一
むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんとがありました。おじいさんは、山へシバ刈《か》りに、おばあさんは、川へせんたくに。すると、川を、コンポコ、コンポコ、大きなモモが流れてきました。
「もう一つこい、太郎にやろう。もう一つこい、次郎にやろう。」
おばあさんが、そういいました。モモは、だんだん、おばあさんのところへよってきました。おばあさんは、その大きなモモをひろって、うちへ持って帰り、うすの中へ入れておきました。そのうち、おじいさんが、山から帰ってきました。
「おばあさん、おばあさん、なにかないか。おなかがペコペコだ。」
「さっき、川へせんたくに行っていましたら、大きなモモが流れてきました。それを拾って、うすの中へ入れておきました。それでも食べてごらんなさい。」
「そうかい、そりゃ、うまいことをした。一つ、ごちそうになろうか。」
おじいさんが、そういって、うすのところへ行ってみますと、おどろいたもおどろいた。
「おばあさん、おばあさん、おまえが、うすのなかへ入れたというのは、大きなモモだというが、はいっているのは、犬ころじゃないか。」
おばあさんも、おどろいて、飛んできて、うすのなかをのぞきました。まったく、かわいい、白い犬ころです。
「はてな、さっきは、たしかに、モモをいれたんだが……」
ふたりは、ふしぎがりました。しかし、かわいい犬ころでしたから、ふたりは、それから、自分の子のようにして、だいじにそだてました。犬は、だんだん大きくなり、やがては、そのあたりにはいないほど、大きな犬になりました。