むかし、むかし、サルとカニとがおりました。
サルが、カキのたねをひろいました。カニが、にぎり飯《めし》を持っていました。にぎり飯を見ると、サルが、いいました。
「カニどん、カニどん、カキのたねとにぎり飯と、とっかえっこしないか。」
カニが、いいました。
「じゃ、とっかえっこしよう。」
ふたりは、とっかえっこしました。カニは、カキのたねを持って帰り、家の前の畑にまきました。サルは、にぎり飯を、その場で、ムシャムシャ食べてしまいました。
そのご、カキのたねからは、芽が出て、木になり、やがて、花がさいて、実がなりました。ところが、カニには、そのカキの実がとれません。そこで、サルのところへ行って、たのみました。
「サルさん、サルさん、カキの実をとってくれないか。」
「よし、ひきうけた。」
サルは、大喜びでしょうちして、出かけてきました。そして、木に登ると、自分ひとりで、うれた実を、ムシャムシャ食べています。
「サルさん、サルさん、おれにも、ひとつ、わたしてくれないか。」
カニが、木の下からたのみました。サルは、青いかたいカキを、カニに向かって投げつけました。カニは、おこって、穴《あな》の方へ逃《に》げながら、さんざん、サルの悪くちをいいました。こんどは、サルがおこって、木からおりて、カニを追っかけてきました。カニが、穴のなかへ逃げこみますと、サルは、穴のなかへ、自分のしっぽをつっこんで、
「こらカニ、こらカニ。」
と、どなりながら、穴の中をかきまわしました。
すると、カニは、はさみを出して、サルのしっぽを、キュッとはさみました。サルは、いたくていたくて、
「カニどん、カニどん、はなしておくれ。そのかわり、このおれのしっぽの毛を、三本やるから。」
そういって、カニに、かんべんしてもらいました。それから、カニのはさみには、毛がはえるようになったということです。