁王さまの家の者たちが、考えました。なかなか、いい考えがうかびません。そのうち、ひとり、お仁王さまの家来《けらい》の人が、いいました。
「鉄のおだんごは、どうでしょう。」
すると、みんなが、いいました。
「それがいい、それがいい。それにしましょう。」
そこで、まず、太い太い鉄の棒《ぼう》をとってきました。それを、お仁王さまが、ひとにぎり、ふたにぎりと、手でちぎりました。それをまた、家来たちが、おだんごのようにまるめて、それにきな粉《こ》をまぶしました。鉄だんごです。その鉄だんごを、五十も六十も作って、大きな、ふたかかえもあるようなかなだらいの上に、盛《も》っておきました。
が王さんは、そこへ来て、
「どうぞ、どうぞ。」
と、すすめられると、
「これは、けっこう。」
と、そのおだんごを、バリバリ食べたということです。そこで、仁王、が王のふたりは、それから、兄弟《きようだい》ぶんになりました。そして、観音《かんのん》さまの門前に立ち、仲よく、その門番をすることになったそうです。
鉄の棒を持っているのが仁王で、大きな口をあけて、鉄だんごを食べているのが、が王だそうです。