さて、そのあくる日のことです。となりの正直じいさんの家では、いっこう、犬が帰ってこないので、となりの欲ばりじいさんのところへ、聞きにいきました。すると、欲ばりじいさんは、
「犬が、あんまりひどいことをしたから、ころして、土の中へいけてきた。そばに、ヤナギの枝がさしてある。」
そう、話して聞かせました。正直じいさんは、
「まあ、かわいそうなことをしたものだ。」
といって、すぐに、山へ登っていきました。ヤナギの枝のさしてあるところを、さがしさがしして行きますと、きのうさした小枝のヤナギが、もう、大きな木になっておりました。おじいさんは、かわいい犬のかたみだと思って、それを切って、もちをつくうすをこしらえました。
そして、ある日のこと、そのうすでもちをつきました。すると、おどろいたことに、もちが、いつのまにか、大判、小判、いろいろの宝物になってしまいました。ちょうどそのとき、また、となりの欲ばりばあさんが、火を借りにきました。たくさんの宝物を目にしますと、欲ばりばあさん、
「これは、いったい、どうしたことです。」
と、聞きますので、正直じいさんは、ありのままに話しました。
それを聞くと、また、欲ばりばあさんは、
「それでは、おれのところへ、そのうすを貸してください。」
そういうなり、へんじも聞かぬうちに、もう、そのうすをひっかついで、持って帰りました。
さて、欲ばりじいさん、ばあさんは、さっそく、用意をして、ふたりでもちをつきました。ところが、これがまた、大へんです。もちは、馬ぐそ、牛ぐそ、犬のくそ、まるで、きたないものばかりになってしまいました。欲ばりじいさん、大腹立ちで、おのを出してきて、そのうすを、こっぱみじんに、たたきわってしまいました。